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    <title>旧世紀網膜博物館</title>
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    <title>
			journal/10/02/24
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/q/10951494.html</link>
    <description>　今大学受験なのね。大学に行ったら若々しいのがいっぱいいて吃驚です。 　若々しい青々しい苦々しいのを見ながらわたしは駐禁の違反金払ったりワイン造ったりしていました。駄目だなこの学生。 　しかしわたしが受験のときは寒い寒い言っていた気がしますが...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-02-24T16:55:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[　今大学受験なのね。大学に行ったら若々しいのがいっぱいいて吃驚です。<br>
　若々しい青々しい苦々しいのを見ながらわたしは駐禁の違反金払ったりワイン造ったりしていました。駄目だなこの学生。<br>
　しかしわたしが受験のときは寒い寒い言っていた気がしますが、最近はこの程度の気温でも暖かいと感じるようになってきたなぁ。これが適応か。<br>
<br>
　この前のワイン。<br>
　三日置いて澱を除く段階に。<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10225977.jpg"><br>
<br>
　瓶一杯一杯に。<br>
　仙台の冬ということで気温が低く、ちゃんとできているのかちょっと心配です。10度以上あったほうが良いらしいけど……。<br>
　うーん、一応澱が落ちているってことは平気なのかなぁ。<br>
<br>
　このままおいて三日後くらいにまた澱を除いたのがこちら。<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10225977.jpg"><br>
<br>
　おい変わってないな。<br>
　色の違いは光の加減と携帯のカメラのせいかと思います。<br>
　適当な瓶がないのでとりあえずラップでくるむことに。適度にガス抜きすればＯＫということで。<br>
　しかしガス抜きしようにももうすぐ帰省するんだよなぁ。とりあえず軽く閉めておくか。味が逃げそうだけど。]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10951480.html">
    <title>
			year/3/19
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10951480.html</link>
    <description>１９  　シフという女性は明るい人柄だった。トールに対しては丁寧な言葉遣いながらも親しげな口調で、トールもそれを受け入れているようだった。つい先日アースガルドに戻ってきたロキは知らなかったが、彼女はトールが負傷してアースガルドに戻って以来、ず...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-02-24T16:18:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１９</div><br>
<br>
　シフという女性は明るい人柄だった。トールに対しては丁寧な言葉遣いながらも親しげな口調で、トールもそれを受け入れているようだった。つい先日アースガルドに戻ってきたロキは知らなかったが、彼女はトールが負傷してアースガルドに戻って以来、ずっと看病を続けていたのだという。<b>そして彼女は、トールと恋仲なのだという。</b>　シフはヴァルハラに残ってトールの世話をしようと言ったが、トールのほうは騒がしくなるから良いと言って、彼女とロキを帰らせた。シフと共に帰路に着く。彼女は現在トールの館、ビルスキールニルに住んでいるらしい。<br>
<br>
（全然知らなかったなぁ………）<br>
　ロキは呆然として隣を歩きながら話す女性を改めて見る。小柄な体躯で黒髪は長く、可愛らしい顔立ちだ。もちろん彼女には異形の翼なんてものは生えていない。<br>
　シフはよく喋った。ロキには直接会ったことはなかったが、トールから話を聞いて知っていたのだという。彼女はロキが巨人族であるということも知っていたが、それをまったく意にも介さず話してくれた。トールが好きになったのもよくわかるとロキは思った。<br>
　シフをビルスキールニルの館まで送り届け、ロキは翼を広げて空を飛んだ。季節のないアースガルドの空は暖かく、自分の家であるヴァラスキャルヴに戻る気はしなかった。<br>
　ビフレストの傍、フェンリルが縛られている岩山のすぐそばの樹の枝にとまる。四季のあるミッドガルドにほど近いこの場所では、冬の冷気の流れを強く感じる。今ミッドガルドは冬の真っ只中だ。だがしかし、トールとともにミッドガルドにいたときも同じような寒さだった。<br>
（もう<b><font color=blue>フィムブルヴェト</font></b>が近いんだな………）<br>
　ロキはそう感じた。<br>
　岩山のほうから何度も何度も犬の遠吠えが挙がる。地面が揺れる。風穴の空いた岩盤からなん本もの触手が突き出ている。<b><font color=red>フェンリルはこのままでは、きっと死んでしまう。</font></b><br>
　オーディンはこのまま何もしないつもりなのだろうか。<br>
　そう考える一方で、今ロキの心の中でトールのことを占めている感情が大きいことを、ロキは自覚せずにはいられなかった。<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
　冬。<br>
　<b><font color=blue>あまりにも冬が長すぎる。</font></b><br>
<br>
　まだ痛む身体に鞭打って馬に乗り、トールはミッドガルドにいた。贖罪の約束を果たすために。<br>
　シフには何も言っていない。何と言えば良いのか、何を言っても応じてはくれないのか、わからなかったからだ。フレイやロキにも彼女への言伝は頼めない。きっと彼らもこれからトールがしなければならない贖罪のことを聞いたのならば、きっと止めただろうから。<br>
　手紙を屋敷の自分の部屋に残してきた。戻らなければ、きっとシフはその手紙を発見してくれるだろう。それでわかってもらうしかない。<br>
　ミッドガルドの人間族の女、リュングヘイドはトールにいったいどんな贖罪をすることを願うだろうか。おそらく、死だろう。彼女はトールを殺そうとした。<br>
　しかしそうあっても仕方がないだけのことをトールはしたのだ。彼女の父を、きょうだいを殺し、あの貧しい村で生きるための生命線を潰した。ミッドガルドに波乱を齎し、一応は安定していた巨人族の国を滅ぼした。<br>
　彼女がいかなる願いを言ったとしても、トールは受け入れるつもりでいた。心残りは数数多あるものの、しかし自分が殺してきた同胞達に比べればたいしたことのない量だろう。リュングヘイドは、ロキを無事に送り返してやりたいというトールの願いを聞き届けてくれたのだ。<br>
　雪は深く、馬の歩みは遅い。リュングヘイドの村まで辿り着くのに長い時間を要した。その間も雪は降り続け、気温は下がり続けた。<br>
　オーディンの言葉を思い出す。彼はこのような冬が来ることを示唆していた。年々冬の寒さは増し、世界は冷え切ってしまう、と。<b><font color=blue>それは世界が死にゆこうとしているからなのだ</font></b>。ムスペルヘイムの炎の巨人と火竜ファヴニルの炎が世界を焦がし、悪竜ニドヘグが根を噛み千切っていく。ユグドラシルはその指標であり、根幹なのだ、と。<br>
　彼の言葉が真実だとすれば、もうすぐ世界は枯れ果ててしまうのか。<br>
　雪がさらに酷くなってきて、トールは思考を現在に戻した。もはや徒歩での移動は困難なくらいに降り積もっている。馬をたびたび休ませながらの移動だった。<br>
<br>
　リュングヘイドの村に辿り着く。雪が深いためか、周囲の状況が一変していた。ほとんど雪で覆われていて、屋根が倒壊した家もあるほどだった。リュングヘイドの家は大丈夫だろうか。彼女の養父母と、彼女の子らシアルヴィとロスクヴァは。<br>
　人の気配がまったくないことにトールは気付いた。<br>
　記憶を頼りにリュングヘイドの家を訪ねる。半壊していた。屋根は落ち、扉は外れている。雪の重みで崩れたのか、あるいは他に外的な要因があったのか。<br>
　ほとんど機能を果たしていない扉を外し、家の中に入る。屋根も壊れているので当然といえば当然だが、家の中には雪が大量に入り込んでいた。ぼろぼろの家具が目に付く。人気はない。リュングヘイドの姿はもちろんのこと、彼女の養父母やシアルヴィやロスクヴァの姿も。家財道具がトールがいたときよりも少ないのが目に付く。盗賊の襲撃にあって奪われたのか、それとも引っ越したのか。しかし引越ししたにしてはこの荒れ果てぶりは不自然だ。たとえ雪と風の脅威を考慮に入れたとしても。<br>
　他の家々を回っても見たが、すべて同じだった。誰の姿も、声もなかった。<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
　<br>
　帰路に着く。往復で一月以上が経過していたが、まだ冬は衰えることなく続いていた。<br>
　贖罪するチャンスを失い、死は免れた。リュングヘイドの村はきっと盗賊の襲撃に遭ってしまったのだろう。彼女らの消息はわからないが、おそらく殺されてしまったのだろう。その場では殺されなくとも、食料などを奪われて冬を乗り切ることはできなかったはずだ。シアルヴィやロスクヴァも。<br>
　あの無邪気な二人の子供達の死を思うと、生を得たことを完全に喜ぶことはできなかった。<br>
<br>
　アースガルドは暖かい。ミッドガルドの寒気が嘘のようだ。<br>
　自分の屋敷、ビルスキールニルの厩に馬を入れながら、トールはシフに何と言おうかと考える。彼女はきっともう手紙を読んでしまったことだろう。悲壮な内容を書いておきながらおめおめと生きて戻ってきてしまった。恥ずかしいことは恥ずかしい、が平和だと思う。<br>
　リュングヘイドの村が盗賊たちに襲われたことに、アース神族と巨人族の戦争が関わっていないはずはないだろう。長い冬のこともそうだが、アース神族のミッドガルドへの侵略はそこに住む巨人族や人間族の生活を脅かした。盗賊や野盗もこれからどんどん増えていくはずだ。彼らの生活を護らなければいけない。戦争は終わったが、まだまだ忙しい。<br>
　屋敷の戸に手をかけて、ふと中から声がするのに気付く。<br>
<br>
「この傷跡って……、<b><font color=red>レーヴァティン</font></b>だよね」と若い女の声。<br>
「そうだろう」と男の声。「これだけルーンを凝縮できるのはレーヴァンティンくらいだ」<br>
「<b><font color=red>じゃあ……、<big>ロキ</big>なの？</font></b>」<br>
<br>
　女の声はイドゥンの、男の声はヘイムダルのものであることに気付く。イドゥンはスリュムヘイムの戦いで前線まで連れてこられて以来、シフと出会って仲良くなったということを聞いていたため、シフのところに遊びに来たと考えれば不思議はない。ヘイムダルはトールを訪ねてきたのだろうか。<br>
<br>
「<b>そうだろうな</b>」とヘイムダル。「レーヴァンティンの使用者の定義付けの範疇に入っているのは<b><font color=red>スルトとロキだけ</font></b>……。ラグナレクがまだ始まっていないのだから、今レーヴァティンが使えるのはロキだけだろう。間違いないな」<br>
「でもロキがなんでこんなことを………」<br>
<br>
　トールは扉を開けていた。入ってすぐのホールに三人の姿が見えた。ヘイムダルとイドゥン、それにシフ。ヘイムダルとイドゥンはトールの姿を見て驚愕の表情を浮かべるが、彼らに囲まれるようにして寝そべるシフの表情は変わらない。寝そべり、目を瞑ったまま。胸元には<big><b><font color=red>黒々とした穴</font></b></big>が開いている。血の色が僅かに口元に見える。<br>
「<b>トール………！</b>」イドゥンが慌てたように言葉を発するのが聞こえた。<br>
　トールはシフに近づき、跪いた。胸元の穴は背中まで貫通していた。血は流れておらず、傷口の周りの焦げ具合から傷口で蒸発してしまったのだとわかる。穴は微細なものだったが、<b><font color=red><big>それ</big></font></b>が<big><b><font color=red>シフの命を奪った</font></b></big>のだということは歴然としていた。<br>
<br>
「<b><font color=red>ロキなのか</font></b>」<br>
<br>
　シフを抱きしめて、トールは問う。<br>
　ヘイムダルとイドゥンの会話を聞いていなくてもわかっていた。こんな細い傷口でありながら、周囲に血痕を残さないほどの熱量を封じ込めるほどのできる武器を、トールはレーヴァンティン以外には知らない。あの武器はヨルムンガンドの皮膚さえ貫通したのだ。<br>
　ロキ。<br>
　<b><font color=red><big>ロキ</big></font></b>。<br>
　怒りが飛散してルーンが舞う。ビルスキールニルにこれまで誰も見たことがないほどの<b><font color=green>雷</font></b>が落ちた。<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
　<br>
　かつて見た稲妻よりはるかに明るく、かつて聞いた雷鳴よりもはるかに大きな<b><font color=green>その雷</font></b>を見て、ヨルムンガンドは歓喜した。<br>
　もっともっと近くで見たい。ヨルムンガンドはそう思った。口元の傷は痛んだが、それさえも気にならなかった。あの綺麗な光を目の前で見ることができると思えば。<br>
　ヨルムンガンドは双翼を羽ばたかせ、ミッドガルドの海からアースガルドの大地まで飛んだ。雷が落ちた地点に小さな館を見つける。そこにあの雷を落とす者がいるということはヨルムンガンドにもわかった。<br>
　その館を踏み潰そうとして、何かが飛び出してくるのがわかる。巨大な槌だった。下顎にぶつかる。目の前が真っ白に変わった。大陸の反対側まで弾き飛ばされる。<br>
<br>
　アースガルドの地面が揺れた。山は崩れ、河は震えた。三色の虹ビフレストの色はだんだんと色褪せていく。狼の鳴き声が響く。ヨルムンガンドはひときわ大きく鳴いた。今まで冷え切っていた地面が急に燃え盛った。空気は熱で温められ、光は歪む。炎の巨人達の国ムスペルヘイムが現れていた。<br>
<br>
　ラグナレクの始まりだった。<br>
<br>
<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
<blockquote>　ロキは悪口を浴びせかけることにあまり夢中になっていたので、トールがエーギルの館に入ってきたのに気づきませんでした。雷鳴の神は、ロキが言いたいことを言ってしまうまで待っていました。それから前へ進むと、握りこぶしで横木を組んだテーブルをすさまじくたたいたので、水晶の杯は空中へとびあがってしまいました。彼はどなりました。「黙れ、くずめ。それともおれのハンマーのミョルニルで、おまえの口を閉じてやろうか！　おまえの肩の石を首から打ちはずしてやろうか。そしたら、それがおまえの最期だろうよ」<br>
　ロキはうろたえもせずに、大声で叫びました。「みんな、見てみろ！　ここに<大地の息子>がいるぞ！　なんとどなりちらす暴れ者なんだ、トール。だが、おまえがフェンリルと取っ組み合いをする時は、そんなに猛烈ではあるまいさ。そして狼が<勝利の父>オーディンをのみこむのを、見ているだろうな」<br>
　トールはどなりました。「黙れ、くずめ。それともおれのハンマーのミョルニルで、おまえの口を閉じてやろうか！　おまえをつまみあげて、東の方へ投げつけてやろうか。そしたら誰もおまえをもう一度見ることはないんだぞ」</blockquote><br>
<small><div align=right>（三十　ロキの口論　より）</div><br>
<br>
<b>●ロキの豹変</b><br>
　トリックスター、空を飛ぶもの、狡賢いもの、変身者。<br>
　さまざまな異名を持つロキ。彼は神話の初期から登場し、さまざまな事件を引き起こし、ときに解決者ともなる。彼は少なくとも正義ではないが、絶対的な悪でもなかった。<br>
　そもそも北欧神話での神々は、その呼称から外れた人間臭い生き物として扱われる。勇猛果敢でありながら、自分の到底叶わない巨人スクリューミルが現れたときには何もできずに隠れていたトール。愛に忠実であったために、自らの剣と犠牲にしてゲルドを無理矢理恋人にしたフレイ。戦いの神ではあるものの、常に公平には審判を下さず弱いものの肩を持つオーディン。ロキもそれらの例に漏れず、完全な悪ではなかった。彼の行いはしばしばアース神族の害にはなったが、それと引き換えに、たとえばアースガルドの城壁やミョルニルをはじめとした神々の宝物を齎した。彼は悪戯でシフの髪を切り裂いたり、巨人族に脅されてイドゥンを誘拐したりしたが、それもラグナレク近くでのバルドル殺しに比べれば可愛いものである（彼の悪戯は度が過ぎているように見えるかもしれないが、彼はそもそも自分の睾丸で羊と綱引きをするようなジョークを女性に見せ付けるような性格である。少しセンスがずれているのであろう）。<br>
　ロキは盲目のヘズをかどわかし、バルドルを殺させる。彼の生き返るチャンスでもロキはその邪魔をし、バルドルは生き返らずにラグナレクが起こる。<br>
　なぜロキはそんなにも変わってしまったのか。<br>
　なぜ彼はラグナレクを起こそうとしたのか。</small><br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10945506.html>前へ</a></div><div align=right><a href=>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/q/10945507.html">
    <title>
			journal/02/15
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/q/10945507.html</link>
    <description>　なんだか最近更新するする詐欺なわけで。  　そういえば昨日はヴァン・ダイン・デイ、ではなくヴァレンタイン・デイでしたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。この歳になるとほとんどお中元になるわけで、数には拘らなくなってきます（まぁ本来のヴァレン...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-02-15T14:32:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[　なんだか最近更新するする詐欺なわけで。<br>
<br>
　そういえば昨日はヴァン・ダイン・デイ、ではなくヴァレンタイン・デイでしたが、いかがお過ごしでしたでしょうか。この歳になるとほとんどお中元になるわけで、数には拘らなくなってきます（まぁ本来のヴァレンタイデイってそういうものなのだろうけれど）。<br>
　じゃあ本命チョコなら嬉しいのかというと、本命チョコって貰えるか貰えないかが最初から判りきっているわけで、中学生ではあるまいしチョコレートと共に告白というシチュエーションはまずありません。もし身近でそんな状況があったのなら、あなたは非常に珍しい場面に出くわしたということになります。ムービー撮ってYouTubeにアップしておけば良かったでしょう。<br>
　あとお店でチョコを配っていたためなんだかなぁという気が。中にはありがとうと言ってくださるお客様もいらっしゃいましたが、わたしのほうはというとこんなくだらねぇもんで申し訳ねぇとか言っていました。<br>
<br>
　昨日梅酒の瓶が一つ空いたので、ワインを造ることに。<br>
　梅酒やハーブ酒はたまに造るものの、発酵させてアルコールを作るのは初めてなのでちょっとどきどき。<br>
<br>
<blockquote><b>造り方</b></blockquote><br>
　濃縮還元100パーセントぶどうジュースと砂糖を瓶に入れます。<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10225075.jpg"><br>
<br>
　レモン汁と酵母を入れます。<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10225076.jpg"><br>
<br>
　終わり。<br>
<br>
（＊参考：<a href=http://workingnews.blog117.fc2.com/blog-entry-1590.html target=_blank>やる夫が酒をつくるようです（働くモノニュース）</a>）<br>
<br>
　おい簡単ですね。まぁこれは一次らしいので、いろいろと段階は踏まなければいけないけれど、梅酒のほうが灰汁抜いたり蔕とったりでいろいろあったぞ。<br>
　とはいえかなり簡単な作り方なので、きっと味もあれだろうなぁ、とは思ったり。まぁどうせワインは日頃あまり飲まないので、どうせ何飲んでも対して差異がわからないことでしょう。<br>
<br>
　どちらかというとビールのほうが造りたい。よく飲むし。<br>
　ビールというと、バドワイザーとかレーベンブロイとか外国の、ライセンスは日本のビールが好きだったりします。なんでだろう。たぶん頭の中に「洋物は美味い」という思い込みがあるのでしょうが。<br>
　北海道行ったときに三種類セットの地ビールを買って、その中では一番エールが美味かった。ああいうのが作りたいもの。<br>
　とりあえずワインで成功したら次はビールで。<br>
<br>
　最近『天元突破グレンラガン』の劇場版見ました。アニメは基本見ない（というよりテレビ自体がないの）ので新鮮でたまらなかったものの、非常に面白かった。<br>
　しかしながら紅蓮編のほうが螺巌編より良かったなぁ、という気が。この話題でpresen記事一本書けそうなので、とりあえずメモ代わりにつらつらと。<br>
<br>
　紅蓮編はアニキ（カミナ）がいたからこそ、最初から最後まで筋が通っていたという気がします。カミナという男は本当に一本気な男で、最初から最後まで言っていることも行動内容も揺らがず、そしてそれが伝わってきている。省略されたようなエピソード（父親や地上関連）もあるようですが、それでも何をしたかったのか、というのはよくわかりました。だからこそ面白かった。カミナからシモンへの継承も、この時点でのシモンの行動がカミナの意思を受け継いでいて、一本に通っていた。よくわかった。<br>
　しかしなが螺巌編は、シモンが何をしたいのかよくわからない。<br>
　螺巌編のラストはサブタイトル（TV版では最終話のサブタイトルだったもよう）、『The Lights in the Sky Are Stars』（『天の光はすべて星』。フレドリック・ブラウンの小説）のようにヒーローのその後が語られる。子供の夢を聞き、空を見上げる。ヒーローだった男はすべてをやり遂げた後、ただの男になった。それはわかる。<br>
　でもなぜそうなったのか、それで良かったのかがよくわからない。シモンは敵を倒せばニアがどうなっていたのかを知っていた。それなのに敵を倒した。もちろん世界のためであったのだが、結局<big><b>シモンの護りたいもの、得たい夢とはなんだったのか</b></big>。それがさっぱりわからない。『天の光はすべて星』では、主人公マックスの行動は首尾一貫している。彼は星に憑かれ、そのために奮闘する星屑なのだ。愛する人もいた。彼女は大事だったが、それさえも星々に比べれば瑣末なものだった。彼の行為にはさまざまな思惑もあったが、しかしすべては自分を信じたからで、自分の夢のための行動だった。シモンにはそれがない。<br>
　だからこそ、ラストであまり納得できないのだと思う。<br>
<br>
　こういうふうに考えてしまうのは、最近ゴリゲー（同人ゲーム製作：<a href=http://red.ribbon.to/~gorichu/index02.html target=_blank>サークルゴリッチュ</a>）ばっかりやっていたせいかなぁ。インボルグも無能宣言も面白かった。特に無能宣言。<br>
　まぁこんな感じでそのうちpresen記事になる予感です。　<br>
　]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10945506.html">
    <title>
			year/3/18
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10945506.html</link>
    <description>１８  　いったいだれがミョルニルを盗み出したのか、トールにはわかわらない。巨人族の工作員が盗み出したのか、オーディンに敵対するものが彼に近づくために盗んだのか、あるいはトールに私怨を持つものの行動なのか。一つだけわかっていることは、ミョルニ...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-02-15T14:24:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１８</div><br>
<br>
　いったいだれがミョルニルを盗み出したのか、トールにはわかわらない。巨人族の工作員が盗み出したのか、オーディンに敵対するものが彼に近づくために盗んだのか、あるいはトールに私怨を持つものの行動なのか。一つだけわかっていることは、<b><font color=blue>ミョルニルを盗んだものは最も安全な隠し場所に隠そうと考え、そしてそれを実行した</font></b>ということだ。<br>
<br>
　<big><b>ヨルムンガンドの腹の中</b></big>。盗人はそこにミョルニルを隠した。<br>
<br>
　アースガルド、ミッドガルド、そしてニヴルヘイム。三世界を含めて<b><font color=red>竜</font></b>に匹敵するほど巨大な体躯を持つ呪われた蛇、ヨルムンガンド。巨人族にもアース神族にも等しく仇なす蛇が飲み込んでしまったものは、普通なら到底取り返すことはできない。トールでもミョルニルなしではヨルムンガンドに対抗することは叶わない。そう思っての行動なのだろう。<br>
　<b>だがいま、トールの右手にはミョルニルの短い柄が握られている。</b><br>
　体勢は苦しい。左手はロキに掴まれてなんとかヨルムンガンドに飲み込まれないでいる。ヨルムンガンドの口内は広かったが、蛇の舌はトールを圧迫するように動き、抵抗できないようにしている。唯一自由な右腕は長旅の痛みに耐えかねて、振りかぶることすらできはしない。<br>
　<b><font color=green>だがそんなことは関係ない。</font></b><br>
　オーディンが言っていた。<big><b><font color=red>ミョルニルには三つの魔法がかかっている</font></b></big>、と。呼べばすぐに飛んできて、大きさを自在に変えることができる。そしてトールがルーンを注げば注ぎ込むほど、ミョルニルは轟音を纏って運動量を増す。振りかぶる必要はない。<br>
　今まで何度もそうしているように、同胞の血に塗れたルーンを注ぎ込み、老人を労わるかのようにミョルニルを手放す。ヨルムンガンドの臓腑の底へとミョルニルは加速し、ぶつかってがなり声をあげた。何度も何度も光は瞬き、雷鳴は轟いた。<br>
　蛇は悶え、トールは放り出される。ロキも一緒に。<br>
<br>
「<b><big>ミョルニルッ！</big></b>」<br>
<br>
　トールは空中で左腕でロキを抱き寄せ、右手でミョルニルを構えた。投擲動作は必ずしも必要ではないが、それはより効率的にミョルニルを加速させることができる。<br>
　投げつけた雷神の槌は表面が黒く焦げたヨルムンガンドの体躯にぶち当たり、周囲の民家を圧倒する衝撃波とともに蛇の身体をミッドガルドの海へと吹き飛ばした。<br>
　着地し、遠くで巨大な飛沫が上がるのをトールは確認する。もう一度ミョルニルを呼び戻し、ふらつく身体を支えつつロキの身体を離した。彼女が心配そうにトールを見上げてきたので、トールは何とか微笑みかけようとした。<br>
　小さく振りかぶり、<b>ウドガルドの城</b>に向かってミョルニルを投擲する。誰もそれを止めるものはいなかった。<br>
　巨人族ヨツンヘイムの首都、ウドガルド。かつてこの国で兵士をしていたときに、トールは城のどこにどのような部屋があるのかを知っていた。最低限の人命で戦が終わるに越したことはない。トールが狙ったのはヨツンヘイムの指導者、都市の名前にもなっている巨人族の指導者<u><b>ウドガルド</b></u>の部屋だった。<br>
　ウドガルドの城に稲妻が落ち、崩れ落ちる。もしかするとあの部屋に今はウドガルドはいなかったかもしれない。しかしこの攻撃は十分に効果がある。<br>
　予想通り、<b>ウドガルド城への攻撃を見てかアース神族の軍勢がやってきた</b>。ロキとトールがいない間、バルドルたちはウドガルドのすぐ近くにまで軍を進めていたようだ。<br>
　半日も経たずにウドガルドは制圧された。<br>
<br>
　こうして、アース神族と巨人族の戦争は終わりを告げた。<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
　終戦後のさまざまな取り決めなどについて、トールは口出しをすることができなかった。ヨルムンガンドを追い払い、ウドガルドの城壁を切り崩してアース神族軍の攻撃の起点にし、ロキの安全の確保をした後、倒れてしまったからだ。疲労と失血が原因だった。トールを治療したアース神たちによれば、死んでいてもおかしくないほどの怪我だったらしい。<br>
　本当はアース神族が巨人族を弾圧せぬような協定を結ばせたかった。ヴァン神族との戦争のときと違い、今回は和平交渉があって終戦となったわけではない。最終的にはアース神族が巨人族の国を侵略したのだ。巨人族たちにとって良い条約が取り決められるはずがないだろう。戦争の功労者であるトールならば、条約決定の会議の際にも大きな顔ができたはずで、それが行われているときにずっと眠っていたというのは情けないことだった。<b>トールが目覚めたときには終戦から一月ほどが経っていた</b>。巨人族の国々は、完全にアース神族の管轄に置かれた。<br>
　自分は滑稽だと思った。アース神族が憎いわけでも、巨人族が憎いわけでもなかった。ただただ戦争というものの存在そのものが厭で、それを終わらせるために戦ってきたつもりだった。だが最後に残ったのは巨人族への弾圧だった。<br>
　もちろん戦争を終わらせるだけで何かが変化するわけもなかった。それはわかっていた。だが自分の情けなさこそがトールの中では響いた。<br>
　自分は結局何もできなかった。滑稽だと思った。<br>
<br>
「<b>そんなことないよ</b>」<br>
<br>
　そう言ったのはロキだった。彼女も怪我と疲労で大変だったらしいが、トールのように戦いが終わってすぐ倒れてしまったということはなかったらしい。<br>
　トールは倒れてすぐにアースガルドのヴァルハラの館に運ばれた。戦争の爪痕が残る場所よりも、戦地から常に隔絶されていたアースガルドで休むほうが安全だろうという話だったが、もしかするとトールが早めに目覚めても口出しされないようにという意図もあったのかもしれない。<br>
　目覚めたものの外にも出て行けず、周囲のひとびとに訊いても戦後の詳しいことは伝わっていないという中、トールに情報をもたらしてくれたのはロキだった。彼女もかつては巨人族だったという禍根があってか、条約の内容があまりにも巨人族に不利にならないように、また被災地でアース神族が巨人族に対して暴虐な振る舞いをしないようにと、目覚めてすぐに重い身体を引き摺ってウドガルドへと戻ったのだという。<br>
<br>
「結局何もできなかったのはわたしのほう」ロキは頭を掻いた。「トールがいなかったら今も戦争は続いていただろうし、ウドガルドを攻め落とすときにも民間人の被害者がいっぱい出てた。それに……、<b>それにたぶん、わたしも死んでた</b>」<br>
「<b>そうだな</b>」とフレイが頷く。彼もスリュムヘイムの決闘の後、アースガルドへ戻っていたので戦後のことはほとんど知らず、トールへの見舞いついでにロキの話を聞きに来たのだった。「そして俺がいなければスリュムヘイムは奪い返されて、戦争はやっぱり長続きしていただろう」<br>
「フレイ………」とロキはフレイの軽口に冷たい視線を向ける。<br>
「まぁ、ともかくとして、おれも戦争が終わったのは嬉しいよ。それがどんな結果であれ」フレイは真面目な口調で言った。「これからのことが決まったとはいえ、それも努力次第で変化していくことだ。おれも巨人族だからといって迫害するつもりはない。おれ自身ヴァン神族だし、<b>可愛いあいつのためにも</b>」<br>
　フレイの言うあいつ、とは、フレイの細君、ゲルドのことだろう。フレイはもう巨人族の娘、ゲルドと婚約したらしい。<br>
「ゲルドは可愛いからな、お願いされたら断れない。仕方がない。もう何もかも。全身全霊をかけてやることはやる。<b>ゲルドのために。<big>ゲルドのために</big></b>」<br>
「大丈夫だ、お前には期待していない」とトールは言ってやった。<br>
　その後、三人で世間話をする。くだらない話だった。戦争が終わったからこそできるようになった話でもあった。<br>
<br>
　やがて暗くなり、ゲルドが待っているから、と言ってフレイがトールの病室を出て行く。<br>
「フレイとゲルド、仲良くやっているみたいね」フレイが出て行った扉を見つめて、ロキが呟くように言った。<br>
「見てないからなんとも言えんな。あいつが惚気てただけだし」<br>
「そう？」と微笑むロキ。「でもフレイだったら良い旦那さんになると思うよ」<br>
　確かにフレイは女性に優しいので、夫としては良い人物になるだろう。アース神族が最も強い勢力である中、ヴァン神族のフレイと巨人族のゲルドというのは苦労するカップルだろうが、応援してやりたい。自分が似たような立場であるという意味でも。<br>
　ロキは小さく俯き、何か声を発した。<br>
「え？」と聞こえなかったので、トールは聞き返す。<br>
　ロキは顔をなぜか真っ赤にしていた。「<small><b>トールはそういうのって、ないの？</b></small>」<br>
　答え難い質問だ、とトールは思った。昔もそうだった。昔の妻とは幼馴染の仲だったが、トールから好意を伝えるのは彼にとっては至難の業だった。苦労して苦労して、なんとか想いを告げられたものだ。端的にいってしまえば、トールは色恋沙汰を表現するのが苦手だ。<br>
　言いよどんでいると、扉の向こうから足音が聞こえてくる。女性の軽い、しかし激しい足音。<br>
　扉が勢い良く開かれる。入ってきたのは一目でアース神族とわかる艶やかな黒髪と緑色の目の女性。焦ったような、目を見開いた表情だった。<br>
「<big><b>トール……っ！</b></big>」彼女はロキには目もくれず、トールのベッドに走り寄って抱きついてきた。「起きたの？　起きたんですね？」<br>
「見りゃわかるだろう」<br>
　彼女は<u><b><font color=green>シフ</font></b></u>と言う。オーディンに誘われてアース神族軍に入って以来の知り合いだ。彼女はトールが巨人族であることを知っても差別することなく、良くしてくれた。戦争も終わった。近いうちに婚約することになっているが、それを良き友人であるロキに打ち明けるのは少々気恥ずかしいトールだった。<br>
　だが彼女との婚約は叶わぬことかもしれない。その前にやるべきことがある。トールは、<b><font color=red>贖罪</font></b>をしなければならない。<br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10935653.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10951480.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10935653.html">
    <title>
			year/3/17
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10935653.html</link>
    <description>１７  　勝てないかもしれない。 　トールは戦いに身を投じてからこのかた初めてそう感じた。  　ヨルムンガンドはあまりにも巨大すぎた。 　天地に触れ合うほど大きく広げられた顎にかみ締められながらトールは考えた。 （こいつはおれを食う気なのか………？...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-01-30T01:18:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１７</div><br>
<br>
　<b>勝てないかもしれない</b>。<br>
　トールは戦いに身を投じてからこのかた初めてそう感じた。<br>
<br>
　ヨルムンガンドはあまりにも巨大すぎた。<br>
　天地に触れ合うほど大きく広げられた顎にかみ締められながらトールは考えた。<br>
（こいつはおれを<b><font color=red>食う</font></b>気なのか………？）<br>
　ヨルムンガンドは巨体を振るった体当たりや尾の一撃を食らわせようとはせず、ただトールを歯のない顎で噛み砕こうとしている。攻撃をかわしがたい街中で受け止める術もないトールとしてはむしろありがたいヨルムンガンドの行動だったが、なぜそのような攻撃方法を取っているのかがわからない。海には生息していないトールという生物をものめずらしく感じ、味見をしてみようとでも思ったというのだろうか。トールはふとそんなことを考えて笑ってしまう。<br>
　ヨルムンガンドの深紅の口内。先の割れた舌が蠢いているが、それでトールを攻撃しようという意思はないようだ。あるいはこれは遊ばれているのかもしれない、と感じた。猫が鼠を殺す前に弄ぶように、小鳥が捕まえた虫を投げ遊ぶように、人が狼を足から心臓へと順に矢を射掛けるように、ヨルムンガンドはトールを殺す前に楽しもうとじわじわと嬲りをかけているのだ。<br>
　今ならまだ勝ち目があるかもしれない。ヨルムンガンドは余裕を持っているが、それは油断をしているということだ。まともに一撃を食らわせられれば逆転できる。<br>
　だがこの状態からは何もできない。両腕は上顎を、両足は下顎を支えるので精一杯。武器もなく、身体はゆっくりと口内へと押し込まれている。<br>
　もう体力が限界に近い。血を流しすぎ、筋肉を傷つけすぎた。これ以上体力勝負をすることはできない。トールは深呼吸をする。<br>
「<b><font color=red>この糞蛇がっ……！</font></b>」<br>
<br>
　<b>ルーンの一撃</b>。<br>
<br>
　<b><font color=green>落雷</font></b>がヨルムンガンドの頭頂部に炸裂する。<br>
<br>
　しかしそれさえも効いている様子はなかった。稲妻を受けたというのに眼球をきょろきょろと動かすだけで、すぐにまた顎にかける力が強まる。まったくの無傷だ。耐性ができたのか、あるいはトールの力が弱まっているせいなのかもしれない。<br>
　舌が伸びてきて、トールの身体に絡みついた。今の一撃を受けて、ゆっくりと噛み砕こうという気はなくなったのかもしれない。裂けた舌が腕や足を引っ張る。<br>
　目の前がだんだん暗くなっていく。流血の影響で気が遠くなっている。もうヨルムンガンドの力を抑えることができない。<br>
<br>
　消える。<b>光が消える</b>。<br>
<br>
　身体に纏わりつく粘液、動く地面。<br>
　ヨルムンガンドの<b><font color=red>口内</font></b>に入っていた。蛇はまるで飲み込む前に楽しもうとでもいうように舌でトールを弄んだ。太い舌は力強く、トールは抵抗もできないでいた。<br>
<br>
　ここで終わるのか。<br>
<br>
　結局、何もできなかった。<br>
<br>
　粋がっていられたのも、相手が自分と同じ巨人族だったからだ。同族相手なら負けはしない。だが化け物相手となれば別だ。勝てない。<br>
　ここまで長かった。戦争、オーディンとの出会い、アース神族軍への加入。ロキとの出会い、また戦争。<br>
　未練はある。かつての戦火で親も子も、愛するものも失った。だがオーディンのおかげで、新たに愛すべきものを見つけることができた。だが、それもここで終わる。今度は置いていかれることはない。<b><font color=red>自分のほうが先に死ねる。</font></b><br>
<br>
　ロキの声が聞こえた気がして、上を見上げる。<br>
　ヨルムンガンドの身体が震える。重力に引かれてトールは胃の中へと落ちそうになるのを、舌を掴んで留まった。<br>
　光と、<b><font color=red>黒く燃える刀身</font></b>が見えた。<br>
<br>
「<big><b>トールっ！</b></big>」<br>
<br>
　ロキの声。<br>
　黒光りする刀身が引っ込み、できた穴から白い手が伸びてくる。ロキが<b>魔刀レーヴァティン</b>でヨルムンガンドの顎に穴を開けたのだと気付く。飲み込まれたトールを助けるためとはいえ大蛇の顎に取り付くロキの度胸もさることながら、レーヴァティンの火力は驚異的だった。<b>トールのミョルニルでさえほとんど傷つけることのできないヨルムンガンドの身体を、あの小さな刀身は貫通したのだ</b>。<br>
　ロキの手がトールの身体を探りあて、手を掴んだ。しかしヨルムンガンドの顎は開かれない。レーヴァティンに貫かれ、痛みに悶えつつもトールを逃がさないようにと必死で唇をかみ締めているようだ。<br>
「<b>ロキ、離せ</b>」トールはヨルムンガンドの立てる地響きにかき消されないようにと大声で言う。「もう無理だ」<br>
　ヨルムンガンドは決してトールを逃がそうとはしないだろう。トールが胃の中へと吸い込まれるまでは顎が開かれることは決してないだろう。舌は獲物を逃がさぬようにとトールの身体を引き続け、身体は激しくゆすり続けている。このままではロキも危険だ。<br>
「やだ」とロキ。<br>
「わかるだろう。もうどうしようもない」トールは言う。ロキが消耗しているのは彼女の体温と声の調子でわかった。レーヴァンティンがいかに強力な熱を出せるとはいえ、剣にルーンを供給するロキの体力は無尽蔵ではない。ヨルムンガンドの顎に腕が通る程度の穴を開けるだけでこれだけ疲弊したのだ。トールが通れるほどの穴を開けるのは不可能だろう。「この混乱だったら、お前一人なら逃げられる。アース神族軍が順調に進軍していれば、もう近くにいるだろう。離せ」<br>
「<b>離せない</b>」<br>
　ロキの表情は見えなかったが、彼女が涙を零しているのはわかった。腕は震えていた。<br>
「厭だ」ロキは呟く。「<b>死んじゃ、厭だ</b>」<br>
　ヨルムンガンドがまた一段と激しく暴れる。ロキが穴を大きくしようとまたレーヴァンティンを突き当てているのかもしれない。<br>
「<b>ロキ！</b>」<br>
　ロキは返事をしなかった。ただただ強く、トールの手を握り締める。<br>
<br>
　もう諦めた命だったというのに。<br>
<br>
　愛するものより先に死ねることを幸運だとさえ感じていたのに。<br>
<br>
　ロキがここにいては、死ぬことすらできない。<br>
　もう力も出ないというのに。<br>
　武器さえないというのに。<br>
<br>
　<b>ミョルニルさえあれば。</b><br>
<br>
「トール、この武器、ミョルニルには<big><b><font color=green>三つの魔法</font></b></big>がかかっている」<br>
　オーディンはトールにミョルニルを渡すとき、そう言った。<br>
「一つ目は<b>きみが込めたルーンを推進力に変換し、接触後は雷に変えるという魔法</b>だ。きみが大きなルーンを込めれば込めるほど、ミョルニルはより大きな運動量を持って飛び、巨大な雷を起こすだろう。これはきみがこれからの自分や他人の身を護るのに使うことができる。きみが戦争を厭うているのは知っているけれど、戦わなければいけない状況もあるからね。二つ目は<b>ミョルニルの大きさを変えることができるという魔法</b>だ。柄の上についているスイッチを押したままミョルニルを縦に縮めるように押すと、ポケットに入るくらいに小さくすることができる。元の大きさに戻したいときは逆に引っ張れば良い。これはきみがこのミョルニル自体を護るのに使えるだろう。強すぎる武器を見せびらかしていたら、盗まれたりいわぬ争いが起こってしまうこともあるだろうからね。三つ目は<b>ミョルニルに声が届く範囲内で名前を呼べば、自動的に手に戻ってくるという魔法</b>だ」<br>
「柄がえらく短いな」トールはオーディンから差し出されたハンマーを受け取って眺めた。ミョルニルというハンマーの柄はトールがぎりぎり片手で掴めるほどの長さしかなかった。<br>
「ちゃんと話、聞いてる？」とオーディンは鼻を鳴らした。「それはきみ用の武器ってわけじゃないからね。ただきみが一番使いこなせるだろうと思って渡したんだよ。片手でも扱えるだろう？」<br>
「まぁな」<br>
「さっき言った三つの魔法、きちんと使いこなすようにね。折角のミョルニルも、機能を使わないんじゃあ宝の持ち腐れだから」<br>
<br>
「<big><b>ミョルニルッ！</b></big>」<br>
<br>
　ミョルニルの三つ目の魔法は、トールとミョルニルがある程度近い距離にいないと作動しない。目に見える範囲にあればぎりぎり作動する程度だ。<br>
　無駄かもしれないとは思った。だがトールは叫んでいた。<br>
　<b>トールの右手にはミョルニルがあった。</b><br>
<br>
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  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10935649.html">
    <title>
			year/3/16
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10935649.html</link>
    <description>１６  　世界蛇ミズガルズオルム、尾を咥える蛇ウロボロス。醜悪な姿で産み落とされ、親に見捨てられ、冷たい海の中で孤独を過ごす、ヨルムンガンド。ヨルムンガンド。ヨルムンガンド！　ヨルムンガンドの金色の瞳がトールとロキを見下ろしていた。 　周囲の建...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-01-30T01:12:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１６</div><br>
<br>
　世界蛇ミズガルズオルム、尾を咥える蛇ウロボロス。醜悪な姿で産み落とされ、親に見捨てられ、冷たい海の中で孤独を過ごす、ヨルムンガンド。<b>ヨルムンガンド</b>。<big><b><font color=green>ヨルムンガンド！</font></b></big>　ヨルムンガンドの金色の瞳がトールとロキを見下ろしていた。<br>
　周囲の建物はヨルムンガンドの巨体によって薙ぎ倒されていた。破壊された家屋から放り出されたのであろう死体や逃げ惑う巨人族の姿が見られる。もう誰も彼もがトールとロキに気になど止めていない。ヨルムンガンドがやってきたというだけで、巨人族の首都ウドガルドは大混乱に陥っていた。<br>
<br>
　ヨルムンガンドが頭を振るい、今までロキとトールが隠れていた家にぶつけると、家は簡単に瓦解した。<br>
（<b>逃げられる……？</b>）<br>
　今なら飛んで逃げたとしても、ロキたちを射落とそうとする巨人族の姿はないだろうし、どの方向へ逃げたのかを悟られるおそれもない。<b>だが逃げることは不可能だ</b>。ヨルムンガンドが瞼のない目でトールを睨み、トールもまたロキの腕を握り締めたままヨルムンガンドの姿を見据えていた。<br>
　<b>トールは今までに二度、ヨルムンガンドと戦っている。</b><br>
　一度はスリュムヘイム攻防戦の際、泥の巨人ミストカーフとともにヨルムンガンドは現れたが、トールに二度ミョルニルを投げつけられてミッドガルドの海へと吹き飛ばされた。だがそのときはトールもヨルムンガンドの超重量の体当たりを受け、重傷の傷を負った。<b>傷の度合いでいえばトールのほうが被害が大きかった</b>。ヨルムンガンドは海へと押し戻されただけなのだから。<br>
　二度目はミッドガルドの海へとやってきたとき、ロキとトールを追いかけてきたヨルムンガンドを<b>トールは素手の一撃で撃退した</b>。<br>
　<b>一勝一敗</b>。その一勝も、ヨルムンガンドを追い返したに過ぎない。<br>
　<b>そして今、この場には雷神の最大の武器、ミョルニルはない。</b><br>
<br>
（でも、どうして………）<br>
　<b><font color=red>驚異的なヨルムンガンドの執着</font></b>。だがその視線は産みの親であるロキへとは向けられていない。蛇の双眸が見つめているのは巨人族からアース神族へと寝返った雷神の姿だった。<br>
（トールのルーンに引き寄せられてる………？）<br>
　理由はわからないが、そうとしか思えない。否、理由は想像できないでもない。<b><font color=green>トールの雷のルーンは目立つ</font></b>。光輝き、熱を起こし、地響きをかなりたて、雷鳴を轟かせる。ミッドガルドの海へもトールの雷鳴は伝わっただろう。<br>
　先ほどのトールの雷を、ヨルムンガンドは感じ取ったのだ。感じ取り、ただ興味を引かれたのだろう。花に蝶が舞い降りるように、羽虫が明かりに集まるように、死体に光が群がるように。ヨルムンガンドには思考するほどの知恵はないはずだ。少なくとも、ロキは他の二人の子、フェンリルとヘルとは会話をしたことがあるが、ヨルムンガンドとは生れ落ちてからまったく会話を交わしたことがない。その姿どおり、蛇以上の思考能力はないのかもしれない。<br>
　もしトールとロキがここから逃げようものなら、ヨルムンガンドは追ってくるだろう。今までのことを考えると、トールのことを食らおうとしてくるはずだ。<br>
　ロキ一人なら逃げられるかもしれないが、そうはしたくない。トールをこの場で見捨てることはできない。だが戦う選択も取りがたい。<b><font color=red>ヨルムンガンドのルーンはあまりにも禍々しく、巨大すぎた。</font></b>トールのそれを凌駕するほど。<br>
<br>
　ヨルムンガンドの口から空気の擦れる音が滑る。舌が伸びる。鱗に覆われた顔が二つに割れ、中から歯のない<b><font color=red>赤い</font></b>空間が現れた。<br>
　トールが両腕でヨルムンガンドの上顎を受け止める。下顎を右足で踏みしめる。<br>
「<b>トール……！</b>」ロキは思わず叫んでいた。<br>
　トールの肩と腹からは<b><font color=red>鮮血</font></b>と<b><font color=green>ルーン</font></b>が流れ出ていた。斧を受け、矢で射られ、刃で貫かれた身体で、しかし彼はヨルムンガンドの巨体を受け止めていた。<br>
「とりあえず………」トールが搾り出すような声を発した。「逃げろ………」<br>
　トールの両腕も、両足も、震えていた。彼の顔はその赤毛に反して真っ青に染まっている。彼のルーンがどんどんと弱っていっているのは明らかだった。傷が重すぎる。彼に戦う力は、もはやない。<br>
「でも……」<br>
「<b>おれは大丈夫だ</b>」みなまで言わせずにトールは言った。「それよりおまえがいると逃げにくい……。だから先に逃げろ」<br>
「そんなことは、できない」<br>
「じゃあおまえが囮にでもなってくれ。空飛んで、どっかに行ってくれ」<br>
　トールの呟きは弱弱しかった。彼の言葉はすべてロキを逃がそうとするもので、それは彼が自分自身もはやヨルムンガンドに勝つだけの力がないことを自覚しているように感じられた。<br>
「<b>ヨルムンガンドはトールを狙ってる</b>」<br>
「<b>だろうな</b>」<br>
「だから、囮なんて意味ない」<br>
「変なのにばっかり好かれる」トールは力なく言った。笑っているようにも感じられた。<br>
「トールも一緒に逃げてくれないと、わたしも逃げられない」<br>
「この体勢からは、もう逃げられん」トールの身体は徐々にヨルムンガンドに追い込まれているようだった。ヨルムンガンドの上顎と下顎の力で、トールの腰はゆっくりと曲げられていく。「それより……、頼みがある。<b>後ろのやつを避難させてやってくれ</b>」<br>
　振り返ると、ついさっき崩壊した家の中の瓦礫の中に子供の姿が見えた。おそらくトールを突き刺した家人の子供だろう。二階にいたため、家の崩壊によって押し潰されずにすんだのだろう。一階にいたはずの男と妻であろう女は瓦礫に押し潰されたかもしれない。<br>
「さっきの男の……、子供だろう」トールが言う。「<b>避難させてくれ………</b>」<br>
　ロキは子供の身体を起こした。気絶しているようだが、目立った外傷は見られない。<br>
「頼むよ。あの男たちの子供なんだろう。<b><font color=blue>守ろうとしたんだろう</font></b>……」トールの身体はヨルムンガンドの顎力と拮抗する。「それに、後ろに誰かいると、本気で戦えない。その子を避難させて……、ついでに武器でも取ってきてくれや。丸腰だと戦いづらくてしょうがない」<br>
　ロキは子供を抱える。<br>
「すぐ戻ってくるから……」ロキは翼を広げる。<br>
「戻ってこなくて良い。<b>役立たずだ</b>」<br>
「すぐ戻ってくるから」<br>
　ロキは子供を抱えたまま飛び立った。予想通り、ヨルムンガンドはロキには見向きもせずにトールの相手に夢中だった。<br>
<br>
　上空から、ヨルムンガンドから遠く離れた地点に巨人族の避難保護部隊らしき一群を見つける。一瞬躊躇したが、その場に下りる。兵士たちも一般市民も、翼を見てすぐに巨人族の裏切り者のロキに気付いたようだった。<br>
「子供……」<br>
　ロキは近くにいた女に子供を押し付けた。槍や弓を構える兵士やロキに対して非難の言葉を投げつける民衆もいたが、ロキは翼を広げてすぐに空に戻った。<br>
<br>
　トールのところに戻ろうとしたとき、大気が震えた。<br>
　これまで見たどの雷より<big><b><font color=green>巨大な光</font></b></big>がミッドガルドを覆った。その雷は音を響かせ熱を温め、喚き散らしながら暴れまわりながら<b>ヨルムンガンドの頭部に落ちた。</b><br>
<br>
<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
<blockquote>　ロキとアングルボダは、三人の奇怪な子を持ちました。長子は狼のフェンリル、二番目はヨルムンガンドという最も大きな蛇、三番目はヘルと呼ばれる娘でした。ヘルの様子はたとえ千人の女たちの群れの中にいたとしてもすぐ選び出せそうなほどに、変わったものでした。彼女の顔、首、肩、胸、腕、背中はすべてピンク色をしていましたが、腰から下の彼女の肌は全部、腐って緑がかった黒色に見えたのです。彼女の表情はいつも同じで、陰気でこわいものでした。<いつわりの父>[ロキのこと]がそれらの子供たちの父親でもあることを聞き知ると、神々は不安でいっぱいになりました。そこでウルドの泉のもとで、子供たちをどうしたらいいか相談することにしました。三人のノルンは、彼らをあまり勇気づけてはくれませんでした。</blockquote><br>
<div align=right>（七　ロキの子供たちとフェンリルの捕縛　より）</div><br>
<br>
<u><b>●遺伝子</b></u><br>
<small>　生物がどのような姿を持ち、どのような思考をするかというものを決定するのが生命の設計図ともいわれるDNAである。正確にはDNAは設計情報の担い手であり、設計情報そのものはDNAを構成する4つの塩基によってコード化された遺伝子である。<br>
　生命の基本的な要素は遺伝子で決定される。もちろん産まれてからの環境的要因もその生命に深い影響を及ぼすだろうが、特にその肉体面では遺伝子の影響は非常に大きい。<br>
　遺伝子は親から子へと受け継がれる。だから子は親について基本的には似る。<br>
　ではフェンリル、ヘル、ヨルムンガンドらロキの呪われた子供たちに関してはどうだろう。彼らは狼、半身の腐った女、大蛇という、親であるロキとは似ても似つかぬ姿をしている。<br>
　ロキはアングルボダの心臓を喰らい（この『心臓を喰らう』という言葉が語句そのままの意味を表すのか、それとも性的な意味を表すのかは不明ではあるが）、三人の呪われた子供を産んだといわれている。アングルボダは女巨人であり、巨人族のロキと同じような姿をしていたのであったと想像される。遺伝子も似通っていたことだろう。だが産まれてきた子供の姿は二人の姿とまったくかけ離れていた。遺伝子も異なるものだったのではないだろうか。<br>
　フェンリル、ヘル、そしてヨルムンガンドは遺伝子組み換えを行われた後に産み落とされたのだと考えることができる。<br>
　遺伝子組み換えは生物のDNAや遺伝子構造についてわかっていれば、そう難しい行為ではない。二十世紀末、ダグラス・プラッシャーはオワンクラゲから抽出される発光蛋白質、GFPを他の遺伝子に組み込むことを考えた。GFPという蛋白質は生物発光を促す蛋白質であるが、これを用いることで微小な対象を観測しやすくしようというのがプラッシャーの狙いだった。<br>
　現代では発光する兎や豚などがトランスジェニックされて産まれている。そしてロキの呪われた三人の子供たちも、この遺伝子を組み替えられた生物であると考えることができるだろう。狼、腐った人、大蛇などという多様性のある生き物が一組の親から産まれるというのは通常ならば考えにくいことだが、何者かが意図的に彼ら彼女らの受精卵に手を加えたのだと考えれば、その発生の疑問は解消される。<br>
　だが疑問はまだ残る。<br>
　いったいだれが、なぜ、どのようにして、三人の子供に呪いをかけたのだろうか。</small><br>
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  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/q/10924062.html">
    <title>
			journal/01/11
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/q/10924062.html</link>
    <description>　そういえば明けましておめでとうございますかもしれません。もう10日も過ぎているというのに。  　最近真面目に投稿するほうを頑張っているせいか、こちらがなかなか進まないのが辛いところ。あとゲームですね。FSXとかZWEI!!とかCall Of Juarezとかやってい...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-01-11T21:21:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[　そういえば明けましておめでとうございますかもしれません。もう10日も過ぎているというのに。<br>
<br>
　最近真面目に投稿するほうを頑張っているせいか、こちらがなかなか進まないのが辛いところ。あとゲームですね。FSXとかZWEI!!とかCall Of Juarezとかやっているせいです。Xbox360欲しいなー。しかしその前にテレビを買う必要があるという。<br>
<br>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10924061.html">
    <title>
			year/3/15
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10924061.html</link>
    <description>１５　  　トールは走っていた。馬の足ではなく、自分自身の足で。 　右腕が重い。治癒しかけの右腕には矢が突き刺さっていた。背中にも、二本。矢を抜くと血が噴出した。無理に抜かないほうが良かったのかもしれないが、走っていると尾羽が揺れ、さらに深く入...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-01-11T21:14:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１５</div>　<br>
<br>
　トールは走っていた。馬の足ではなく、自分自身の足で。<br>
　<b>右腕が重い</b>。治癒しかけの右腕には<b><font color=red>矢が突き刺さっていた</font></b>。背中にも、<b><font color=red>二本</font></b>。矢を抜くと血が噴出した。無理に抜かないほうが良かったのかもしれないが、走っていると尾羽が揺れ、さらに深く入り込んできそうで邪魔だったのだ。<br>
<br>
　ウドガルドを越えることにトールたちは失敗した。巨人族の兵士たちはトールとロキの顔を知っていた。<b><font color=red>巨人殺し</font></b>の名で恐れられるトールだから知っていたのか、巨人族を裏切ってアース神族の側についたトールとロキだから覚えていたのか、それはわからないが、彼らはトールとロキがウドガルドに入ったときからずっと動向を観察していたようだった。<br>
　すぐに襲い掛かってこなかったのはトールたちが油断して寝静まるのをまっていたのかもしれない。もちろんトールたちも自分たちの面が割れているであろうことは予測していたので、ウドガルドでも一息ついて休むようなことはなかった。<br>
　ウドガルドは周囲を山岳に囲まれた場所にある街である。より正確に表現するならばウドガルドが山岳に囲まれているというよりは、ミッドガルドを東西に分けている大山脈の中で唯一盆地となっている場所が巨人族の国ヨツンヘイムの首都、ウドガルドなのだ。<br>
　かつて巨人族の中でも飛びぬけて大きい、山ほどの大きさのある<b>巨人スクリューミル</b>が世界が作られた直後に山の中に寝転び、彼が押し潰した山の中にウドガルドの街を作ったという御伽噺があったことをトールは思い出した。<br>
　その地形の都合上ウドガルドを東から西へ抜けるには決められた道を通らなければならなかった。ウドガルド市街の大通り。<br>
　<b>トールは油断していたのかもしれない</b>。たとえ巨人族たちがトールの存在に気付いていたとしても、こう市民の多い場所では攻撃を仕掛けてはこないはずだ、と。だから武器を手に入れようともせず、足早にウドガルドの市街を通り抜けようとした。<br>
　否、そもそもウドガルドで戦闘をしたくなかったのはトールのほうかもしれない。これ以上無力な市民を戦災に晒したくはない。<br>
　戦闘が起これば誰しも無関係ではいられない。しかし目の前で苦しむ市民を見たくはない。<br>
　トールはそう願っていた。<br>
　<b>油断していた</b>。<br>
　罠だった。大通りを歩いていた巨人族はすべて兵士の変装だった。待ち伏せされていたのだ。<br>
<br>
　矢を撃たれただけで逃げ切れたのは幸いだった。ロキは息を切らせているが怪我はないようだ。<br>
「大丈夫か」念のためトールはロキに声をかける。<br>
「わたしは……」ロキは頷いてみせる。「それより、トールのほうが………」<br>
「<b>おれも大丈夫だ</b>」<br>
　逃げ込んだのは民家だった。ドアには錠が掛かっていたのをトールが錠を破壊して押し入ったのだが、人の気配は今のところ感じられない。追ってきている兵士もいないだろう。もう機能しなくなった錠を掛け直し、トールは崩れ落ちた。<br>
「<b>トール！</b>」ロキが慌てて身体を起こそうとする。「だ、大丈夫？」<br>
「<b><font color=red>大丈夫……、大丈夫だ</font></b>」<br>
　ミョルニルもなく、鎧もなく、鉄の手袋もなく、アース神族軍最強の戦士、三世界に響き渡る<b><font color=red>【巨人殺し】</font></b>がこの有様だ。生きているだけで精一杯。自分の身体を支えることもできやしない。迷いに迷って、何も手に出来ない。このままロキを守ることさえも。<br>
<br>
（おれは……）<br>
<br>
　トールはロキの身体を掴もうとしたが、彼女はすっくと立ち上がった。<br>
「待ってて。たぶん救急箱とかあるはずだから……」<br>
　ロキはそう言って奥のほうへ行ってしまう。<br>
　大丈夫だろうか。もし人がいるとすれば危険だ。家の規模から考えて最低二人は住んでいるはず。ロキの細腕では抵抗もできないだろう。<br>
　しかし動くことができない。ロキに気をつけるようを伝えることもできない。<br>
　頭が朦朧とする。<br>
<br>
（<b>おれは今まで何をしていたんだ………？</b>）<br>
<br>
　確かに家人の気配はない。しかし家の中に本当に誰もいないのか？　外から見た限りではこの家は二階まである。家人は二階にいるという可能性もある。<br>
　そう、巨人族たちはトールとロキを待ち伏せしていたのだ。一般市民にはその旨を伝え、家の中でおとなしくしているようにと伝えていたに違いない。この家の中に誰もいないはずがない。そしてもし誰かいるとすれば、不審者であるロキは確実に攻撃される。<br>
<br>
（<b><font color=red>おれは………</font></b>）<br>
<br>
　悲鳴はロキのものだった。<br>
　おそらく家人であろう男にロキが押さえつけられている。<br>
　トールはいつの間にか男の頭を掴み、壁に向かって叩き伏せていた。<br>
「<b>黙れ</b>」トールは言った。「動くな。声をたてるな。おれが誰だかわかるか。巨人殺しだ。アース神族の雷神トールだ。おまえの頭なんて簡単に潰せる。わかるか。抵抗するな。指先一つ動かさず、角杯みたいに<b>黙ってろ</b>」<br>
　男は頷こうとしたのかもしれない。トールに頭を掴まれているせいで動くことができないのだろう。<br>
　階段の向こうに影が見える。巨人族の女だ。年齢からして、この男の妻だろう。<br>
「<b>叫ぶな</b>。声を出すな」トールは男を掴んだまま、ゆっくりと女に近づく。「大人しくしていれば危害は加えない」<br>
　ロキが咳き込みながら起き上がるのを確認する。特に怪我はしていないようだ。<br>
「<big><b>トール！</b></big>」<br>
　トールを見て、ロキが叫んだ。<br>
　トールの腹にはナイフが刺さっていた。頭をつかまれたままの男が隠し持っていた<b><font color=red>ナイフ</font></b>で刺したのだ。降りてくるときに警戒してナイフを持ってきたようだ。<br>
　トールは崩れ落ちた。<br>
　身体が重いのは男が上に乗っているせいだ。トールを組み伏せようとしているのだろう。抵抗するだけの力が湧いてこない。<br>
（<small><b>おれは………</b></small>）<br>
　力を込めても腕が動かせなくなっていた。後ろ手に両腕が縛られている。そんなことをしなくてももう抵抗できないというのに。<br>
　男がロキに近づくのが見えた。<br>
　ロキが悲鳴をあげるのが聞こえた。<br>
　<b><font color=green>雷が落ちる。</font></b><br>
（<big><b>おれは………！</b></big>）<br>
　ルーンの高まりで高温になっていた腕はいくらかの焦げ跡をトールの腕に作ったが、腕を縛る縄を焼き切るという働きも見せた。トールは男を殴り倒す。また家に雷が落ちた。<br>
　地面が揺れた。<br>
　<big><b>甲高い、布が擦り合わせられるような高周波。</b></big><br>
　ロキを連れて家を出たトールを待っていたのは<b><font color=green><big>世界蛇ミズガルズオルム、ヨルムンガンド</big></font></b>だった。<br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10924059.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10935649.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10924059.html">
    <title>
			year/3/14
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10924059.html</link>
    <description>１４  　リュングヘイドがトールの贖罪の約束を認めたのか、あるいは単にトールを殺すことを諦めたのか、その後何も仕掛けてくることはなかった。 　トールとロキはリュングヘイドらの家に身を寄せてからきっかり三日後、出発した。  　目指すは巨人族の国ヨツ...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2010-01-11T21:10:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１４</div><br>
<br>
　リュングヘイドがトールの<b>贖罪</b>の約束を認めたのか、あるいは単にトールを殺すことを諦めたのか、その後何も仕掛けてくることはなかった。<br>
　トールとロキはリュングヘイドらの家に身を寄せてからきっかり三日後、出発した。<br>
<br>
　目指すは巨人族の国ヨツンヘイムの首都、<b>ウドガルド</b>。ミッドガルドを東西に分ける山脈を陸路で越える最も安全ルートでも、敵国の首都を通らなければいけないのだ。<br>
　フレイドマルの馬をこのまま借りていくことにリュングヘイドは反対しなかったため、また馬一頭での旅となる。トールの右腕はリュングヘイドの家に宿泊している間に徐々に癒え始め、今は一応動くようになっていた。おかげでロキを乗せたままでも馬に負担がかからない程度には急がせることができる。アース神族軍にはできるだけ早く合流したかった。<br>
　道程はそう短いものでも、簡単なものでもなかった。四季の移り行きの激しいミッドガルド、<b><font color=blue>冬</font></b>の大地は寒々と凍えていた。雪が降り続けてほとんど前に進めない日もあった。山賊に襲われた日もあった。得体の知れない旅人であるトールとロキを快く受け入れてくれる家は、リュングヘイドに家以来なかった。<br>
（今年の冬は長いな………）<br>
　トールは降り続ける雪の中思った。自分がミッドガルドで生活していたころの冬はこんなに長かっただろうか。春とはいえないまでも、雪は止んで幾分かの温かさを感じられるようになっても良い時節だったはずだ。<br>
（<b><font color=red>ラグナレク</font></b>か………）<br>
<br>
　オーディンがいつか訪れる<b><font color=red>力の滅亡</font></b>、ラグナレクについて語っていたことを思い出す。ラグナレクが起きる直前、冬は例年の三倍ほど長くなるだろう、と。外部からのルーンの供給は絶たれ、ただただルーンの流出をするだけで大地は冷えていく。完全に乾き、冷え切った大地を焼き尽くすために<b>黒く輝く巨人</b>がムスペルヘイムからやってくるのだ、と。<br>
　<b>それはなんだ</b>、とトールは尋ねた。そもそも<b>オーディンはなぜそんなことを知っているのか</b>、と。<br>
　<b>たぶん言ってもわからない</b>、というのがオーディンの返答だった。<br>
　そう言われて、なるほど確かにそうかもしれない、とトールは納得した。自分はそう多くの知識を溜め込んでいるわけでもないし、長寿のアース神族のように長い経験の中生きてきたわけでもない。オーディンが普通のアース神族ではないということは、彼の魔法を見ていればわかる。<b>この世界の物理法則では記述しきれない力</b>をオーディンは<b><font color=green>魔法</font></b>と呼んだ。<br>
　彼の言うことが正しいのであれば、もうすぐラグナレクが訪れるということなのだろう。火の国の巨人スルトが世界の浄化のためにやってくる。<br>
「でもトール……」オーディンは言ったものだった。「きみが如何に強くても、<b>スルトには勝てない</b>。スルトとはそういう生き物なのだから。スルトとは、まさに火なんだ。火というルーン体で、それを散らしたりすることはできても破壊することはできない。ラグナレクのとき、きみは無理に戦う必要はないんだ。スルトのことはおれたちがどうにかするから」<br>
「じゃあどうしておれを仲間に引き入れたんだ？」とトールはそのとき訊いた。<br>
「別に仲間にしようと思ったわけじゃないよ。ただ放っておくと、あのときのきみは死んでしまいそうだったから」<br>
<br>
　そうなのかもしれない。自分は別に戦士としてオーディンに協力を要請されているわけではないのだ。オーディンは彼自身、強い。魔法の力がある。<br>
　自分の存在意義とはなんなのだろう。オーディンには戦士としての力を頼りにされているわけではない。逆にオーディンに保護され、アース神族軍にも斡旋してもらった身だ。<br>
　自分が戦い続ける意義というものはあるのだろうか。ただただ同胞を殺戮して、侵略して、蹂躙し続けていく日々。アース神族軍が戦争を終わらせて、オーディンは真に平和な世界を作れるのだろうか。その場にトールの居場所はあるのだろうか。<br>
「<b>トール……</b>」<br>
　進行方向に背を向けて、トールに抱きつくように馬に乗っているロキが声を発した。彼女の身体とトールの身体の境界上には鞘に収められたロキの魔刀レーヴァティンがあり、わずかに熱を発しているためほんのりと暖かい。<br>
「<b>なんだ</b>」とトールは言った。今日初めて発した言葉だった。<br>
「今、どのへんかな……」ロキの瞳は僅かに潤んでいた。乾燥した外気に晒されて疲弊しているのかもしれない。<br>
「もう少しでウドガルドのはずだな」<br>
　これまでにヨツンヘイムの多くの街や村を通ってきた。アースガルドとは違い、ミッドガルドは気象災害が多く、夏と冬の寒暖差だけでも生活を悩ませる要因となる。だがそれを含めてもミッドガルドの人々はアースガルドと比べて、苦しい生活の中でも精一杯生きているように見えた。<br>
「そう………」<br>
　ロキの体力も限界そうだった。トールとは違い鍛えられていない女の身体のロキでは長旅がきついのも当然だろう。この状態で黒妖精の国アールヴヘイムを通ったり、ミッドガルド中央部の大山脈を越える余力はない。多少の危険を冒してでもウドガルドを通るしかない。<br>
　雪。<br>
　小高い丘からトールは下方を見下ろした。白く覆われた大地の中に無機質な城壁が聳え立っている。<b>ウドガルド</b>。巨人族の国の首都。<br>
　トールは馬に前に進むように伝える。<br>
<br>
<br>
<small><br>
<blockquote>　やがてフィムブルヴェト<冬の中の冬>がミッドガルドを捕え、のどを締めつけることでしょう。吹き流される雪の雲は、来たから南から東から西から一点に集まってきます。身を切るような下、刺すような風が荒れて、輝いている太陽も助けにはなりません。間に夏をはさむことはなく、そのような冬が三度続きます。<br>
　こうして、最後の時が始まります。その時、<鉄の森>の年老いた女巨人の子供たちが、やりたいことをやるでしょう。狼のスコールがあごの間に太陽を捕えて、のみこむでしょう――彼はアースガルドに血のりをはねとばします。そして彼の兄弟のハティは、月をつかまえ、切りさいなむことでしょう。星は空から姿を消してしまいます。</blockquote><br>
<div align=right>（三十二　ラグナレク　より）</div><br>
<br>
<b>●破壊と再生</b><br>
　ラグナレク。世界の破滅と再生を担うこの現象、あるいは事件と呼べるものは長い長い冬、フィムブルヴェトの到来から始まる。<br>
　しかしどのようにしてラグナレクが起こるのか、ではなく、なぜラグナレクが起こるのか、ということに関する資料は少ない。<br>
　かつて岩の巨人族はアースガルドに石工として忍び込み、アースガルドの城壁を修復する報酬として太陽と月、それに絶世の美女であるフレイヤを要求しようとしたことがある。彼はアース神族達を照らすものを奪い取り、アース神族を間接的に滅ぼそうと画策したのだ。もっともこのときはロキの姦計とトールのハンマーによって、岩の巨人はなすすべもなく頭を叩き割られてしまったものなのだけれども。<br>
　太陽や月といった世界を照らすものは、実際に大地にエネルギーを注いでいる。太陽から地球へ放たれるエネルギー、正確には地球大気の上端で太陽からの放射線に直角な方向の、単位面積・単位時間あたりに受ける太陽の放射エネルギーは1.37*10^3W/m^2。この膨大な量のエネルギー（一見すると小さい数に見えるが、単位面積・単位時間あたりにこれだけのエネルギーは非常に大きい）の源は太陽の核融合反応であり、それによる高温状態による。高温の物体は温度の四乗に比例したエネルギーを放射するのだ。<br>
　この太陽を世界から奪い去ってしまえば、世界は大混乱どころでは済まされない。冬よりも暗い冬の世界が満ち満ちる。惑星のエネルギーの根本の源は須らくその太陽系の太陽を起源とするものであり、惑星は進行形の状態でエネルギーを得ているのだ。巨人族の作戦も正解だったといえるだろう。<br>
　しかしラグナレクは太陽が奪い去られた結果起こるものではない。ラグナレクの前哨現象であるフィムブルヴェトの前では太陽は役には立たず、スコール狼によって飲み込まれてしまう。<br>
　なぜラグナレクが起こるのか、ラグナレクとはなんなのか。<br>
　それはラグナレク後の世界に回答があるように思われる。世界はスルトの炎によって焼き尽くされるものの、生き延びていたものたちもいた。世界は再び建造される。太陽と月は狼達に飲み込まれる前に娘を産んでいた。大樹ユグドラシルは変わらずただずみ、悪竜ニドヘグもまたユグドラシルの精気をすい続ける。<br>
　こうして……、こうしてどうなるのか。またラグナレクが起こるのではないか。<br>
　いつかはそう、生命の後には破壊が訪れる。生が世界の誕生ならば、死がラグナレクである。生あれば死があるのは当然のこと。だからラグナレクは起こるのではないだろうか。</small><br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10916700.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10924061.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/q/10916718.html">
    <title>
			journal/12/28
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/q/10916718.html</link>
    <description>『朝霧の巫女』6巻がようやく発売されたので、紹介を旧世紀網膜展覧会などに載せつつ『ドッグイア』の13を更新。 　ちなみに紹介ですが、別所に書いたものなのでだいぶ文体が緩いです。  　最近は鉄鬼なんぞやっていたりとか。 　ようやく整備型まで登場しまし...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-12-28T23:29:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[『朝霧の巫女』6巻がようやく発売されたので、紹介を旧世紀網膜展覧会などに載せつつ『ドッグイア』の13を更新。<br>
　ちなみに紹介ですが、別所に書いたものなのでだいぶ文体が緩いです。<br>
<br>
　最近は<a href=http://tekki.gameyarou.jp/>鉄鬼</a>なんぞやっていたりとか。<br>
　ようやく整備型まで登場しました。ちなみにDualばっかり使っています。ナノエンジンブースターを使ったDualがいたら、おそらく現在のDual使用者数を鑑みるにわたしでしょう。]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/r/10916702.html">
    <title>
			presen/朝霧の巫女
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/r/10916702.html</link>
    <description>　ようやく発売されました。     　本当にようやくです。  　『朝霧の巫女』を知らない方はご存知ないでしょうが、この作品は既に連載が終了しています。連載量から想定される全巻数は9巻。しかし今日出たのが第6巻。 　何があったのかは定かではありませんが...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-12-28T23:12:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[　ようやく発売されました。<br>
<br>
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=burikino-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&asins=4785932864" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><br>
<br>
<br>
　本当にようやくです。<br>
<br>
　『朝霧の巫女』を知らない方はご存知ないでしょうが、この作品は既に連載が終了しています。連載量から想定される全巻数は9巻。しかし今日出たのが第6巻。<br>
　何があったのかは定かではありませんが、作者の都合により描き直しをしたりなんだりで、発売が引き伸ばされていました。<br>
　前巻の5巻の発売はなんと2年も前。<br>
　2年の歳月を越えてようやく第6巻が発売されたのです。<br>
　これが人気連載作品（『HUNTER×HUNTER』とか）ならわかるんですが、朝霧の巫女がそんなに人気の作品とも思えない。どれだけ懐が深いんですかヤングキングアワーズ。頑張ってよウガワさん！<br>
<br>
　正直この6巻が売れないと、さすがのアワーズも7巻以降の発売に躊躇する（そもそも7巻がいつになるのか不明ですが）気がしないでもないので、ここで宣伝しておきます。<br>
<br>
●登場人物<br>
：忠尋と柚子<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220667.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』3巻より）<br>
　主人公とヒロイン。<br>
　いろいろ巻き込まれたり巻き込まれなかったり。<br>
　妖怪モノで鬼太郎は定番です。柚子は巫女。<br>
<br>
：倉子と珠<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220671.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』6巻より）<br>
　柚子の姉と妹。<br>
　巫女。<br>
<br>
：こま<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220669.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』3巻より）<br>
　忠尋を見守るあやかし。<br>
　倉子の古い知り合いこまさん可愛い。<br>
<br>
：楠木<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220668.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』3巻より）<br>
　忠尋のホモ達。<br>
<br>
：巫女委員会<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220672.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』6巻より）<br>
　巫女だよ！<br>
<br>
<br>
　なんか妖怪が出てきたぜ！　というのが簡単なあらすじでしょうか。<br>
　あんまりあらすじを紹介しすぎるとネタバレになりそうなので（ネタバレというほどのネタもない気がするけれど）、とりあえず個人的な『朝霧』の魅力でも。<br>
<br>
　まぁ巫女が好きな人は買っても良いんじゃないでしょうか。わたしは別に好きではありませんが。<br>
　『朝霧』の良さはいかにもな格好付け感ではないかと思います。<br>
<br>
　コレとか、<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220666.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』4巻より）<br>
<br>
　コレとか、<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220665.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』6巻より）<br>
<br>
　台詞が無駄に格好つけている。<br>
　芝居がかった、舞台上の台詞回しっぽいといっても良いかもしれません。ニヒルに気取った感じの格好つけ方ではなく、いかにも格好つけてるぞー、的な格好のつけ方で、こういうのは非常に好きです。<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220659.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』6巻より）<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220663.jpg"><br>
『朝霧の巫女』5巻より。<br>
<br>
　ストーリィは作者の短編集に収録されている話に繋がっているような繋がっていないようなだったり、勢いで描いているんじゃないかという部分もあったりですが、好きなひとは好きでしょう。<br>
　なんとなく興味のある方も興味のない方も、巫女好きの方も猫耳好きの方も、金が余っている方も余っていない方も、アワーズと朝霧7巻以降のために是非お買い上げくださいこまさん可愛い。<br>
<br>
　肝心の第六巻ですが、こまさん可愛い。<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220664.jpg"><br>
(『朝霧の巫女』6巻より)<br>
<br>
　こまさんかわ……、ってあれ、出番これだけ？<br>
　ちょ、柚子とか巫女委員会とか菊理とかよりこまさん出してくださいよウガワさん！　こまさんを！　他の人いいから！<br>
<br>
<img src="http://burikino.noblog.net/image/10220662.jpg"><br>
（『朝霧の巫女』6巻より）<br>
<br>
　でも陛下は可愛いので許す。<br>
　こまさん可愛い。<br>
<br>
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=burikino-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4785918918&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><br>
<br>
　作者の初期の作品である『スタンダードブルー』もお勧めです。 <br>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10916700.html">
    <title>
			year/3/13
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10916700.html</link>
    <description>１３  　夜。 　トールは宛がわれた部屋のベッドに仰向けになっていた。 　眠れない。 　腕の傷の痛み。 　昨日の晩にフレイドマルの家であったこと。 　ロキに自身が巨人族であるということを語ったこと。 　リュングヘイドがフレイドマルの娘であるというこ...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-12-28T23:07:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１３</div><br>
<br>
　夜。<br>
　トールは宛がわれた部屋のベッドに仰向けになっていた。<br>
　眠れない。<br>
<b>　腕の傷の痛み。<br>
　昨日の晩にフレイドマルの家であったこと。<br>
　ロキに自身が巨人族であるということを語ったこと。<br>
　リュングヘイドがフレイドマルの娘であるということ。<br>
　リュングヘイドの二人の子供、兄のシアルヴィと妹のロスクヴァの無邪気さ。</b>　どれを思い出しても眠ることができなかった。<br>
<br>
「<b>トール……</b>」<br>
　トールは彼に宛がわれた部屋、ロキは子供たちの部屋へと別れた直後、ロキはトールの部屋にやってきて話をした。<br>
「やっぱり、明日にはこの家を出よう。痛みが辛いかもしれないけど……、そのほうが良いよ」<br>
「どうして？」トールは自分自身が感じていることをロキに言われて、逆にそう問いかけていた。<br>
「だって……、<b>辛いよ</b>。シアルヴィも、ロスクヴァも、リュングヘイドも、みんな、<b>フレイドマルやレギンやオッタルのことを知らない</b>。知らないから、あんなふうに笑って……、わたしたちを歓迎してくれてる。でも、でも……、<b><font color=red>本当は………</font></b>」<br>
「おれの右手はまだ動かない」トールは言った。「もし何かに襲われたときや吹雪が強くなったとき、きっとお前を守ってやれない。だからまだこの家にお邪魔になろう」<br>
「でもっ」<br>
「早めに休もう。今日は」トールは言ってロキの頭を撫でた。「お前も疲れているだろう」<br>
　ロキはずっと伏せ目がちだった目線をすっと上げ、トールを僅かに睨み返した。しかしすぐに視線をまた下げて部屋を出て行ってしまった。<br>
<br>
（出よう、か………）<br>
　トールは食卓でのリュングヘイドや彼女の亡父の二人の両親、それにシアルヴィとロスクヴァの会話を思い出す。<br>
「オッタルはね、凄いんだよ」とロスクヴァは言った。「冬なのに冷たい川の中に入って、お魚とか捕ってきてくれるんだから。よくおすそ分けに来てくれるんだよ」<br>
「オッタルってのは川獺な」と付け足すシアルヴィ。<br>
「でも家族だよ」とロスクヴァ。<br>
「まぁな。オッタルは良いやつだな」<br>
「<b>凄く可愛いんだよぉ</b>。もふもふしてる。可愛い。川獺って、見たことある？　わたしオッタルしか見たことない。お兄ちゃんもないでしょ？」<br>
「オッタルは赤ちゃんのときに死にかけてたのを爺ちゃんが拾ったって話だから、たぶん家族は死んじゃってるんだろ。おれも見たことない」<br>
　フレイドマル、レギン、オッタル。<br>
　彼らは確かにリュングヘイドらの家族だった。大切な家族だったのだ。<br>
　<b><font color=red>彼らを殺したのはトールだ。</font></b><br>
　だがトールはどうするべきだったというのだ？<br>
　ロキを犯してトールを殺そうとしたのはフレイドマルとレギンだ。彼らがそうしようとした理由はオッタルが殺されたからだ。<b>だがトールはオッタルが彼らの家族だということは知らなかったのだ</b>。雪の中、ただ小動物がいることしかわからなかった。川獺であるということさえ認識できなかったのだ。<b><font color=red>オッタルが彼らの家族であるということを知っていたら、殺そうとなんてしなかった。</font></b><br>
　今更言い訳にしかならない。<br>
　彼らをトールが殺したのは事実なのだ。<br>
　繰り返される戦争、闘争。アース神族も巨人族も、等しく死んでいくだけの戦い。戦いの行く末に起こるのはラグナレク。炎の国ムスペルの巨人<b><font color=red>スルト</font></b>が目覚め、大地に浄化の炎を振りまき生命は死滅する。<br>
　オーディンと出会ってからはあらゆる迷いを捨て、彼を矢や刃から守る盾になろうと思った。彼の剣になろうと思った。<br>
　だがトールは今、久しぶりに迷いを持った。<br>
（<b>オーディン………</b>）<br>
　お前は一体、どこへ行ってしまったんだ？<br>
　オーディンが忽然と消え去ったのは、世界にヨルムンガンド蛇が誕生する少し前のことだった。その頃のオーディンは少し様子がおかしく、何かを心配するような面差しを何度も見かけた。<br>
　彼が消えてから何度も季節が巡った。<br>
　アース神族とヴァン神族の調停という形で幕を閉じた戦争は、アース神族と巨人族の戦いという形でまた幕を開けた。ひとは死に絶え、野は荒れ果てていく。何も生み出さず、炎がまき散らかされるようにして大地の安寧を少しずつ削ぎ取っていく。<br>
　それでもオーディンは戻ってこない。<br>
<br>
　部屋のドアが開いたとき、トールはロキが入ってきたのだと思った。部屋に入ってきた人物は明かりも何も持たず、足音もせずにトールに近づくと、両手をトールの胸に目掛けてつきたててきた。<br>
　トールは仰向けのまま、左手だけでその人物の腕を掴み、止めた。手は細く、冷たく、<b><font color=blue>包丁</font></b>を握っていた。リュングヘイドだった。<br>
　リュングヘイドは舌打ちをすると素早くトールの身体に馬乗りになって、体重をかけて包丁を押し付けてきた。しかしそれでも女の細腕でトールに刃を突き刺すことは不可能だった。<br>
「<b>やめろ</b>」<br>
　トールは呟き、リュングヘイドの手首を捻って包丁を奪う。<br>
　一瞬怯んだように見えたリュングヘイドだったが、包丁を奪い返そうと手を伸ばしてくる。<br>
「やめろ。あんたじゃおれは殺せない。なにがしたいんだ」<br>
「<b>巫山戯るな</b>」リュングヘイドは震える声で言った。「あんたは……、あんたはなに？　父さんや兄さんや、オッタルを<b><font color=red>殺したのはあんたでしょうに</font></b>」<br>
「知っていたのか」<br>
　トールは驚いた。食卓でのリュングヘイドはトールが彼女の家族を殺した犯人であることを知っているようにはまったく見えなかった。<br>
「あんたの持ってきた食料を見た……。<b>新鮮な魚なんて、この季節このあたりじゃ取れない。そんなの持ってこられるのは、オッタルだけ</b>」リュングヘイドは両手でトールの首を掴む。「あんたね。家は酷い有様だった。血だらけで……、誰もいない。今度はどうする気、この家を襲うの？」<br>
　リュングヘイドは手に力を込めてきた。<br>
　彼女はフレイドマルの家に行っていたらしい。そして見たのだ。血塗れのフレイドマルの家を。<br>
　フレイドマルとレギン、オッタルの死体はすべて埋めた。そのため彼女が死体を直接見ることはなかっただろうが、凄惨な殺しがあったことは理解できただろう。<br>
「<b>仕方がなかった</b>」<br>
　トールはリュングヘイドの二つの手首を片手で掴む。彼女の腕はあまりにも細かった。トールはそのまま彼女をベッドに押し倒した。<br>
「<big><b><font color=red>仕方なかった！？</font></b></big>」リュングヘイドはトールの拘束を外そうと暴れる。「そんなわけない。そんなわけないのに……、あんたたちはなんなの。父さんたちを殺して、食料を奪って、それなのに簡単に分け与えて、シアルヴィたちにはあんなふうに笑いかけて……」<br>
「だから、仕方がなかったんだ」トールはもう一度繰り返す。「確かにオッタルもフレイドマルもレギンも、殺したのはおれだ。だからロキは悪くない。それだけだ。事情があった」<br>
「事情なんて………」だんだんとリュングヘイドの力が弱まっていく。彼女は諦めたのか、力なく顔を背ける。震え、泣いていた。「<b>巫山戯ないでよ………</b>」<br>
　トールはどうして良いかわからなかった。<br>
　今まで誰かを殺すとき、相応の意志と信念を持って命を奪ってきたつもりだった。命を奪うなりの責任を背負い、生きてきたつもりだった。<br>
　それなのに、今回ばかりはどうして良いのかわからない。<br>
「すまなかった」<br>
　トールはそんな謝罪の言葉しか言うことができなかった。<br>
「巫山戯ないでよ………」リュングヘイドは嗚咽交じりに言った。「わたしの家族を殺しておいて、そんな言葉で片付けようだなんて………」<br>
「責任を取る」トールはリュングヘイドの手首を離す。「<b><font color=red>賠償はする</font></b>。おれの叶えられる範囲内で、あんたの言うとおりにする。だが、今は駄目だ。ロキを仲間のところまで返さなくちゃいけない。彼女を無事に帰すことができたら、ここに戻ってくる。いくらでも賠償をする。羊でも、金でも、土地でも、<b>おれの命でも。おれに払える限りのことはする</b>」<br>
　リュングヘイドはすすり泣いていた。<br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10907377.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10924059.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/q/10907379.html">
    <title>
			journal/12/14
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/q/10907379.html</link>
    <description>　またしても日記のタイトルが変わっていますが、実はこういうわけで、現在ゲームポットにて開発中の新MMOがJunkMetalの新作かもしれない、という噂があるのです。 　もしこれがJunkMetal2だったりすると、ここでわざわざ今はプレイ不可能なJunkMetalの仮想的...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-12-14T00:39:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[　またしても日記のタイトルが変わっていますが、実は<b><big><a href=http://www.gamepotfesta.jp/2009/new_mmo/ target=_blank>こういうわけ</a></big></b>で、現在ゲームポットにて開発中の新MMOがJunkMetalの新作かもしれない、という噂があるのです。<br>
　もしこれがJunkMetal2だったりすると、ここでわざわざ今はプレイ不可能なJunkMetalの仮想的なプレイ日記とかやっているのが滑稽になってしまうわけで、いろいろと考えた挙句に普通の日記的な扱いに修正することに。<br>
　いろいろネタはあったんですけどねー。いや本当。本当。本当。<br>
<br>
　というわけで、このページは以後『旧世紀網膜博物館の日誌』として扱います。先頭タイトルはjournalで。<br>
　以下普通の日記的なもの。<br>
<br>
　ドッグイア3行12節を更新しました。特に何もない感じ。山場ねぇなぁ。忙しさが薄れてきたので、来週辺りは普通に書ける気がします。<br>
<br>
　そういえば今年の感じが発表されたようで、『新』らしいですね。何の捻りもない漢字だな。<br>
　実はわたしがよく参加する人狼の製作者のブログにて<b><big><a href=http://tkido.com/blog/2826.html target=_blank>、「来年の漢字を当てる」という企画</a></big></b>があったのですが、めでたく<b><big><a href=http://tkido.com/blog/720.html target=_blank>正解</a></big></b>しました。やったぜ。<br>
　無難に『新』とか言ってたんですが、本当に無難に来るとは……。<br>
<br>
　今回も<b><big><a href=http://tkido.com/blog/2837.html target=_blank>同様の企画</a></big></b>をやるようなので、参加することに。<br>
　二分ほど悩んだ挙句、『十』にすることにしました。<br>
　2010年だから十とか安直過ぎるじゃないか、と言われるかもしれませんが、いろいろと考えての結果だったりします。<br>
　<b><big><a href=http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E5%B9%B4%E3%81%AE%E6%BC%A2%E5%AD%97 target=_blank>Wikipedia</a></big></b>で今までの漢字を見てみると、99年の『末』なんかは当時の世論や情勢をまったく反映していないんですね。別に世も末ってわけでもなかったし。<br>
　それだけ99年という年号そのものが人々の心に残ったということでしょう（他にわかりやすい大きな事件がなかった、というだけかもしれないけれど）。<br>
　で来年の2010年。かなり綺麗な文字列の並びです。これで大きな事件も起こらず、かつ何かしら『十』に関連付けられそうな出来事（スマップかエグザイルが10人になる、とか）が起これば来年の漢字『十』は十分に狙えると予想しますね。<br>
　]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10907377.html">
    <title>
			year/3/12
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10907377.html</link>
    <description>１２  　ロキとトールはフレイドマルの家から拝借してきた食料をある程度持っていたため、それを譲る代わりに寝床を提供してくれないかと提案してみた。しかし家人は親切であり、特に怪我をしたトールを気遣ってか対価なしに滞在して良いと言ってくれた。 　と...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-12-14T00:31:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１２</div><br>
<br>
　ロキとトールはフレイドマルの家から拝借してきた食料をある程度持っていたため、それを譲る代わりに寝床を提供してくれないかと提案してみた。しかし家人は親切であり、特に怪我をしたトールを気遣ってか対価なしに滞在して良いと言ってくれた。<br>
　とはいえそう言葉に甘えるわけにもいかない。四季の移り変わりが激しいミッドガルドの片田舎で、どこのだれとも知れない旅行者を二人も泊める余裕はないだろう。二人は食料を譲り、代わりに三泊だけ宿泊させてもらうことにした。日程はトールの「<b>三日も休めば治る</b>」という言葉を参考に決めた。常人なら斧で抉り取られた肩の傷が三日で治るはずがないのだが、トールだと本当に治しそうで怖い。<br>
<br>
「<b>お部屋、空いてるよ</b>」<br>
　と子供の一人が言う。男女のきょうだいの、妹のほうだろう。トールが老夫妻と少女の兄と一緒に食料庫に食料を移している間に、彼女はロキの手を引っ張っていく。<br>
「<b>ここ</b>」<br>
　にっこりと笑う少女に通されたのは、小さな部屋。こじんまりとした様相で調度品も少ないが、それもこの家の小ささを思うと仕方のないことだろう。<br>
「ありがとう」ロキは微笑んでみせる。<br>
　しかしベッドが一つしかない。二人同時に寝られるような部屋ではない。<br>
「えっと……、ここだけ？」ロキは尋ねてみる。<br>
「空いてるの、ここだけだよ。お父さんの部屋」<br>
　父親の部屋でそこが空いているということは、父親はとうに亡くなっているということなのだろう。<br>
　そういえば彼女の母親はどこにいったのだろう。老夫妻の子供にしては歳が離れすぎている。空いている部屋がここだけということは、母親はまだ存命しているに違いない。<br>
　そんなことを考えながら、ロキは部屋に荷を置いた。<br>
　一部屋というのはなかなか緊張するな、とロキは思った。トールのことだから<b><font color=red>何か</font></b>あるわけではないだろうが、ロキの側に問題があるかもしれない。やはり男女で一緒の部屋というのは問題だろう。老夫妻か少女の母親に尋ねてみればまだ空き部屋があるかもしれない、尋ねてみよう。<br>
　そう思案していると、ベッドの上に座った少女が声をかけてきた。<br>
「おねえちゃん、どこから来たん？」<br>
　まさかアースガルドと答えるわけにはいかない。アース神族やヴァン神族というのはミッドガルドに住む人間族たちにとっては得体の知れない存在だ。下手に恐怖感を与えることはないだろう。<br>
「東のほうなんだけど……」詳しく尋ねられると困るな、と思いつつロキは答えた。<br>
「あっちのほう？」少女はおおよそ東の方角を指差す。<br>
「だいたいそっちだね」<br>
「ふぅん………」なぜかにこにことする少女。<br>
<br>
　トールと少女の兄がやってきたので、ロキは荷物の整理を一時中断する。<br>
「<b>ここか</b>」とトールも少女の兄に聞いたのか、部屋を見て言う。<br>
「<b>そだな。</b>まぁ狭い部屋で悪いけど……、二人ならなんとかなるがね」と少女の兄。この地方の方言なのか、あるいは老夫妻と暮らしているためか、年齢にしては変わった喋り方だった。<br>
「あれ、ここ一部屋だけ？」と驚いた表情のトール。<br>
「そう。狭い家だから、そんなに部屋はない。夜ん中、隣の家まで歩くかい」少年は鼻を鳴らす。「なんだ、<b>なんか問題あんのかい</b>」<br>
「まぁ、多少」<br>
　トールの視線とロキの視線が合う。<br>
「おねえちゃんはわたしたちと一緒に寝れば良いね」と少女が手を挙げて発言した。<br>
「あぁ……、確かに」とトール。<br>
　ロキとしても、そのほうが気を遣わなくて済むのでありがたい。<br>
「良いのかな？」ロキは少女に訊いてみる。<br>
「良いよー。一緒のほうが、暖かいよ。お兄ちゃんも一緒のベッドだよ」<br>
　兄のほうに視線を向けてみると、顔を俯かせている。まだ子供とはいえ、複雑な年齢かもしれない。念のため兄のほうにもロキは訊いてみた。<br>
「一緒に寝せてもらって、良いかな？」<br>
　少年は黙ったままで、首を縦にも横にも振らない。　<br>
　そんな兄に妹が近づいていく。下から顔を覗きこんでからロキを振り返る。<br>
「良いって」とにっこり笑った。<br>
<br>
　陽が沈みはじめ、夕食の準備が始まる。この家で主に調理をしているのは少女の兄のようだった。ロキも手伝う。トールは妹と一緒に遊んでいる。<br>
「母さんは忙しいから」と少年は言った。「今日は食料の交換に行ってる。そろそろ帰ってくると思うがね」<br>
「えらいね」<br>
　ロキが言うと、彼は唇を尖らせて頷いた。恥ずかしがっているのかもしれない。可愛い、と思う。<br>
　ふと自分のこどもたちのことを思い出す。<b><font color=red>フェンリル</font></b>、<b><font color=blue>ヘル</font></b>、<b><font color=green>ヨルムンガンド</font></b>。ひとの形を持ったこどもがいたら、こんなふうに過ごしていたのだろうか。<br>
　<b>彼らはひとの形をしてはいない</b>。唯一ヘルはひとに限りなく近い形をしているが、それでも下半身が腐り、その生態はひととはかけ離れている。<br>
　彼らは不幸だが、<b>その不幸さは彼らがひとの形をしていないからではない</b>。<br>
　<b>彼<big>らがひとの形をしていない</big>のにも関わらず、<big>ひとと同じ価値観しか持っていない</big>ためだ</b>。彼らはもともとは産みの親であるロキと同じ、巨人族としての身体を持って産まれてくるはずだった。それを人為的に無理矢理歪められて、狼という、未死者という、大蛇という、<b>化け物の様相を持って産まれてきてしまったのだ</b>。もとはひとと同じ思考を持った生き物、普通に育てればひととと同じ感覚や価値観を抱くようになる。アース神族や巨人族と同じような価値観を持ち、<b>彼らが美しいと思うものを美しいと思い、醜いと思うものを醜いと思う</b>。<br>
　<b>彼らに自分自身の姿はどのように映るだろうか</b>。正しいひとの姿を知りつつも、彼らの姿はけだものであり、醜悪な化け物だ。<br>
　そう考えると、一番幸せなのはヨルムンガンドかもしれない。ヨルムンガンドだけはフェンリルやヘルとは異なり、産まれた直後に海の中に投げ落とされた。元はひとと同じ意識を持つ可能性のあった身であるとはいっても、野生の中で生きていれば野性の感情が身につく。ヨルムンガンドはそれだけで生きている。<br>
<br>
　しかしそれで本当に幸せなはずがない。<br>
<br>
　ヨルムンガンドもそうだが、ヘルもフェンリルも、いつか救われる日を待っている。<br>
　オーディン。<br>
　あなたはいつ彼らを救ってくれるの？<br>
<br>
　夕食が出来上がり、食卓に並べているときに家の戸が開いた。吹雪とともに入ってきたのはまだ年若く見える女性だった。<br>
「<b>お母さん！</b>」と食卓についていた少女が勢い良く立ち上がって駆けて行く。彼女たちの母親のようだ。<br>
「おかえり」と老夫妻が笑顔になる。<br>
「<b>ただいまです</b>」少女たちの母親は背中で戸を閉め、手に持っていた荷物を床に置いた。「ごめんなさい……、遅くなっちゃって」<br>
　彼女は一息ついたためか、ここでようやくロキとトールの存在に気付いたようだった。<br>
「えぇと……、お客さん？」と娘に問いかける。<br>
「ロキさんとトールさん」皿を運ぶ少年が言う。「旅してるんだって。おかえり」<br>
「そうなんですか」母親はロキとトールに笑顔を向けた。「はじめまして、<b>リュングヘイド</b>といいます。この子たちの母親です。何もない家ですが、どうぞごゆっくりしていってください」<br>
「二人とも、東のほうから馬で来たんだって！」少女は母親にしがみついて言う。<br>
「あら……、そうなの」リュングヘイドは首を小さく傾げる。「では途中、<big><b><font color=red>フレイドマル</font></b></big>という猟人の家に寄りませんでしたか？　<big><b><font color=red>わたしの父</font></b></big>なんですが……」<br>
<br>
<b><font color=blue>（ああ………）</font></b><br>
　ロキは身体から力が抜けるのを感じた。<br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10902685.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10916700.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10902685.html">
    <title>
			year/3/11
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10902685.html</link>
    <description>１１  　雪が降っていた。  　油断すると服の隙間から雪が吹き込んできそうなほど吹雪いている。 　その中でロキとトールは一頭の馬に乗っていた。馬は積もった雪の中をゆったりとした歩調で歩いている。この吹雪と積雪の中ではこれが限界速度。どんなに遅いス...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-12-07T00:51:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１１</div><br>
<br>
　雪が降っていた。<br>
<br>
　油断すると服の隙間から雪が吹き込んできそうなほど吹雪いている。<br>
　その中でロキとトールは一頭の馬に乗っていた。馬は積もった雪の中をゆったりとした歩調で歩いている。この吹雪と積雪の中ではこれが限界速度。どんなに遅いスピードしか出せずとも、馬を叱る気にはなれない。防寒着で身を包んで身体を寄せ合っているロキとトールでさえ寒さを感じるのだ。身体を露出させ、人二人を背負って雪の中を漕いで歩く馬が寒さを感じないはずがない。早く休ませてやりたいと思う。<br>
<br>
　ロキはトールの胸に身体を寄せる。トールの右手はレギンの斧によって肉が削がれただけでなく骨も折れていたため、今は包帯で吊っている。彼は左手で引き綱を取り、馬を操っている。ロキはトールの前で向き合うように馬の背に座っていた。ロキは僅かに魔刀レーヴァティンにルーンを注いでいるため、馬の背はほんのりと暖かい。<br>
　フレイドマルの小屋から服と食料、馬を拝借して出発してから、ロキとトールはほとんど言葉を交わしていなかった。出発したのは朝。途中昼食の際に何を食べるかでほんの僅かに喋っただけ。<br>
<br>
「<b>何もないな……</b>」<br>
　ロキは久しぶりにトールの声を聞いた。<br>
　ゆっくりと頷いてみせる。<br>
「そうだね………」<br>
　会話が途切れる。<br>
<br>
　ロキはトールに訊いてみたいことがあった。<b>それ</b>はずっと以前から可能性を考えていたことで、おそらくロキのみならず<b>他のアース神族の多くも同じことを考えていた</b>に違いない。しかし誰もがトールに<b>それ</b>を質問しなかった。質問をすることで、<b><font color=red>アース神族軍最強の戦士</font></b>が失われてしまうかもしれないと考えたから。<br>
　ロキはアース神族ではないし、アース神族軍の戦士でもない。戦争を商売としているわけでもない。ロキにはただロキの目的がある。<b><font color=green>オーディンを探すという目的が</font></b>。<br>
　アース神族の手から最強の戦士が奪われようとも、ロキには関係がなかった。だから今ロキがトールへの<b>質問</b>を躊躇しているのは別な理由からだった。トールがその<b>質問</b>をされることを望んでいないのかもしれないという、理由。<br>
　ロキはしかし、質問をすることを決意した。それは純粋な好奇心、興味、トールをより知りたいという気持ちからだった。<br>
<br>
「トールは、巨人族なの？」<br>
<br>
　ロキが質問をしてからトールが質問に答えるまでの間、彼が二回息を吐いたのが白い吐息でわかった。馬は三十歩ほど歩を進めていた。<br>
<br>
「そうだ」<br>
<br>
　トールの髪と顎鬚は燃えるような見事な赤毛。髪の色が黒か茶のものがほとんどのアース神族の中で、赤毛は珍しい。彼の体格も、アース神族にしては大きすぎる。<br>
　誰もが気付いていながら、指摘しなかった。<br>
　最強の武器ミョルニルを操る、アース神族が誇る<b><font color=green>【巨人<b><font color=red>殺</font></b>し】</font></b>。それが巨人族だなどということは。<br>
「どうして？」ロキは尋ねる。<br>
「なにが？」トールは表情を動かさず、ロキの疑問に疑問で返した。<br>
「トールはどうして……」<b>同族の巨人族を殺せるのか</b>、と言いかけて、ロキは口を噤んだ。「どうして、アース神族軍にいるの？　アース神族だなんて嘘をついて……、アース親族に協力して………」<br>
「アース神族だなんて言った覚えはない。だから嘘はついていないな」トールは小さく笑った。今まで見たことのない表情だった。「アース神族に協力しているわけでもないし……、まぁ、実際は協力しているか。うん、協力しているな」<br>
　ロキは相槌も打てず、トールに抱きついたまま彼の二の句を待った。<br>
　その間も雪は吹雪いていた。トールの身体が積もる。ロキは動かない彼の右腕の代わりに雪を落とす。<br>
「昔から、アース神族と巨人族は戦争ばかりしていた」トールは少し視線を持ち上げ、呟くように言った。「最近じゃヴァン神族とも戦ったりもしていたけど、だいたいはアース神族と巨人族の戦争だった……。いや、そこはどうでも良いか」<br>
　トールにもたれかかるロキには、彼の表情がよく見えなかった。<br>
「<b><font color=red>戦争で、家族が死んだ。</font></b>妻も、息子も、娘も、父も母も……、<b><font color=red>みんな死んだ</font></b>。おれがアース神族と戦っている間に村は焼かれて、略奪されて、何もかもが奪われていた。今も昔も変わらない。勝者が弱者を嬲る。奪う。犯す。何もかも。厭になって巨人族の軍から逃げ出した。<b>そのときに、オーディンに会った。</b>戦争を止めようとしているオーディンに。おれはあいつに協力することに決めた。あいつは戦争をなくそうとしている。どうやって事を成そうとしているかは知らない。でもあいつは本当に、心の底から、世界から戦がなくなって平和な世の中が訪れることを望んで、行動している。だからおれはあいつに協力することにしたんだ」<br>
「オーディンが……」ロキは凍える喉を震わせて声を発す。自分の声は掠れていたものになった。「<b><font color=red>巨人族を殺せ</font></b>って言ったの？」<br>
「そうは言っていない。ただ……、<b>おれはあいつを守りたい</b>。あいつはアース神族だからな。おれは降りかかる火の粉を払っているだけだ」<br>
　ロキはトールの胸に額を当て、息を吸い、吐いた。膝の間のレーヴァティンが熱かった。<br>
「<b>オーディンが本当に戦争を止めようとしていると思っているの？</b>」<br>
　ロキは自分の声があまりにも小さくなっていたのに気付き、もしかするとこれでは吹雪の音にかき消されてトールに届かないかもしれないと思った。<br>
　しかしトールは力強く頷いた。<br>
「<b><font color=green>おれはオーディンを信じるよ。</font></b>あとは為すべきことをするだけだ」<br>
　ロキは何も言えなかった。<br>
<br>
　巨人族でありながら同胞を裏切り、アース神族に組した<b>トールはロキに似ていた</b>。オーディンに影響されたところも、自分の目的のために動いているところも。<br>
　しかしその目的だけが違っていた。<br>
<br>
　トールはオーディンを守ろうとしている。<br>
<br>
　ロキはそうではない。<br>
　ロキの目的は、まずオーディンを探すこと。見つけ出してその後どうするかは、まだ決めていない。決められていない。<br>
<br>
　ロキは息を吐く。暖かい吐息が空気中で冷やされて凝結し、白く濁る。それはロキもトールも、馬も同じ。一様に息は白い。<br>
　馬の身体が沈む。雪の下の地面が傾斜していたようだ。馬は力強く体勢を立て直す。<br>
「ようやく村か……」<br>
　トールの呟きにつられてロキは後ろを振り向いた。木造の小さな家々がいくつか閑散と見える。馬が足を沈めたところは畑かもしれない。<br>
　馬から降り、手近な家を訪ねてアース神族であることは伏せたまま泊めて欲しい旨を告げる。家人は年老いた老夫婦、それに小さな子供が二人だけだった。ここならフレイドマルの小屋のようなことはないだろう。<br>
　老夫婦は一度顔を見合わせたが、最後には頷いてくれた。子供たちが嬉しそうな表情を見せたのがロキには印象的だった。<br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10878808.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10907377.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/q/10879396.html">
    <title>
			journal/09/11/23
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/q/10879396.html</link>
    <description>　諸般の都合につき東京に行かなければならなくなった（わたしの現住所は仙台）。  　改装直後の超日記の内容がこんなんですみません。以前の超日記はJunkMetalとかけ離れた内容がほとんどを占めてしまったので、これではいかんな、と思い改装したのですが、改...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-11-23T00:33:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[　諸般の都合につき東京に行かなければならなくなった（わたしの現住所は仙台）。<br>
<br>
　改装直後の超日記の内容がこんなんですみません。以前の超日記はJunkMetalとかけ離れた内容がほとんどを占めてしまったので、これではいかんな、と思い改装したのですが、改装してもやっぱり変わらずこんな内容になってしまう。<br>
　しかも11/22中に改装したかったのに、30分ほど遅れて11/23まで遅れてしまう始末。まぁ良いや。流れるままに行きましょう。<br>
<br>
　今回の更新ですが、『ドッグイア』の三行九節・十節の更新と、四節と十節にコラムの追加となっています。<br>
　ドッグイアは行ごとにそれぞれ『北欧神話物語』モチーフとなった話があり、第一行のイドゥン・チュール編は『七　ロキの子供たちとフェンリルの捕縛』および『八　盗まれたイドゥンの林檎』が、第二行のフレイ・ゲルド編は『十一　スキールニルの旅』が、そして今回のロキ・トール編が『二十六　オッタルの賠償金』がモチーフとなっています。<br>
　多少エロチックというかそんな感じのアレがなきにしもあらずですが、ロキが出てくると自然とそういう話になってしまう。不思議なことに。まぁ良いか。<br>
　コラムは久しぶりに書いたら変な感じになりましたね。<br>
<br>
　まぁともかくとして、次はJunkMetal関連のことが書けることを祈りつつ。<br>
　東京行ったらついでに何か見てくることにしましょう。せっかくだから。しかし東京ってここ三年ほど行ってないのよね（実家は栃木です）。何があるのかさっぱりだ。<br>
　<br>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/q/10879394.html">
    <title>
			旧世紀網膜博物館の日誌の目次
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/q/10879394.html</link>
    <description>・旧世紀網膜博物館の日誌について ：日誌では通常のブログ（日記を目的としたウェブログ）らしい内容となります。そのため本ページのみ他のページと構造がやや異なります。  ・目次 2010 ：2月 　:･15 24  ：1月 　:･11  2009 ：11月 　:･23  ：12月 　:･14 ...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-11-23T00:29:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[・旧世紀網膜博物館の日誌について<br>
：日誌では通常のブログ（日記を目的としたウェブログ）らしい内容となります。そのため本ページのみ他のページと構造がやや異なります。<br>
<br>
<b>・目次<br>
<u>2010</u><br>
：2月<br>
　:･<a href=10945507.html>15</a> <a href=10951494.html>24</a><br>
<br>
：1月<br>
　:･<a href=10924062.html>11</a><br>
<br>
<u>2009</u><br>
：11月<br>
　:･<a href=10879396.html>23</a><br>
<br>
：12月<br>
　:･<a href=10907379.html>14</a> <a href=10916718.html>28</a><br>
</b><br>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10878808.html">
    <title>
			year/3/10
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10878808.html</link>
    <description>１０ 　 　トールはオーディンについて考えていた。自分がアース神族軍に所属する原因となった、長年会っていない友のことを。  　考えていたら、いつの間にか眠っていた。  　起きたのはロキの声のためだった。隣の部屋から「オーディン」というロキの言葉が...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-11-22T00:17:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１０</div><br>
　<br>
　トールは<b>オーディン</b>について考えていた。自分がアース神族軍に所属する原因となった、長年会っていない友のことを。<br>
<br>
　考えていたら、いつの間にか眠っていた。<br>
<br>
　起きたのはロキの声のためだった。隣の部屋から「オーディン」というロキの言葉が聞こえた。まさかこんなミッドガルドの果てにオーディンがいるはずなかろうとも思ったが、彼なら遭難したトールとロキを探しにやってくるというのもありえると思い、ランプに火を灯して部屋を出る。<br>
　ロキの部屋の戸は開いていた。<br>
「ロキ、入るぞ」<br>
　トールはその言葉のすべてを言い切ることができなかった。<br>
　目に入ってきたのはまずベッドの上の拘束されたロキの裸身。<b>それを押さえつけるフレイドマル。</b><b><big>そしてこちらに向かって飛び掛ってくるレギン。</big></b><br>
　トールは腰を落としてレギンを受け止め、勢いのままに投げ飛ばす。レギンもフレイドマルも人間族だ。いかにルーンを消耗しているとはいえ、トールが負ける相手ではない。<br>
　誤算だったのは暗闇に目が慣れておらず、レギンが突進してきた際に手に持っていた物に気付かなかったことだった。トールの右二の腕には深々と<b><font color=red>ナイフ</font></b>が突き刺さっていた。<br>
　トールは前進し、フレイドマルに左腕で殴りかかる。フレイドマルの動きは予想していたよりもずっと素早く、飛びのいてかわされたものの、ロキの傍へと辿り着くことができた。<br>
「<b>トール………？</b>」<br>
　荒い息でロキが言葉を発する。<br>
「<b>なんだおまえらは</b>」トールはロキに対する応答はせずに、フレイドマルと起き上がってきたレギンに対して言う。「猟人ではなく、強盗だったか。強姦魔か」<br>
「<b>違う</b>」フレイドマルが手を持ち上げる。手に何かを握っていることにトールは気付いた。十字弓だ。<br>
　右腕で受けようとして、右腕が動かないことに気付く。動いているのかもしれないが、動いているという感覚がない。傷はそんなに深くないはずだ。ナイフに<b><font color=red>毒</font></b>でも塗ってあったのか。<br>
　左腕で右腕に突き刺さったナイフを抜き、持ち上げる。十字弓から射出された小型の矢がナイフを弾き飛ばした。<br>
「<b><font color=red>これは<big>復讐</big>だ</font></b>」レギンが言った。<br>
　トールはナイフを手放した左腕でロキの身体を持ち上げる。彼女の身体は両腕両足ともに拘束されているようだ。後ろ手に縛り上げられた腕に手を伸ばすが、片手では荒縄の結び目は解けそうにない。<br>
「<b>人違い</b>だ」トールは視線でフレイドマルとレギンを牽制しつつ叫ぶ。フレイドマルもレギンも、手傷を負わせたとはいえまだ戦闘力の残っているトールを警戒しているようだった。「おれたちは、おまえたちの恨みを買うようなことは何もやっていない。<b>人違いだ</b>」<br>
　フレイドマルが十字弓に次の矢を装填しようとしている。防ぐ武器もないトールに次の矢を撃たれたら防ぎようがない。トールはフレイドマルに突進しようとする。しかしレギンが何処に隠してあったのか、小型の<b><font color=red>斧</font></b>を振りかざしてトールに再度飛び掛ってくる。<br>
　ロキを突き飛ばす。トールは動かない右肩に力を込め、肩で斧を受け止めようとする。レギンはフレイドマルほど体格が良くない。受け止められるはずだと踏んだ。<br>
　斧は<b>トールの右肩に突き刺さった</b>。<b><font color=red>鮮血</font></b>が弾け飛び、<b><font color=green>ルーン</font></b>が飛散する。筋肉を込める。斧は外れない。<br>
<br>
　ロキを抱えたまま、窓までにじり寄る。このまま外へ出て、逃げ切れるだろうか。逃げ切ったとしても、この雪では生きて朝を迎えるのは難しいだろう。<br>
　トールはロキを抱えたまま、指先でロキの腰を探った。<br>
　装填された十字弓の引き金にフレイドマルの力が掛かった瞬間、トールはロキをベッドの影へと放り投げる。<br>
<br>
　トールの<b><font color=green>ルーン</font></b>は確かに消耗されていたが、しかしそれでも<b>強大</b>である。集中したトールには射出される矢も、再度飛びかかろうとするレギンの姿も見えていた。<br>
<br>
　<b>ルーンとは場の状態を表す一つの関数である。</b><br>
<br>
　オーディンはルーンをそう説明した。すべからく物にはルーンがあり、それは別の形式に形を変えたりしつつも総量は変わることなく保たれている。炎の熱、雷の力、生命の活動、叩きつけられる剣、物の重み、それらはすべてルーンの賜物である。ルーンが大きければ大きいほど、力は強く、頭は冴え、心は張る。<br>
<br>
　トールはロキの腰元から抜き取っていた、鞘に入ったままの<b>魔刀レーヴァティン</b>を振りぬく。<br>
　鞘が飛び、矢とすれ違う。<br>
<br>
　矢はレーヴァティンの刀身にぶつかった。<br>
<br>
　鞘はフレイドマルの顔にぶち当たる。<br>
<br>
　トールは飛び掛ってくるレギンに向き直り、ミョルニルにそうするようにレーヴァティンに<b><font color=green>ルーン</font></b>を込めた。しかしレーヴァティンは熱を発さない。ロキの言うとおり、<b>本当にロキにしか使えないようだ</b>。<br>
　刀身で斧を受け止める。ルーン変換機としては使えなくとも、魔法の道具であるならば壊れることなく扱えるというアドバンテージがある。短い刀身で斧を受け流し、柄を振りかざしてレギンのこめかみを打った。<br>
<br>
　フレイドマルが、そしてレギンが崩れ落ちる。<br>
<br>
　二人が気絶したことを確認してから、トールは息を吐いてロキを抱き起こした。ベッドに寝せて、レーヴァティンで縄を切ろうとし、切れないことに気付いた。刀身が非常に丸まっており、切断するにも突くにも使えないのだ。とっさのこととはいえ、レギンを打ち倒すのに柄を使ったのは正解だったようだ。<br>
　ナイフで縄の拘束を断ち切り、全裸のロキにシーツを被せてやる。<br>
　ロキの目は涙で溢れていた。<br>
「トール……、<b>トール、大丈夫！？</b>」<br>
　ロキは斧が食い込んだままのトールの右腕に手を当てる。<br>
「<b><font color=red>痛い</font></b>な」トールは言う。実際痛い。しかし痛いということは生きているということで、右腕に回っている毒がそこまで根深いものではないということだろう、とトールは楽観視する。「どこかに薬か何かあるだろうから、探してきてくれないか」<br>
　ロキは何度も頷き、シーツを翻して部屋を出て行く。「<b>待ってて！</b>」<br>
　トールは溜め息をついた。アース神族軍最強の戦士が、まさかこんなミッドガルドの片田舎で、しかも人間に重傷を負わされるとは情けない。<br>
<br>
　斧を抜くと血がさらに出そうだったため、抜かないまま筋肉で血を止め、フレイドマルとレギンの武器とレーヴァティンの鞘を回収する。縛り上げるか殺すかすべきなのだろうが、そこまでする体力がない。<br>
　ベッドに座ったとき、フレイドマルが身を起こすのが見えた。トールの振りぬいたレーヴァティンから飛び出した鞘が、彼の顎を打ったのだ。立ち上がることはできないだろう。<br>
「<b>人違いだ</b>」トールは言ってやった。「おまえの息子なんて、知らない」<br>
「オッタルは……、<b><font color=green>川獺</font></b>だ」フレイドマルが掠れた声で言った。「<big><b><font color=red>おまえの殺した川獺が、オッタルだ！</font></b></big>　わたしの息子のオッタルだ！」<br>
<br>
（そういうことだったか………）<br>
　トールは溜め息をついた。動物との結びつきが強い猟人などは、動物を家族のように扱うということがままある。<br>
「おまえが自慢げにオッタルをぶら下げてきたときのわたしの気持ちがわかるか。<b><font color=red>息子を殺した男の笑顔を見たときの気持ちを</font></b>。おまえたちはオッタルを殺したことになんら罪の意識を抱いていないようだが、おまえたちは確かにわたしの息子を殺したんだ！」<br>
「<b><font color=blue><big>ふざけるなよ</big></font></b>」<br>
　トールは立ち上がり、フレイドマルに近づいた。<br>
「<b>おまえたちはロキを犯そうとした</b>」トールは言う。「おれの話を聞いたお前は、オッタルを殺したのがおれだとわかっていたはずだった。ロキは何もしていないのだと知っていたはずだった。それなのにおまえたちはロキを襲った。<b>おまえたちはロキを襲いたかっただけだ。</b>オッタルを愛していたわけじゃない。<b>ロキを襲いたかっただけだ。</b>オッタルを殺した男とロキがたまたま一緒にやってきたから、ロキを都合良く襲えただけだ。おまえたちは嘘つきだ。オッタルのことを息子なんだなんて思っていやしない。ただのペットだ。非常食だ。<b>おまえたちは嘘つきだ。</b>昔からそうだ。ミッドガルドの人間も巨人も、嘘つきばかりだ。言いたいことだけ言って、それだけの嘘つきだらけだ。<b><font color=red><big>おまえたちは嘘つきだ。</big></font></b>おまえたちはロキを襲いたかっただけだ！」<br>
　トールは斧が刺さったままの肩を引き、拳を打ち下ろした。<br>
<br>
　冬の空を切り裂き、一つの雷が小屋に落ちた。<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
<blockquote>「彼は昼間はカワウソの姿をしていた。一日じゅう川の中か、川のそばで暮らしていたんだ」とファヴニルが言いました。<br>
「そして、獲物を父親のもとに運んできた」<br>
「新鮮な魚を供給したんだ」<br>
「おれたちの兄弟だったんだぞ」<br>
「われわれはそのことを知らなかった。もし知っていたら、ロキも決して殺しはしなかったろうに」とオーディンが言いました。<br>
「死んだものは死んだのだ」とフレイドマルが言いました。</blockquote><br>
<div align=right><small>（二十六　オッタルの賠償金　より）</div><br>
<br>
<u><b>●殺人</b></u><br>
　人を殺してはいけない。<br>
　ある程度の文明社会の大部分の人間は、この意見に賛同を示すであろう。<br>
　ではなぜしてはいけないのだろうか？<br>
　理由としてまず思いつくのに「法律でそのように定められているから」というのがある。しかしながら法律を定めるというのは人間の行う行為である。根本的な原因になりえない。法律を変えてしまえば殺しても良いことになるだろう。<br>
「人が死ぬと悲しいから」というのはどうだろう。一瞬納得できるような気もするが、それなら「殺してはいけない」というのはなんだか違うような気もする。殺したくない、ではなかろうか。そもそも誰かが悲しもうが関係がない。殺そうが殺さまいが勝手だろうが、と言われれば反論もできない。だいたい、世界中のどこかしらで人が死んでいるというのに、あなたは毎回それを知ると悲しむのか、となる。<br>
「お前も殺されたくないだろう。殺すことを許容すれば、殺されることも許容しなければならなくなる。殺さないようにすれば殺されることを防げる。だから殺すことを禁じているのだ」という論はいかがだろうか。「殺されることは誰でも厭だ」という前提条件を用いた論であり、一瞬納得できるようではある。しかしながら、「殺すことを許容すれば殺されることも許容しなければならない」というのはおかしい。誰にとっても個人は特別な存在であり、その特別な存在のみに殺人の権利が許容されていると考えれば良いではないか、となる。<br>
　結局のところ、人が人を殺してはいけないという意見に対する論理的な理由付けなど不可能なのだ。それはモラルによってのみ守られている。</small><br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10878803.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10902685.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10878803.html">
    <title>
			year/3/09
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10878803.html</link>
    <description>９ 　 　白い雪がミッドガルドの大地を覆っている。  　ロキはフレイドマルの小屋の自分に割り当てられた部屋のベッドで、窓越しに外の風景を眺めていた。雪を見るためにと部屋の電灯は消してある。フレイドマルの小屋には十分な数の部屋があり、突然者の訪問...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-11-22T00:13:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>９</div><br>
　<br>
　白い雪がミッドガルドの大地を覆っている。<br>
<br>
　ロキはフレイドマルの小屋の自分に割り当てられた部屋のベッドで、窓越しに外の風景を眺めていた。雪を見るためにと部屋の電灯は消してある。フレイドマルの小屋には十分な数の部屋があり、突然者の訪問者であるロキとトールにもそれぞれ個室を宛がってくれた。布団がやや黴臭いのは長年使っていなかったためか、それでもありがたい。<br>
　体温はもとに戻ったとはいえ、身体の疲弊は取れてはいない。明日はきっとものすごい筋肉痛に悩まされるだろうと思うと溜め息が出てくる。雪道の中、これから越えなくてはならない長い旅路のことも考えると。<br>
<br>
　<b>雪といえば</b>、とロキは部屋に入る前のフレイドマルと彼の息子の一人、レギンとの会話を思い出す。レギンという男は夜が更ける前に帰ってきたのだが、オッタルはとっぷり暗くなっても帰ってこなかった。<br>
「大丈夫なんでしょうか……」<br>
　ロキが言うと、フレイドマルは微笑を作ってこう答えた。「今日は帰ってこないかもしれませんね」<br>
「どこか他に泊まるところが？」<br>
「いえ、そうではありませんが……、<b>オッタルはこの程度の雪はものともしませんよ</b>」<br>
<br>
　あのときフレイドマルはそんなふうに言っていたが、外の風景を見るとそこまで楽観視できるようには見えない。熱ルーンに変換可能なアース神族でも、この雪は堪えるだろう。オッタルという人物は本当に無事なのだろうか。もしオッタルなる人物がどこかで遭難しているとして、フレイドマルらが捜索しに行く気なら、ロキも手伝ってやるのが一宿一飯の義理というものだろうが、それは叶わない。ロキのルーンはまだ快復しきっていない。こんな状態で外に出ようものなら、逆にロキのほうが遭難してしまう。<br>
　<b>それはトールも同じだろうな</b>、と隣の部屋にいるトールのことを思う。隣からは大鼾が聞こえていた。彼はかなり元気そうに振舞っていたが、ルーンを消耗しなかったわけがあるまい。いかにアース神族軍最強の男とて、冬の海で溺れた後にヨルムンガンドと戦い、その後にロキを背負って何リーグも歩いたのだから。<br>
<br>
　窓に映った自分の姿を見て、ふと笑顔になっている自分に気付く。これは自意識過剰な考え方かもしれないが、ロキが不安を抱かぬようにトールは元気に振舞ってくれたのだと思うと、自然と笑顔が零れてしまうのだ。<br>
　今日はもうすることもない。さっさと寝てしまうが体力的にも吉だろう。<br>
　この鼾を聞きながら眠れるだろうか、と思いつつロキは少し湿気った布団に入った。<br>
<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
　物音。<br>
　自分の部屋のドアのノブはこんな音がしただろうか、とまず考える。<br>
　次に誰だろうかと考える。<br>
<br>
　オーディン？<br>
<br>
<big><b>「オーディン？」</b></big><br>
<br>
　違う。<br>
<br>
　そんなはずがない。<br>
<br>
　オーディンはここにはいない。<br>
<br>
　オーディン、オーディン、どこへいってしまった？<br>
　あなたの子供を置いて、どこへいってしまった？<br>
<br>
　あなたの子供の狼はアースガルドで縛られている。初めてひとを傷つけ、傷つけられた。おぞましいひとの手首を口の中で味わいながら、心臓を締め付けられる痛みに叫んでいる。<br>
<br>
　あなたの子供の未死者はニヴルヘイムで腐っている。信じていた父親に裏切られ、地の底まで落とされた。温かみを感じない肌を引きずりながら、自らの身体を腐らせ続けている。<br>
<br>
　あなたの子供の大蛇はミッドガルドで生きている。産まれた直後に海の中へ投げ込まれた。喜びも悲しみも知ることもなく、ただその日その日を生きる暮らしをし、母親を見ても何も感じることもなく生きている。<br>
<br>
　あなたはそれなのに、何も感じないというの？<br>
　優しい心を失くしてしまったの？　<br>
<br>
　まぐわっていたときを思い出し、自然とロキの吐息は熱くなる。一人でアースガルドの自室にいるときと同じように。ロキは身体をくの字に折り、涎を枕に垂らし、それからようやくここがミッドガルドのフレイドマルの小屋のベッドであることを思い出した。<br>
　部屋のに入ってきた人物の姿は、目覚めたばかりのロキの目にはただ影のようにしか見えなかった。<br>
　その人物はロキに覆いかぶさってきた。<br>
　ロキは悲鳴を挙げられなかった。相手はロキの口を片手で塞ぎ、もう片方の手で両腕を纏める。物凄い力で両腕が拘束される。圧し掛かられているせいで足も動かせない。<br>
　相手の両腕がロキの腕と口を塞ぐのに使われているというのに、なぜか足と腕にさらなる感触を感じる。紐のようなものが巻きつけられている。ロキは気付く。相手は二人なのだと。<br>
　そう考えている間にも拘束が終わる。相手の腕がロキの腕や足から離れる。それでもロキは動けない。<br>
　布団が落とされる。服が剥ぎ取られる。それでもロキは動けない。<br>
　二人の相手の口から漏れる臭気が頬にかかる。涎なのか涙なのかわからない粘性のある液体が胸に落ちた。生暖かい水が肌を伝わる感触にロキは震える思いがした。それでもロキは動けない。<br>
　口から手がどけられる。呼吸をしようと口をあけた瞬間に口内に生暖かく濡れたものが入ってくる。ロキの舌に絡み付いてくる。腿と腿の間に熱い吐息がかかる。<b>それでもロキは動けない。</b><br>
　僅かに入ってくる雪光に慣れる目。<br>
　ロキは見る。二人の男は小屋の主、<b>フレイドマルとレギンだった。</b><br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10873745.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10878808.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10873745.html">
    <title>
			year/3/08
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10873745.html</link>
    <description>８  　火。 　燃え盛る火。  　ラグナレク。力の滅亡のときに火はその勢いを増す。 　アースガルド、ミッドガルド、そしてニヴルヘイム。世界はその三層で構成されているが、その三層のどこにも属さない国が存在している。何処にでも存在しうるが、どこにもな...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-11-14T22:46:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>８</div><br>
<br>
　<b><font color=red>火。<br>
　燃え盛る火。</font></b><br>
<br>
　<b><font color=red>ラグナレク</font></b>。力の滅亡のときに火はその勢いを増す。<br>
　<b>アースガルド、ミッドガルド、そしてニヴルヘイム</b>。世界はその三層で構成されているが、その三層のどこにも属さない国が存在している。何処にでも存在しうるが、どこにもない国。<big><b><font color=red>ムスペルヘイム</font></b></big>。<br>
　そこには<b><font color=red>炎の巨人スルト</font></b>がいる。<b><font color=red>魔刀レーヴァティン</font></b>を持つ炎の巨人。巨人族とは似てはいるが、その性質は似ても似つかぬ炎の巨人たち。<b><font color=red>光り輝くものたち</font></b>。彼らはラグナレクを待っている。世界を燃やし尽くす火を。<b>世界を浄化する日を</b>。<br>
　ロキは<b><font color=blue>自分の魔刀レーヴァティン</font></b>を膝の上で抜いた。剣とはいっても、それは短刀サイズしかない。鞘と握りの装飾は豪華絢爛、しかし刀身は<b>黒一色</b>という変わった剣。魔刀という銘を冠してはいるものの、チュールの魔剣ティルヴィングのような特別な魔法がかかっているわけではない。単に<b>注いだルーンを変化して熱ルーンにする</b>だけの道具だ。<br>
　ロキは炎の魔人スルトが持つものと同じ機能を持つというレーヴァティンを握る。ルーンを注ぐと黒い刀身が輝き、感じられるだけの熱を放つ。<br>
<br>
「なんだ、それ」<br>
<br>
　声にはっと振り返ると、トールが後ろから覗き込んでいた。<br>
「<b>吃驚した………</b>」ロキは息をつく。「なんだって？」<br>
「泊めてくれるってさ。やっぱり川獺が効いたな。あんなでかいんだから、良い贈り物にはなった。目の色変えてたよ」<br>
　ロキとトールは、森の中で発見した猟人の小屋の中にいた。トールが川獺を捕らえた直後に小屋をこの猟人の家を発見したのだ。川獺を手土産に泊めてもらうように頼んでみようとトールが提案し、ロキもそれに賛同した。とにかく寒かった。ミッドガルドに住む人種といえば巨人族か人間族であるが、そこは問題にならない。トールもロキもアースガルドのものではあるが、髪の色や体格ではアース神族か巨人族かわからない容姿である（ロキは元は巨人族であるのでもちろんのことだった）。もし猟人が巨人族で、トールやロキに気付いたとしても殺してしまえば良い、というのがトールの提案ではあったが、しかしそうはせずに済んだ。小屋から出てきた髭面の中年の男は、寒さに震えるロキとトールを快く迎えてくれた。<br>
　ロキは特に消耗しているということで居間の暖炉の前で休み、トールは川獺を担いで小屋の主だという<b>フレイドマル</b>という男と交渉をしていたのだ。<br>
<br>
「川獺って、どうやって食べるの？」とロキはレーヴァティンを鞘に仕舞いつつ言った。「味が濃そう」<br>
「<b>狼よりゃましだろう</b>」トールは急くロキの様子に何かを感じ取ったのか、レーヴァティンを指差す。「で、なんなんだ、それ。お前も武器なんか持ってたのか」<br>
　ロキはゆっくりとレーヴァティンの刀身を引き抜く。<br>
　トールに見られて急いで仕舞おうとしたのは、レーヴァティンが見られて不味いものだからではない。ただなんとなく、自分の裸身を見られているようで恥ずかしかったのかもしれない。<br>
「<b>ミョルニルと同じもの</b>、だよ」ロキはルーンを込めてみせる。レーヴァティンが<b><font color=red>熱</font></b>を生み出す。「レーヴァティンっていうんだ」<br>
「暖かいな……。ミョルニルと同じ？」トールはレーヴァティンに手を翳す。「魔法のなんとかか」<br>
「うん。なんとか」ロキはレーヴァティンを今度こそ仕舞う。<br>
「あれ、お前これ……、さっき使ってれば良かったんじゃないか？　暖かくできるんだよな？」トールは顔を顰めた。「おいおい、わざわざあんな寒い思いをしなくても……」<br>
「使えなかったんだよ。これ、結構ルーン消耗するんだよ？」ロキは唇を尖らせる。「使えば使うだけ、ルーンは消耗するよ。ルーンは無限じゃないんだし、ゼロから産まれることもないんだからね。今は多少体力が快復したから暖められるけど、あのときは無理だったの」<br>
「俺が使ってれば良かったじゃないか。まだまだルーンも余裕だったぞ」<br>
「これはね」ロキはレヴァンティンの収まった腰元を叩く。「<b><font color=red>わたしにしか使えないの</font></b>。そういうふうに出来ているんだ」<br>
　トールは納得できないようだったが、実際そうなのだ。レヴァンティンはロキのルーンにしか反応を返さない。<br>
　否、もしかすると他にも使えるものはいるのかもしれない。たとえば同じレーヴァティンという名の剣を持つという<b><font color=red>スルト</font></b>などは、多少形式が変わっても同じ種類の剣なのだから扱えるかもしれない。しかしロキの知る限り、自分以外にレーヴァティンの魔力を引き出せたものはいない。この剣にかかっている魔法のせいだろう。<br>
「あ、それでここってどの辺だって？」ロキは話題を変えた。<br>
「田舎だな。<b>ミッドガルドの東南端</b>。ヨツンヘイムのさらに向こうだ」<br>
<br>
　ロキは頭の中に世界の三層を思い描く。世界は三つの層から成っている。アース神族やヴァン神族が住む<b><big>アースガルド</big></b>、巨大な海をもち人間族や巨人族を内包する<big><b>ミッドガルド</b></big>、そして死の大地<big><b>ニヴルヘイム</b></big>。それらは<big><b><font color=green>世界樹ユグドラシル</font></b></big>によって、散らばることなく一つの世界として纏まっている。<br>
　アースガルドとミッドガルドは西端にある<big><b>虹の架け橋ビフレスト</b></big>によって連結されている。アース神族軍が今回ミッドガルドに侵攻する際に用いたルートもここだ。というより、ここしか世界を繋ぐルートは存在しない。ちなみにミッドガルドとニヴルヘイムを繋ぐ道は存在しない。一応ユグドラシルによって連結しているため、ユグドラシルの幹や根を伝えば世界を自由に移動できないでもないが、ひとの技では不可能だろう。<br>
　ロキたちのいる場所はビフレストの反対側ということだ。あまりにも遠い。ここからビフレストまで何リーグあるだろう。<br>
　しかもここがミッドガルド東南端ということは、西まで辿り着くのに巨人族の国の首都ウドガルドか、黒妖精の国スヴァルトアールヴヘイムを通らなくてはならないだろう。どちらにしろ、危険が伴う。<br>
　巨人族の国ヨツンヘイムは広大だ。ロキがトールを連れて飛び越せる広さではない。地上を馬に乗って行くのが適当だろうが、巨人族に見つからずにアース神族軍の元まで辿り着けるだろうか。<br>
<br>
　ロキは溜め息をついた。考えていても仕方がない。とりあえず今日は身体を休めるべきだろう。幸いにも小屋は大きく、主人である<b>フレイドマル</b>は好人物のようでロキとトールの宿泊を快く受け入れてくれたのだから。<br>
　台所であろうスペースからフレイドマルがトレーを持ってやってくる。見た感じはいかにも猟人といった感じの姿であり、高齢に達そうとしているであろう年齢に見えるが体格は良い。髪は黒く、肌は浅黒い。巨人族ではなく、人間族なのだろう。<br>
「<b>どうですか、お身体の具合は</b>」フレイドマルは笑顔で言った。<br>
「あ、はい、おかげさまで……」ロキは急いで頷いた。「すみません、本当にありがとうございます。お邪魔して申し訳ありません」<br>
「いえいえ、そんなことありませんよ」フレイドマルは盆に乗せていたカップやポットを木製の丸テーブルの上に置き、お茶の支度を始めた。「あんなに立派な獲物も捕ってきてくださいましたし……、冬の間は仕事もありません。それに妻も先立たれて娘も嫁に行き、今は華がない生活ですからね。若いお嬢さんなら大歓迎ですよ」<br>
　ロキはどう答えるべきかわからず、曖昧に微笑む。「えっと、今はお一人でこちらに？」<br>
「いえ、あと二人息子がいまして……、<b>レギン</b>と<b>オッタル</b>といいます。レギンは商人のところまで買い物に、オッタルは狩りに出ています」<br>
「この寒い中？」とトール。<br>
「オッタルは冬の狩りが得意でね。わたしは足が不自由なのですが……、二人の息子のおかげで冬も越せます」フレイドマルはカップを暖炉の前のロキとトールに渡す。「薬茶です。身体が温まりますよ」<br>
　ロキはカップを両手で受け取り、口をつけた。<b><font color=red>身体の中から温まってくる</font></b>。<b><font color=green>ルーンが回る</font></b>。<br>
<br>
　こんなときにロキは考える。<br>
<br>
　アースガルドでルーンと血を撒き散らしながら悶えている<b><font color=red>狼</font></b>のことを。<br>
　ニヴルヘイムで温まる血も循環するルーンもないまま腐りつつある<b><font color=blue>娘</font></b>のことを。<br>
　ミッドガルドで何も考えず、ただひたすら獣として生きている、自分の母親もそれとわかっていない<b><font color=green>蛇</font></b>のことを。<br>
　<b>自分の子供たち</b>のことを。<br>
<br>
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  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10869663.html">
    <title>
			year/3/07
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10869663.html</link>
    <description>７  　眠いな、と思いながらロキは目を覚ます。 　身体が上下に揺れているのはわかるのだが、自分がいったいどういう状態にあるのかはよくわからない。目の前にあるのはひとの背中。胸と背中がとても温かい。  「トール………」 　ロキはトールに背負われてい...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-11-07T13:36:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>７</div><br>
<br>
　眠いな、と思いながらロキは目を覚ます。<br>
　身体が上下に揺れているのはわかるのだが、自分がいったいどういう状態にあるのかはよくわからない。目の前にあるのはひとの背中。胸と背中がとても温かい。<br>
<br>
「トール………」<br>
　ロキはトールに背負われていた。<br>
「起きたか」トールは足を止めず、振り向かずに答える。「<b>大丈夫か？</b>」<br>
「え……？」<br>
　ロキは身体を動かそうとして、酷くそれが億劫なのに気付く。手足の感覚がほとんどなく、どうい状態なのかいまいち動かない。一応手足はついてはいるようだが。<br>
　身体の状態を確かめているときに、自分がほとんど服を着ていないことに気付いた。辛うじて身に着けている下着は生暖かく濡れている。無意識的に動かしていたのか、羽が身体を包み込んでいるため、冬の大気の中でも寒くはなかったが、下着姿で背負われているというのはだいぶ恥ずかしい。<br>
<br>
　<b>そう、<b><font color=blue>冬</font></b>だ。</b><br>
<br>
　ロキはここが季節のあるミッドガルドであるということを思い出した。そして何が起きたのかということを完全に思い出す。<br>
「びしょ濡れだったからな……、脱がしちまったぞ」背中越しにトールが言う。「暖めるにしても、濡れてるとなかなか温まらないしな」<br>
　胸や腹が温かいのは、トールがルーンで暖めてくれたせいらしい。手足の感覚がないのは、冬の海の中に落ちたためだ。身体が凍っているのだ。見た目では血の気がないこと以上の異常はない。感覚も完全にないわけではないため、時間が経てば回復するだろう。<br>
「あの……、トール、もう大丈夫だよ？」ロキはこのまま背負われたままでいるのが恥ずかしかったため、トールにそう囁く。<br>
「なにが？」<br>
「歩けるから」<br>
「無理だろ。いいから背負われてろ」<br>
　恥ずかしかったが、彼の言うとおり歩くのは無理そうだったのでロキはおとなしくしておくことにした。<br>
「ありがとう」<br>
　囁いたが、トールには聞こえなかったかもしれない。<br>
　眠いのは水に濡れて体温が奪われた状態で長時間飛行したためだろう。とにかくルーンが足りていない。とはいえ、眠ってしまうのも背負ってくれているトールに悪い気がした。<br>
　太陽の位置から時刻は正午と夕方の中間くらいだろう。ありがたいことに一日で一番暖かい時間帯だ。場所はミッドガルドの沿岸部から少し離れたところ、それくらいしかわからない。ロキはミッドガルドで生活をしていた時期もあったのでトールよりは詳しいはずだが、それでもミッドガルドは広い。まったく知らない場所というのも多い。<br>
「トール、ここ、どこだかわかる？」<br>
「いや……、<b>さっぱりだな</b>」とトール。「とりあえず西に向かって歩いてはいる」<br>
　ビフレストやスリュムヘイムの方向を目指しているようだ。アース神族軍のところへ戻るには正しいルートではある。<br>
　しかしロキたちはドラウプニルの魔法によってミッドガルドの海まで突き落とされたのだ。あれを利用すれば元の場所に戻れるはず。だがそのドラウプニルはトールがヨルムンガンドを殴ったときの衝撃でか、ヨルムンガンドの口の中に入ってしまった。<br>
「なんでこんなことになったんだろうな」<br>
　トールが呟くように言った。単なるぼやきか、それともロキが灯台から海への転送現象に知っていると思ってか。<br>
<br>
　ロキは少し迷ったが、<b><font color=green>ドラウプニル</font></b>の魔力について説明した。九つのリングが連結したドラウプニルは同じ形状のものが二つ存在し、その中を潜ったものをもう一つのリングのある場所に転送する効力があること。一つ目のドラウプニルが何者かによって灯台に仕掛けられ、二つ目のドラウプニルが漂っていた海に転送されたのだということ。そして二つ目のドラウプニルが<b>ヨルムンガンドの口の中に入ってしまったこと。</b><br>
<br>
「あぁ……」トールが曖昧に頷く。「そういえば殴ったときに何か飛んでいったような気がしたが……、あれがドラウプニルか」<br>
「たぶん転送された直後にトールの身体にくっついたんだと思う」<br>
「そりゃ悪いことしたなぁ。あれがあればすぐに帰れたのか」<br>
　なぜそんなことを知っているのか、ということをトールは訊かなかった。彼はただ謝り、これからのことについて話す。<br>
「ドラウプニルっていうのは、<b>ミョルニル</b>とか<b>グングニル</b>と同じものだろう？」<br>
「うん」ロキは頷いてみせる。「魔法のかかっている道具だね。前は片方だけオーディンが持ってたんだけど………」<br>
「いつの間にか誰かに盗まれてたってことか？　で、俺たちを殺すためにミョルニルを餌に灯台に罠っぽく仕掛けて、海に突き落とした、と」<br>
「うーん……、トールを殺すためだったらさ、単に灯台の中まで誘き出した時点でどうとでもできたんじゃないかな。たとえば灯台を爆破しちゃうとか」<br>
「建物が爆破されたくらいじゃ俺は死なんぞ」とトール。実際、彼なら爆発に巻き込まれても平然と出てきそうな気もする。「それにそんなことができるほど強いルーンのやつはいないんじゃないか、巨人族には、もう」<br>
「確かにね。うーん……、トールは今回のこと、<b>巨人族の仕掛けた罠</b>だって思ってる」<br>
「そりゃそうじゃないのか？」当たり前のように言うトール。「他にいないだろう、こんなことするやつ。ミョルニルを盗んだのも巨人族の仕業だろう。で、おれたちをおびき寄せたってわけだ。海に突き落として溺死させられればそれで良し。失敗しても凍死するか、あの蛇に喰われて死ぬだろう、ってな」<br>
「どうもそれにしては不確実すぎる気がするんだよね……。実際、わたしたちはまだ生きているし」<br>
　ロキは睫毛の上に何かが落ちたのを感じた。小さく首を振るとそれは溶けるように崩れ去る。見上げると、灰色の塊がゆっくりと落下していた。<br>
「あ……、<b><font color=blue>雪だ</font></b>」ロキは呟く。「トール、雪が降ってきたよ」<br>
「結構危ないような気がするけどな」とトール。「<b>生きて帰れるかどうか</b>」<br>
　<br>
　雪の粒はなかなかに大きかった。それだけ空気中の水分や氷晶核が多く、地表面の気温が低いということなのだろう。事実、いっそう冷え込んできたようである。歩くトールの吐息も真っ白に染まっている。<br>
「どこか屋根のあるところで休まないと危ない気がするな」肩や頭にいくらかの雪を積もらせたトールが言う。<br>
「うん………」<br>
　ロキは眠かった。トールが背負ってくれているのだから、体力を消耗しないようにするために眠ることは生存行動としては悪くないことだ。だがトールはそうはいかないだろう。早く休める環境を見つけなければ。<br>
　しかしここは薄い森の中にある一本道だ。木々はすべて落葉樹なのか、枯れてしまっていて雪を避ける役には立たない。雪や風を避けられるような洞窟もない。人里離れた地域なのか、家や小屋もまったくない。このままではトールの言うとおりに危ない。<br>
「腹減ったな………」とトール。<br>
「<b><small>うん………</small></b>」ロキは辛うじてそう答えた。<br>
「ロキ、大丈夫か？」<br>
「なんとか」<br>
「もう少しだから、頑張れよ」<br>
　そのときトールが何かに気付いたのか、急にしゃがみこむ。<br>
「え？　なに、どうしたの？」ロキは驚いて言う。トールが何か害獣の存在に気付いたのかと思って前を見ようとするが、トールの大きな背中に隠れてしまって前がよく見えない。「大丈夫？」<br>
「<b><small>ちょっと静かにしてろ</small></b>」<br>
　トールがロキを支えている手の片方を外し、肩を大きく動かす。ロキは振り落とされないようにしっかりとしがみつく。トールは何かを投擲したようだ。<br>
「おぉ、よし」満足そうに頷くトール。<br>
「え？　なに？」何が起きたのかよくわからないロキ。<br>
　トールは投擲した方向へと歩み寄り、しゃがみこんで何かを掴んだ。<br>
「<b><font color=green>食料が獲れたぞ</font></b>」<br>
　トールが掴み上げたのは、垂直に立ち上がればロキの胸元まで体長がありそうな、巨大な<b><font color=green>川獺</font></b>だった。<br>
<br>
<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
<small><u><b>●冬眠</b></u><br>
　睡眠というのは哺乳類には必要不可欠な行動である。現存する生物の中で、昆虫や魚類、両生類などは睡眠を必要としないが、哺乳類は睡眠を必要とし、欠くと代謝や免疫機能に悪影響を及ぼす。哺乳類がこの惑星で頂点に立っているものであると主張するつもりはないが、ある程度の複雑な系を抱えた生物は幾分面倒な動作を必要とするようになったとはいえる。<br>
　睡眠は生存活動において疲弊した脳活動の快復や修繕、あるいは記憶の整理のために行われるといわれれているが、それについて具体的な証左はない。<br>
　睡眠と似ており、また異なっている行動に、冬眠というものが存在する。冬眠には代謝活動を大きく下げて体温を気温と同程度まで落として行うもの（栗鼠など）と、ある程度の代謝を保ったまま行うもの（熊など）があるが、どちらの冬眠もその名の通り、冬場に行われる。<br>
　なぜ冬場に冬眠を行うのか？　それは通常の睡眠よりも答えやすい疑問である。冬が生物にとってそれだけ過酷な環境であり、活動状態で獲物を探し回るよりは代謝活動を抑えて眠っていたほうが生存率が高い（そもそも植物を主な餌とする生物にとって、冬はいくら探し回っても餌を見つけることができず、絶食せざるを得ない環境である）。<br>
　哺乳類はその三つの分類、有胎盤類、有袋類、単孔類いずれでも冬眠を行う種がいるが、人でも冬眠に似たような行動を行うことがある。たとえば気候の厳しいロシアの一部地域では冬の間は暖炉の周りで一日のほとんどを眠ってすごし、秋に作っておいた保存用のパンと水をわずかに食べるだけで過ごしていた人もいたという。<br>
　冬はそれだけ厳しく、痛い。<br>
　冬、雪、フィムブルヴェト。<br>
　それはもうすぐアースガルドにも訪れる。<br>
　しかしアース神族たちは睡眠を貪るわけにはいかない。フィムブルヴェトは合図なのだから。もうすぐラグナレクがやってくるということの。</small><br>
<br>
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  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10862450.html">
    <title>
			year/3/06
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10862450.html</link>
    <description>６  　黄金郷ドラウプニル。 　一見腕輪を連結した、どのように身に着けるのかわからないような装飾品について、ロキはかかっている魔法がどのように作用しているのかは知らなかったが、どのような魔法がかかっているのかは知っていた。 　ドラウプニルは九つ...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-10-25T16:22:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>６</div><br>
<br>
　<u><b>黄金郷ドラウプニル</b></u>。<br>
　一見腕輪を連結した、どのように身に着けるのかわからないような装飾品について、ロキはかかっている<b><font color=green>魔法</font></b>がどのように作用しているのかは知らなかったが、どのような魔法がかかっているのかは知っていた。<br>
　ドラウプニルは九つの腕輪の中央を通った対象を、別の場所にある九つの腕輪のある場所へと転送する魔法がかかっているのだ。<br>
<br>
　ここは灯台の中ではない。<br>
<br>
　海がある。<br>
　ミッドガルドだ。　<br>
　もう冬に近い海は冷たい。服を着たまま海に落ちたため身体が重かったが、羽を最大限に広げて浮力をつけ、なんとか海面まで浮き上がる。<br>
　海上はものすごい豪雨だった。雷鳴が鳴り響き、ときたま明るく光る。周囲に陸地のようなものは一切見えなかった。<br>
　トールの姿がない。ドラウプニルに触れたのはトールだ。ロキは彼と一緒にいたせいでここまで転送されたのだから、トールも一緒に来ていないわけがない。まさか海に落ちた衝撃で気を失ってしまったのか。<br>
　深呼吸をしてから、羽を縮めて海の中へと身体を埋める。<br>
　海の中は暗い。しかしときたま稲光が深くまで海中を照らす。ロキはゆっくりと下降していくトールの身体を見つけた。目を瞑ったまま、頭を下にして落ちている。やはり気を失っているのだ。<br>
　海中の水を羽で掻き分け、ロキはトールのところまで辿り着く。トールは息をしていないように見えた。<br>
　ロキは唇をトールの口に当てて、息を吹き込む。効果があるのかはわからないが、しないよりもましだろう。羽を丸く広げて抵抗を小さくしたまま海面まで上がった。<br>
「<big><b>トール！</b></big>」<br>
　叫んでも、トールの意識は戻らない。呼吸もやはり止まっている。心臓の鼓動まで確かめている余裕がない。海面で浮いたまま、もう一度人工呼吸を試みる。<br>
　<b><font color=blue>寒い</font></b>。体温がどんどんと下がっていく。このままでは不味い。<br>
　ドラウプニルを探して灯台まで戻らなくては。否、先に陸地を探し、嵐を乗り越えるのが先だろうか。頭が混乱してうまく働かない。<br>
　まだトールの呼吸が戻ったことは確かめられていなかったが、ロキは羽を広げて飛ぶことに決めた。海中を漂っていたのでは体温が下がり続けるだけだ。<br>
　しかし空中のほうが寒かった。吹き付ける風と雨粒が体温を奪っていく。だが海中に戻るわけにもいかない。海中では移動のスピードが遅すぎるのだ。寒くても、飛んでいける空中のほうがましだ。飛ぶだけならば羽は必要ない。ロキは羽を自分とトールの身体に巻きつけ、ルーンの力だけで飛ぶ。<br>
<br>
　太陽も月もないため、どちらに飛んでいるのかさえわからない。しかしどちらかに進まなければ埒が明かないのだ。ロキは飛び続けた。何度も意識が消えかけたが、飛び続けた。短い時間が長く感じられた。何よりも長く。<br>
　いったいどうしてこんなことになってしまったのだろう、という言葉が何度も頭の中に浮上する。こんなこと、というのは単純な今の状況だけではない。もちろん今の寒い中、重いトールを引きずったまま飛ぶというのは苦行であるが、そんなことをしなくてはならなくなったのは何故なのか。戦争も何もかもがなくなれば、こんなことをする根本的な理由は取り去られていたのではないか、ということを。<br>
　目の端に何かが見える。陸地だ、とロキは判断する。うっすら影のように見えているだけなので、本当に陸地なのかどうかはわからないが、きっと陸地だ。そう思わなくては、もう気力が持ちそうにない。<br>
　飛び続けてわかる。陸地だと思っていた影は、本当に陸地だった。見間違いではなかった。町はあるだろうか？　雨を防げる場所は？　なくても良い。とにかく疲れた。もう休みたい。<br>
<br>
　下方から低く、しかし甲高い鳴き声が聞こえる。<br>
　一瞬トールが立てているのかと思ったが、そうではない。彼はまだ目を覚ましていない。周波数の差が激しいその音は、はるか後方から聞こえてくるようだった。<br>
　近づいてくる音の正体は<big><b><font color=green>巨大な蛇</font></b></big>だった。<br>
<b><font color=green><big>　世界蛇ミズガルズオルム。<br>
　ヨルムンガンド。</big></font></b><br>
<br>
　一目散にヨルムンガンドはロキのほうへと向かってくる。一体どのようにしてあの蛇は海面をあんな速度で走れるのだろう、と不思議に思ったくらいだった。<br>
　高度を上げて逃げるほどの体力はない。ロキはまっすぐ進むだけで精一杯だ。ヨルムンガンドに追いつかれる前に陸地に辿り着いて隠れなくては。<br>
　必死で飛びつつ、しかし胸中はただ飛んでいるときよりも平穏としていた。<br>
　ヨルムンガンドも、やはりロキのことを恨んでいるのだろうか。<b>母</b>であり、ヨルムンガンドがミッドガルドの海に落とされる原因となったロキのことを。だからこうして追ってくるのだろうか、と。<br>
　もしヨルムンガンドに追いつかれてあの巨大な口に噛み砕かれたのならば、ヨルムンガンドは満足するだろうか？　ロキの罪を許してくれるだろうか？　少なくとも、今の寒さは解消されるだろう。辛さも何もかも終わって、平穏が訪れるだろう。<br>
　砂浜はもうすぐそこだった。しかしロキが陸地に降り立つよりも、ヨルムンガンドがロキとトールを捕食するほうが早いだろう。逃げ切れない。もし砂浜に先に降りられたとしても、ヨルムンガンドは陸地の上まで追ってくるに違いない。もうどうしようもない。そう思うと力が抜けた。<br>
　ヨルムンガンドは身体をくねらせ、ロキに向かって首を擡げた。開いた口に、一切歯はない。噛み砕かれることはないだろう。丸呑みか。<br>
　腕に重みを感じる。<br>
<br>
<b><font color=red><big>「この糞蛇がぁっ！」</big></font></b><br>
<br>
　腕が思いっきり引っ張られる。トールが叫んでいた。ヨルムンガンドの口先がロキにかかる寸前、トールが自由なほうの手でヨルムンガンドの上顎を<b><font color=red>ぶん殴っていた</font></b>。<br>
　トールのルーンが開放され、雷がヨルムンガンドの頭に落ちる。<br>
　甲高い声とともにヨルムンガンドは身体を反らせる。そうしてそのまま海の中へと沈んでいった。<br>
　もう飛び続ける気力がない。<br>
　ルーンが切れ、砂浜へと落ちる。叩きつけられるかと思った寸前、トールの手で抱きとめられる。彼は自力で着地し、ロキを受け止めていた。<br>
「<big><b>ロキ、大丈夫か、ロキ！？</b></big>」<br>
　トールが叫んでいるのは聞こえたが、ロキの意識は舫のない船のようにゆらゆらと揺らめいていた。<br>
<br>
　意識を失う寸前に思い出していたのは、トールがヨルムンガンドを殴ったときの場面だった。正確には、殴られた直後のヨルムンガンドの口内。<br>
　ヨルムンガンドの口内には金色の腕輪が九つ、輝いていた。<br>
<br>
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  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10862446.html">
    <title>
			year/3/05
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10862446.html</link>
    <description>５  　待ち合わせの場所であるシアチの館に戻ると、珍しくトールが先に到着していてロキを待っていた。 　収拾した情報を交換する。といっても、ロキが話を聞けたのはフレイとイドゥンからだけだったのだが。イドゥンはヘイムダルがしばしば気にかけているとい...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-10-25T16:17:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>５</div><br>
<br>
　待ち合わせの場所であるシアチの館に戻ると、珍しくトールが先に到着していてロキを待っていた。<br>
　収拾した情報を交換する。といっても、ロキが話を聞けたのはフレイとイドゥンからだけだったのだが。イドゥンはヘイムダルがしばしば気にかけているということもあり、彼の居場所を知っているかもしれないと思ったが、やはり彼女もヘイムダルを一月前のスリュムヘイム戦以来見ていない、ということだった。<br>
　トールのほうもヘイムダルの居場所は突き止められないらしかった。彼の側の情報ソースは多面に渡っていたが、たいした情報はなかった。ミョルニルに関しても同様。<br>
<br>
　空が翳ってきたので、ロキとトールは屋根つきのテラスに避難する。<br>
「<b>どこ行っちゃったんだろう………</b>」ロキは溜め息をつく。「ヘイムダルも、ミョルニルも」<br>
「うーむ、不味いな」とトール。「<b>このままじゃバルドルに怒られる</b>」<br>
「<b><font color=green>雷が落ちる</font></b>ね。だいたい、そういう問題じゃないと思うけど。ミョルニルなんてアース神族にとっては普通の貴重品じゃない。軍神の武器だよ。敵対する誰かが盗んだ可能性が高いんだからさ、怒られるとかそういう問題じゃなくてさ………」<br>
「うーん………」唸るトール。<br>
　空は急速に暗くなる。乾燥した秋空、上昇気流が十分に発達して積乱雲が形成されれば簡単に氷晶が発達し、ぶつかり合って電気的な極を生じる。すぐに放電現象、すなわち雷を引き起こすだろう。<br>
　そう思っていた矢先に雷が落ちる。三秒ほど遅れて雷鳴。まだ遠い。街にも落ちてはいないだろう。雨が降ってきたので、雷もこちらに近づいてくるだろう。<br>
「雨も降ってきたし………」<br>
　ロキは息を吐いた。今フェンリルはどうしていることだろう。穴の開いた洞穴の中、独り雨に打たれているのだろうか。血液と涎を撒き散らし、臓腑を貫く糸の痛みに耐えているのだろうか。<br>
「<b>うん？</b>」<br>
　急に頬杖をついていたトールが目を見開く。彼はあたりを見回し、何かを探すような調子。<br>
「なに、どうしたの？」<br>
「<b>静かに</b>」低い声でトールが封じる。<br>
　ロキは言われるままに黙り、身体も硬直。<br>
　稲妻が走る。遅れて雷鳴。まだやはり遠い。<br>
「<b>ミョルニルっぽい</b>音がした」<br>
「え？」ロキは驚く。「なに、ミョルニルっぽい音って。叩く音？」<br>
「いや、<b><font color=green>ミョルニルっぽい音</font></b>なんだが……」眉間に皺を寄せるトール。「説明し辛いな。ミョルニルがぶつかったときに聞こえる音みたいな、そんな感じの。高い、金属がぶつかったみたいな音だ。聞こえないか？」<br>
　ロキは首を振った。トールの言うような音は聞こえない。<br>
　しかしミョルニルの動作原理を思い出し、トールの言っていることがあながち嘘や妄言ではない可能性があることに気付く。ミョルニルは<b>外部から供給されたルーンを変換する道具</b>だ。基本的にルーンは力学的なものに変換されるが、無駄のないルーンの変換などありえない。ルーンは微小ながらも熱や音にも変換されることだろう。今の雷のルーンがどこかにあるミョルニルに通電し、特定の波長の音としてルーンが消費されたという可能性はありえる。長年ミョルニルを使ってきたトールには、そのミョルニルが発する音の波長を捉えられるようになったのかもしれない。<br>
<br>
「私には聞こえなかったけど、でもありえるね」と言ってロキは自分の考えたことを説明した。<br>
「そうなのか？」と意外そうな表情をするトール。やはり彼はミョルニルの動作原理について知らなかったらしい。<br>
「今のところ何の手がかりもないわけだし、探してみる価値はあると思うよ。音が聞こえたのはどっちのほう？」<br>
　トールが指差した方角は、空が赤く輝いていた。<b>燃える三色の架け橋ビフレスト</b>の方角だ。ビフレストは通常のルートではアースガルドとミッドガルドを繋ぐ唯一の道である。アース神族が進行してきたのもあちらからで、対スリュムヘイムの戦いが行われたのも方向的にはあちらだ。<br>
「もしかして、<b>スリュムヘイムの戦いのときからあそこに置きっ放し</b>だったりして」ロキは言ってみる。<br>
　あのときトールは泥の巨人ミストカーフを倒し、その後にミッドガルドの海から昇ってきたヨルムンガンドと戦い、相打ちになったらしい。そのときにミョルニルを紛失したのだとすれば、ミョルニルは巨人族に盗まれたのではなく、単にトールが失くしただけということになる。<br>
「病室では誰かが回収したって言っていた気がしたんだけどなぁ……。誰だったか忘れたけど」と頼りないトール。「まぁ行ってみるしかないな。一緒に来てくれるか？」<br>
　トールは正面から気持ちや言葉をぶつけてくるため、見つめられるとなんだか恥ずかしく感じる。ロキは慌てて頷いた。<br>
「良いけど……、飛ぶのは無理だよ。雨降ってるし……、雷に打たれたら怖いし」<br>
「馬を出す。待っててくれ」<br>
　トールは言うなりシアチの館の中へと入っていった。ロキは乗馬はあまり得意ではない。不安である。<br>
<br>
　しかしトールが連れてきた馬は一頭だけだった。金の鬣を持った立派な雌馬。身体はかなり大きく、体格のかなり良いトールが乗っているというのに何ら負担を感じている様子がない。トールが戦のときに使用している騎馬かもしれない。<br>
「乗れ」と雨合羽を着たトールが騎乗から言った。<br>
「<b>え？</b>」馬の横で呆けていたロキは急に言われて戸惑う。二人乗りというこか。確かにロキは乗馬は苦手だが、乗せてくれるとは思わなかった。「えっと、どっち？　前？　後ろ？」<br>
「前に決まってんだろ」とトールが馬の背中を叩く。<br>
　ロキはトールに引っ張り上げてもらい、なんとか馬の背中に収まった。背後のトールの体温が暖かい。なんだかこの位置は気恥ずかしい感じがするな、と思いつつ雨合羽を羽織る。<br>
　トールが手綱を引くと、馬は一度身体を反らせてから勢い良く走り出す。晴れた日にこんな街中で馬を走らせていたら迷惑であろうが、雷雨のためか人影はまったくない。街を抜けるまで誰ともすれ違わなかった。<br>
　稲光にも雷鳴にも、馬はまったく堪えないで走り続ける。強い馬だ。<br>
「<big>トール、まだ聞こえる？</big>」ロキは雨にかき消されないよう、大声で言う。<br>
「<big>聞こえた</big>」<br>
　トールはまったく馬を走らせる手を緩めず、馬はそれに応じる。ロキは背中の熱いものに身を任せ、身体を強張らせていた。<br>
<br>
「ここだな」<br>
　トールが馬を止めたのは打ち捨てられて長い間経っているように見える灯台の前だった。<br>
　この灯台はイドゥンをつれてスリュムヘイムから逃れる際に逃げ延びた場所だということに、ロキは気付く。正確にはロキは途中で撃たれて気を失いかけてしまい、イドゥンに背負われてこの灯台に逃げ延びたのだ。あのとき意識は朦朧としていたが、ぼんやりと風景の記憶はある。<br>
「入る？」<br>
「当たり前」トールは庇になっている場所まで移動してから、ロキを抱えて馬を降りた。馬を信用しているのか、彼は馬の手綱をどこかに繋ごうとはしなかった。<br>
　トールの体温が背中から消え、ロキは寒さを感じた。雨合羽を着ていたとはいえ、豪雨の中完全に雨滴の侵入を防げるわけもない。畳んでおいた羽を広げ、体に巻きつける。多少は暖かさが戻る。<br>
「暖かそうだな」とそれを見てトール。<br>
「スペースあるよ」ロキは翼を広げて言ってみる。<br>
「動けなくなるだろ」トールは灯台の入口へと向かってしまう。少し残念。<br>
　トールは重そうな金属製の扉を片手で押し開けた。耳障りな甲高い音が響き渡る。灯台の中からは冷たい空気が吹き込んできた。<br>
「まだ聞こえる？」<br>
「今は聞こえんな」トールは扉を支えたまま、ロキにも入るように促す。「雷が落ちたときじゃないと」<br>
　しかし雷雲は減衰し始め、もう稲妻は落ちそうになかった。ここからは自力で探さなければいけないようだ。灯台内部は延々と螺旋階段が続いており、昇るのは大変そうではあるが探すところはそうはないように見える。<br>
「とりあえず、登ってみる？」<br>
「そうだな」<br>
　トールが扉から離れると、扉はゆっくりと閉まった。灯台内はもともと薄暗かったが、扉がしまるとかなり暗くなる。ロキは比較的夜目が利くほうだが、普通のアース神などにとってはこの暗さは厳しいだろう。トールは大丈夫だろうか。<br>
　手が取られる。トールが手を引いていてくれた。ロキが暗さに迷わぬよう、を気遣ってのことか。彼の手は暖かかった。<br>
<br>
　螺旋階段を上っていく。<br>
<br>
　灯台の外からは雨音が響いている。雷鳴が鳴り響いていた頃よりも雨は強くなっているようだった。何処からか雨漏りしているのか、ときたま水が落ちる音が伝わる。<br>
「暗いね……」<br>
　ロキの言葉に、トールは頷いて反応した。<br>
　ミョルニルらしき影は見当たらない。ミョルニルは大きさをある程度変化させることができる道具ではあるが、スリュムヘイム攻略戦で使用した直後にここに忘れ去られたのであれば、巨大なサイズなままだろう。あれは取っ手が非常に小さいが、槌としてのサイズは非常に巨大だ。金などの豪華な素材をふんだんに使っているため、暗闇でも非常に目立つはずである。<br>
「<b>あ………</b>」<br>
　螺旋階段を四割程度登ったところで、ロキは階段の上に<b>何かが光っている</b>のに気付いた。金色の光を放つその物体はある程度の大きさを持っている。まさかこんなところに巨大金塊が落ちているわけはないだろう。ミョルニルだろうか。<br>
「なにかあったか？」まだ見えていないのであろう、トールが尋ねてくる。<br>
「うん、あそこ……」ロキは光る物体を指差す。「もう少しのところ」<br>
　近づいて気付く。<br>
　それはミョルニルではなかった。金色に光っているものは巨大な一つの塊ではなく、<b><font color=green>九つの小さな塊</font></b>が鎖で<b><font color=green>環</font></b>として繋がれていた。九つの金色の腕輪で作られた、さらに巨大な一つの環。<br>
　ロキはその正体がなんなのかようやく捉えられるようになり、それがこの場に相応しくないものであることに気付く。<br>
（<b><big><u>ドラウプニル……！</u></big></b>）<br>
「なんだ、これ」<br>
　トールが環に手を伸ばす。<br>
　ロキはトールを止めようとしたが、それより早くトールは環の中央に手をやっていた。暗かった周囲が急に眩しくなる。<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
　冷たい。<br>
　身体が重い。<br>
<big><b>　周囲は海だった。</b></big><br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10852546.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10862450.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u><br>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/c/10857228.html">
    <title>
			ygg/1/05
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/c/10857228.html</link>
    <description>５  　生物学者は男性部屋でひっかきモグラの解剖を行っていた。ありがたいことに除菌シールドで小さな部屋を作り、その中で解剖を行っているため、部屋の中に悪臭や血液は拡散していない。これで解剖をやめてくれればもっとありがたいのだが。ドクターは医者...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-10-16T22:57:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>５</div><br>
<br>
　<b>生物学者</b>は男性部屋でひっかきモグラの<b><font color=red>解剖</font></b>を行っていた。ありがたいことに除菌シールドで小さな部屋を作り、その中で解剖を行っているため、部屋の中に悪臭や血液は拡散していない。これで解剖をやめてくれればもっとありがたいのだが。ドクターは医者という職業上、血液や臓器は見慣れてはいるものの、あまり見たいと思うものではない。<br>
<br>
　除菌シールドは透明な薄い膜でできているため、音も光も通過する。生物学者は部屋に入ってきたドクターにすぐに気付き、膜のそばに近づいた。<br>
「<b>どうだった？</b>」マスク越しの声で生物学者が言った。<br>
「大丈夫だったよ」<br>
「そう、良かった」マスクで表情がよく見えないが、生物学者は微笑んだようだった。「で、他にも何が用がある感じ？」<br>
　彼女は話が早くて助かる。ノルン・セカンド・ナンバーツーの乗員のうち、ドクターと生物学者だけが<b>三十代</b>。あとの三人は<b>二十代の前半</b>で、まだ若い。こんなことを言うと生物学者には怒られそうだが、彼女がいると安心する。ドクターは頷いてみせた。<br>
「まぁ、サンプル回収は終わったから、もう良いかな……。今洗浄しますから、ちょっと待っててください」生物学者は血塗れの除菌シールド内を整頓し始める。<br>
「いや、そこまですることはないかな。単なる相談だから」<br>
「<b>相談ね</b>」生物学者は手を休めずに応じる。「といっても、この状況だったら大事な相談でしょう。作業しながらじゃ無理ですね。片付けます。話しながらでも良いですけど、ちょっと手伝ってください」<br>
「了解」<br>
　ドクターは生物学者が除菌シールド内で簡易抗菌防護膜の中に包み込んだ品を受け取って除菌袋の中に詰めるという作業を行いながら、キャプテン不在の間の行動についてどうすべきかということを尋ねた。<br>
<br>
「どうすればって？」と生物学者。「<b><font color=red>前に進む</font></b>か、<b><font color=blue>ここで救助を待つか</font></b>ってことですか？」<br>
「いや、<b><font color=red><big>ここで救助を待つという選択肢はありえない</big></font></b>。迷宮を探索することは変わらないよ。そうじゃなくて、これからの行動面でさ。彼女はキャプテンだったわけじゃないか。彼女が行動できないとなると、纏め役がいないことになる」<br>
「<b><font color=red>あなたがリーダーをやれば良いじゃないですか</font></b>」生物学者があっさり言った。「何を悩んでいるかと思えば………」<br>
　確かにそうするべきなのかもしれない。<br>
　しかしそのことを示唆する生物学者を、<b>冷酷な人物である</b>とドクターは感じた。<br>
「あなたのほうが年齢も上ですし、判断力もある。経験も積んでる。技術もあるし、何より信頼されているでしょう、あの子よりは。<b>プリシッラ</b>が唯一礼儀正しくするのも、あなたの前だけじゃない」生物学者が<b>技師</b>の名前を引き合いに出して言った。<br>
「僕は彼女の親戚みたいなもんだからね」<br>
「身内だろうとなんだろうと、良いんですよ。要は使えるか使えないか。あなたが引っ張ってったほうが探索は容易に進むでしょう。人数が足りないんだったら、誰か頼りになりそうな人員を雇って迷宮に行けば良い」<br>
<br>
　その通りではある。<br>
<br>
　実際、キャプテンを見ていると非常に危うい。彼女はまだ若い。拙い経験と根拠のない自信、誤った感情に流されて行動している。彼女が怪我をしたのも不用意に人骨に近づいたからだ。未開の惑星で人骨を発見したのだから、相応の危険を予測するべきだったのだ。しかし彼女はその危険予測ができなかった。<br>
　だが<b>キャプテンを今のリーダーの座から引き摺り下ろすというのも良くない</b>。ドクターは強くそう感じていた。<br>
<br>
「さっき<b>救助を待つという選択肢はない</b>って言いましたけど……、なんでですか？」生物学者は話題を変えた。<br>
「<b>外部との通信ができない</b>」ドクターはゆっくりと、考えながら言葉をつむいだ。「おそらく……、初期SETIの人工遊星もこの惑星に引き寄せられ、墜落したのだろう。でも人工遊星<b><font color=red>はその間、一切の電波を外部に照射しなかった</font></b>。電磁妨害が効いているせいだ。目視でもしなければ、この惑星が危険なものであるということは気付かないんだ。だから、<b><font color=red>救助船がここに助けに来てくれることはありえない</font></b>。電磁妨害を打ち破れる程度の強いパワーでこちらから通信を送らない限りはね。たまたま来たとしても、我々と同じように墜落してしまうだけだ」<br>
「<b>ブリッジが壊れて</b>通信機能が使えなくなったせいで、ハイパワーの通信機構は使えない、と」生物学者は眉根を寄せる。「ブリッジが壊れたのは痛かったですね。エンジンが両方とも、一応生きているというのはラッキーに感じたんだけれど」<br>
　おそらく惑星不時着時、キャプテンもそう判断したのだろう。通信機構のあるブリッジよりも、船の生命線であるエンジンや噴射機構を生かすべきである、と。だからエンジンを盾にすればブリッジの被害を抑えて不時着できたかもしれないのに、そうしなかった。<br>
　<b><font color=red>だがその判断は間違いだ</font></b>。航行中の高速探査艇が引きずり込まれるほどの特殊な惑星だ。エンジンが生きているからといってどうにかなるものではない。通信を優先し、外部に助けを求めるべきだったのだ。<br>
　ブリッジを修理するという手はある。しかし電磁コーティングされたノルン・セカンド・ナンバーツーのシールドを破るほどの電磁妨害をさらに打ち破るほどまで通信機構を回復させるためには、途方もない時間がかかるだろう。<br>
　そしてその間にも、ノルン・セカンド・ナンバーツーのような探査艇がこの惑星に引きずりこまれるに違いない。ノルン・セカンドはなんとか無事に着陸できたが、他の船も上手くいくとは限らない。<br>
　<b><font color=red>できる限り早く他の船にこの惑星の危険性を伝えなくては、多くの人命を危険に晒すことになるのだ。</font></b><br>
　ドクターはそれを説明した。<br>
「不時着のとき、ブリッジにいたんですよね？」と生物学者。「それならエンジンを盾にするべきだ、って言えば良かったのに」<br>
　彼女の言い方はドクターを非難するような言い方ではなかった。単に疑問だから訊いたという感じだ。<br>
「あのときは既に彼女がヴェルダンディに指示を出してしまっていた。僕がそこに割り込んだら、ヴェルダンディは混乱してどちらの命令を優先するべきかわからなくなってしまっていただろう。そのほうが危険だった」<br>
「<b>リーダーは一人で良い</b>、ってわけね」生物学者は除菌シールドを閉じる。既に白衣も殺菌袋に入れてしまった後で、最後に残ったマスクを外して殺菌袋に入れた。「<b>だったらなおさら、あなたがリーダーをやるべきでしょう</b>。そのほうが納得する」<br>
　確かにそのほうがドクター自身を含めた四人のためには良いのかもしれない。<br>
<br>
　しかしそうしてしまったら、おそらくキャプテンが駄目になってしまう。彼女が小さなプライドに固執しているのは見てわかる。<br>
　そしておそらく彼女は次に起きたとき、その小さなプライドを傷付けられ、情けない姿を晒してしまったことを悔やむだろう。そこでリーダーの職まで取って代わられたと知ったらどうなるか。役に立たなくなるだけで済めば良いが、ここは得体の知れない惑星だ。秩序の取れない行動があればすぐさま危険に繋がる。<br>
　今はリーダーをやるべきだ、とドクターは判断する。<br>
　彼女を奮い立たせなければならない。<b>キャプテンに、キャプテンになってもらわなくては。</b>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/r/10852555.html">
    <title>
			presen/永久帰還装置
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/r/10852555.html</link>
    <description>250ccバイクの旅 ブリキの 250:A Short Odyssey  09/14　10：21 　継続走行距離　12917.7km 　旅路走行距離　0km 　区間走行距離　0ｋｍ  　そろそろ出発する。 　進路は一路北へ。短い旅ではあるが、安全なものとなることを祈りつつ。  　なお、記録は本機Si...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-10-08T22:36:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center><blockquote><b>250ccバイクの旅<br>
ブリキの<br>
250:A Short Odyssey</b></blockquote></div><br>
<br>
<big>09/14</big>　10：21<br>
　継続走行距離　12917.7km<br>
　旅路走行距離　0km<br>
　区間走行距離　0ｋｍ<br>
<br>
　そろそろ出発する。<br>
　進路は一路北へ。短い旅ではあるが、安全なものとなることを祈りつつ。<br>
<br>
　なお、記録は本機Sigmarion.ver3.00によって行う。<br>
<br>
<br>
<blockquote> 出発前です。<br>
　ちなみに中古車なので異様に距離走っているようですが、私が乗るようになってからは大して走ってません。<br>
　格好つけちゃったりしていますが、記録装置は単にシグマリオン3というだけのことです。ここで既に迷走し始めてますね</blockquote><br>
<br>
<br>
　18：02<br>
　継続走行距離　13092.3km<br>
　旅路走行距離　184.6km<br>
　区間走行距離　184.6km<br>
<br>
　岩手県花巻市に到着。到着時刻はおよそ16：30。仙台で出発直後にいろいろと雑事があり、花巻に入ってから少し迷っていたため、実走行時間は5時間程度と考えて良いだろう。走行距離が約180km、平均時速が36km/hとなる。<br>
　当初の想定では最低でも一日に200km程度は走行できるであろうと考えていたが、意外存外に距離を伸ばせなかった。大崎―花巻間は主に国道4号を利用したが、仙台から大崎までは北を目指していいかげんに走行しすぎたのが原因かもしれない。<br>
<br>
　仙台出立後、昼食は三本木の道の駅でとった。えこな豚トンカツ定食というものを選択したのだが、これが異様に量が多い。ご飯が一合くらいあるのではなかろうか。隣のおっさんが蕎麦とカツ丼のセットメニューを頼んでいた。これがこの道の駅ではあたりまえの光景なのだろうか。自分ではよく食べるほうだと思っていたが、完食するのがやっとであった。<br>
<br>
　岩手県との県境あたりで通り雨に遭う。三十分ほど流行っていない定食屋で休む。異様なほどに雨埃が巻き起こっていたのが印象的ではあった。<br>
<br>
　花巻市に到着したのが16時ごろ。以前花巻には旅行に来たことがあり（もちろんそのときはバイクではなかった）、そのため花巻が温泉で有名ということは知っていたため、温泉街を探す。<br>
　南花巻温泉峡という文字が。いや、温泉郷か。書いた人間もどちらかわかっていないのではなかろうか。間違いがあったぞ。これで進路を間違えたら訴えてやる。<br>
　温泉峡に入って少し入ったところにあった青果屋にて温泉宿について尋ねる。<br>
・安い。<br>
・飯が出る。<br>
　この二つの条件を満たすのは大沢温泉自炊部ということだった。前に行きました。<br>
　でも気に入っていないわけではないのでそこにすることに。<br>
<br>
　温泉峡に行くまでに『びしゃもんてんなんたら』という文字を見た。どうやら七福神ゆかりの土地らしい。せっかくなので明日はそこに寄っていくことにする。<br>
　当初の予定では高速道路は使わない予定だったが、走行距離を考えると使わざるを得なくなるかもしれない。<br>
<br>
<blockquote> 初日はあんまり余裕がなかったのか、途中記録が少ない。ちなみにジョーク発言も少ない。なんてこったい。<br>
　ちなみに大沢温泉に以前行ったときは複数人で、しかも車は他人任せの運転だったため、楽勝でした。一人は大変だぁ。</blockquote><br>
<br>
<br>
<big>09/15</big><br>
　09：00<br>
　継続走行距離　13092.3km<br>
　旅路走行距離　184.6km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　最悪だ。<br>
　朝から雨である。<br>
　最悪。<br>
　行程二日目からこれでは幸先が悪いといわざるをえない。一応のこと雨用の対策はしてきたものの、降らないに越したことはなかった。だから昨日も通り雨に降られたときは雨宿りを選択したのだ。<br>
<br>
　もう一日花巻で、という選択肢は存在しないが、この雨の中長距離走行を、という気もしない。昨日は一日で180kmしか走れなかったのだ、今日はせいぜい40kmというところかもしれない。それならば今日頑張るのは非効率的で、観光でもしながらゆっくり走行するべきだろう。残念ながら服装がデロリアンに乗っているみたいに観光地にマッチしないであろうが、それは仕方がない。<br>
<br>
　今日の目標は盛岡で。<br>
　おそらく旅館などはないだろうので、ビジネスホテルになるだろう。<br>
<br>
<blockquote>　雨、といいつつ出る頃には雨が降っていませんでした。幸い幸い。日頃の行いが良いからですね、と誰も言わないので自分で言ってみました。<br>
　ちなみにこの後何度も出るデロリアンネタですが、デロリアンとは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズに登場するタイムマシン（の車種の通称）で、プルトニウムを動力源とします。</blockquote><br>
<br>
　15：17<br>
　継続走行距離　13279.0km<br>
　旅路走行距離　371.3km<br>
　区間走行距離　186.7ｋｍ<br>
<br>
　現在地は秋田県、道の駅かづの。コーヒーを飲みながらきりたんぽを食べている。<br>
　ここまで来るまでにいろいろあったが、今書くべきことだけを書きたい。<br>
<br>
　体調も良く、天気も良くなってきたため、南盛岡から高速に乗った。<br>
　高速道路なんて高速教習以来で、バイクで乗るのはもちろん初めてだった。<br>
　思ったのは、100kmを超えると車道がまったく違うということだった。<br>
　こう書くと大袈裟に聞こえるだろうが、少しでも気を抜くと死ぬ、というのが実感できた。<br>
　バイクは死後の世界がそう遠くないということを教えてくれる。<br>
<br>
<blockquote>　だいぶトリップしてますね。<br>
　まぁハイになっているので仕方ない。見逃してください。</blockquote><br>
<br>
　17：10<br>
　継続走行距離　13308.6km<br>
　旅路走行距離　400.9km<br>
　区間走行距離　29.6km<br>
<br>
　大館市に到着後、ホテルがなかなか見つからず、駅前で観光案内にでも聞こうと思っていたところでホテルルートインを発見。チェーン店なので安かろうと決めた。一番安い部屋で6500円とのことだが、そこは空いておらず6900円の部屋に。部屋に到着した途端雨が降ってくる。ぎりぎりセーフ。<br>
<br>
　いろいろと書くことはあるが、まずは走っている途中に思いついたことから書きたい。<br>
　テーマは二つ。バイクのツーリングとは旅である、ということと、旅とは人生のようなものである、ということだ。どちらもなんだか後で読んで恥ずかしくなりそうなテーマであるが、今はいささかハイになっているので気にもならない。<br>
<br>
　バイクのツーリングが旅である、ということについて。<br>
　まずは言葉の定義からだが、旅と旅行はだいぶんに趣が違うと思う。旅行というと軽いイメージ、旅というと、それよりはもう少し重いというか……、軽かったとしても何らかの意味合いを持ち合わせたものだと考える。あるいは旅は旅行の部分集合であり、特殊な旅行が旅であるといっても良い。これはどちらが高尚だとかそういう意味ではなく、単なるイメージであり、解釈でもある。<br>
　旅行の手段はさまざまだが、挙げてみれば徒歩、電車、車、バイクなどがあろう。この中でバイクだけが異端である。というのは、バイクが一人乗りの乗り物であるからだ。<br>
　いろいろと突っ込みはあるだろうが、このまま読んでいただきたい。バイクが一人乗りというのは、他の交通手段と比べて開放的ながら心理的にはクローズドであり、不可分な乗り物だからだ。<br>
　徒歩や電車だとオープンであろう。そこには他の人間がおり、また電車を乗り継ぐことや、他の交通手段に乗りかえることもできる。徒歩や電車などと手段にこだわる必要はまったくない。<br>
　車は外側に対して閉じているが、複数人で乗ることができる。もし一人で乗っていたとしても、そこは完全に閉じているので開放的ではない。<br>
　バイクは特殊だ。一度乗ったら帰りつくまではバイクと離れることは許されない。常に外気に晒されており、休むこともできない。一人乗りゆえに自分で動かさなければどこにも行けない（唯一例外なのはバイク乗りがタンデムしている状況であるが、二人ともバイクに乗れるならばタンデムなぞせずに二人別のバイクに乗るだろう）。<br>
　バイクは一人旅だ。孤独だ。しかし孤独のままではいられない。誰かに頼らなければ、泊まる宿がないのだ。<br>
<br>
　旅とは人生のようなものだ、という言葉がある（逆だったか？）。<br>
　バイクに一人で乗っているというのは、誰も知っている人間がいない土地で一人暮らしをしているに等しい。乗りつづけている限りでは、そこに生活はあるものの、他との接触点は存在しない。<br>
　バイクを降り、食事をしたり、道を尋ねたり、宿をとったり、そういうときに初めて他との接触点を得る。<br>
<br>
　『哲学的ゾンビ』という言葉がある。ゾンビというのは南アジアだかどこかだかの儀式ブードゥーによって蘇った死者のことだったと思うが、哲学的ゾンビは「主観では他者が生きているかわからない状態」のことだ。<br>
　自分は生きている。それはわかる。なぜなら自分自身が生きていると思うのだから。<br>
　では他人はどうか？　自分と同じように生きているように見える。しかし実はそれは見せ掛けなのではないか？　たとえばプログラム済みのロボットが喋っているのではなかろうか？<br>
　簡単にいえばこれが哲学的ゾンビということだ。<br>
　ふとそれについて考えたのは、かづのの道の駅できりたんぽを買ったときのことだ。売店のおばさんにバイクで来たのかと尋ねられ（プルトニウムでも扱えそうなレインジャケットを着ていたからだろう）、そうだと答えると、「さっきも埼玉からバイク来たっていう女の子がいたね」と言われた。<br>
　このときに私は他人を生きているものと感じた。哲学的ゾンビではない、と。<br>
　意味がわからない？　仕方ない。今はハイなのだ。<br>
<br>
　人生が旅であるならば帰る場所もあるのだろう、というのは神林長平の『永久帰還装置』での言葉だ。<br>
　この旅の帰る場所は決まっている。自宅だ。<br>
　しかしそこに辿りつくまでには、バイクから離れることは許されない。これは電車や車での旅行とは違うのだ。自分自身の力で歩んでいくしかない。それが旅であり、人生なのだ。<br>
<br>
　旅先なのにくどくなった。いつもの癖が抜けない。<br>
　旅らしい日記はまた後で。<br>
<br>
<blockquote>　やばいです。<br>
　旅は人生だ、などという妄言から始まり、哲学的ゾンビにまで話が飛びました。凄いぞこれは。うん……、さすがに引く。<br>
　ちなみに話に出ている『永久帰還装置』ですが、これは神林作品の中で非常にお勧め。『雪風』および『敵は海賊』シリーズを除くと、『膚の下』『魂の駆動体』『ライトジーンの遺産』の次くらいに好きです。</blockquote><br>
<br>
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=burikino-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=4150309183" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=burikino-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=4152085614" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=burikino-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=4150309396" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=burikino-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=4150306346" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><br>
<br>
　20：19<br>
　継続走行距離　13308.6km<br>
　旅路走行距離　400.9km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　うなぎ定食が来るまでに４０分ほどかかったので、その間飲んでいたビールだけですっかり酔ってしまった。情けない、と思うのは格好付けの性だろうか。<br>
<br>
　さて、順を追って。<br>
　花巻は10時ごろに出発。そのころは既に雨はやんでいたものの、寒かったので上下レインジャケットを着て出発。途中花巻神社に寄る。普通。厚くなってきたのでレインジャケットの下は脱ぐ。<br>
　花巻来る途中に見た『びしゃもんてんなんたら』が気になっていたので、花巻駅で案内を聞く。ずいぶん遠いとか。あれ、来る途中でアーケードで見た案内標識はなんだったんだ。まぁ良いや。<br>
　土なんとか方面まで行ってびしゃもんてんを見る。うーむ、木彫り。脛に味噌を塗る信仰があるらしいです。ちなみに幸運アクセサリー付きのおいくじ引いたら末吉で、『鍵』が出ました。びしゃもんてんって、何の神様だったか。七福神の部屋であることは覚えているが、でも七福神ってだいたい外国人ですよね。べんざいてんもサラスヴァティーとかいうインド人だし。日本人は大黒様だっけ？<br>
　十二時近かったので、来る途中に見た『くらかけ』という森への脇道にあったレストランでくらかけ定食とコーヒーを注文。また多いな、この定食は。ぎりぎり。コーヒーは普通。<br>
<br>
　その後は南盛岡まで国道、そこから60kmほど高速、降りて道の駅かづの、あとはとんとんでここまで。途中宿がなさそうで困りました。<br>
　今日の晩飯はようやく通常量。<br>
<br>
　今日は220kmほど走行。実走行時間が昨日に比べて短いのに距離が伸びている。やはり高速は早いようだ。<br>
　ふと思ったことがある。<br>
　旅は人生のようなものだ、ということは既に書いた。<br>
　人生を70年とすれば、一週間のこの旅の二日目は、人生の20年目にあたる。<br>
　私は今21だ。これまで特に大きな怪我もなく、また病気もなく生きてきた。それはこの旅でも同じだ。でもこれから先はわからない。<br>
<br>
　やはり酔っている。しらふならばこんな恥ずかしいことは書けない。松嶋ななこ可愛い。<br>
　ともかく明日の旅がまた安全なものであることを祈りつつ。<br>
<br>
<blockquote>　最初はまともな旅日記なのに、また人生について語り出しました。どうした。どうした私。そんなに若くない。<br>
　おみくじになっていた幸運アクセサリーですが、他に『桃』『鳩』などがあり、その中でもデザイン的に最も『鍵』が好みだったので、嬉しかったです。<br>
　レストラン『くらかけ』は自作の置物などを置いている店でした。なかなか素敵なお店です。<br>
　松嶋菜々子についてなぜか言及しているのは『救命病棟24時』がやっていたためです。可愛いです。可愛い。</blockquote><br>
<br>
<br>
<big>09/16</big><br>
　09：11<br>
　継続走行距離　13308.6km<br>
　旅路走行距離　400.9km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　八時に起床、というほど勢い良くは起きてはいない。<br>
昨日は十時ごろ寝たので、約十時間睡眠である。昨日書き忘れていたが、一昨日は九時ごろに寝て八時ごろに起きたので、十一時間ほど眠っていたことになる。<br>
<br>
　睡眠は充分にとっているが、さすがに三日目、身体にやや負担がかかっている。<br>
　というのも欲しかったウェストバッグが手に入らず、ディバッグとサイドバッグだけの旅なのだ。イエローコーンのウェストバッグが欲しかったのだ。黄色いのが欲しかったのだ。でも手に入らず、なくなく鞄二つだけの旅。<br>
　荷物をもう少し減らせば良かったかな、というのが正直なところ。ビジネスホテルでもランドリーやパジャマがあるとは思わなかった。これなら下着だけ持っていけば十分というものだ（予備にもう一枚は結局必要になってしまうだろうが）。<br>
<br>
　現在テレビを見ながらストレッチをしつつ日記をつけている。九時半ころに出よう。<br>
　今日も良い日でありますように。<br>
<br>
<blockquote>　ウェストバッグ、どっちが良いかなー。<br>
　灰色のと黄色のがあるんですけど、やっぱり赤が映えるのは黄色かな。でも灰色のほうがいつもの服装にマッチする気がする、とかなんとか思っちゃったりして。<br>
　意外とランドリーって何処にでもあるものなんですねぇ。</blockquote><br>
<br>
　11：56<br>
　継続走行距離　13353.5km<br>
　旅路走行距離　445.8km<br>
　区間走行距離　44.9km<br>
<br>
　ただいま国道339号沿い、道の駅つるた。途中麺類の店しか見当たらなかったので、助かる。やはり日本人たるもの米だ。<br>
　途中暗雲が立ちこめていたが、なんとか雨は回避。平地のせいか風が少々強いものの、問題なく走行はできている。<br>
　このまま国道339号を進めば80kmほどで竜飛というところへ着くようだ。そこに青函トンネルの入口もある……、のだと思う。たぶん。買ったガイドが東北のみで、北海道への渡り方が書いていなかったので少々心配だが。<br>
<br>
<blockquote>　ここでおっと、みたいな。<br>
　まぁそれは置いておくとして、本当に麺類の店しかなかったんですよね、道中。そもそも飲食店がなかったんですけれど。<br>
　しかしここで中華丼セットにしたのはなぜだったんだろうか。勢いで頼んでしまった。あんまり好きではないのに。</blockquote><br>
<br>
　13：22<br>
　継続走行距離　13414.4km<br>
　旅路走行距離　495.7km<br>
　区間走行距離　50.9km<br>
<br>
　やばい。<br>
　牛がいる。<br>
　ガードレールの向こうがわにいる。<br>
　ここは道の駅十三湖高原。とりあえずその地名は確かだが、ここは日本だろうか。北海道は日本ではない、外国だ、という文句があるが、青森も日本ではないようだ。牛がやたらと鳴いている。発情気か。<br>
　とにもかくにも、もうすぐ竜飛だ。<br>
<br>
<blockquote>　牛がいました。最初逃げ出してきたやつかと思ったよ。<br>
　大型バイクに乗ったおにいちゃんだかおじちゃんだか微妙なラインの人も道の駅にいたのですが、その人は牛に接近して写真撮ってました。食われるぞ。</blockquote><br>
<br>
　16：55<br>
　継続走行距離　？km<br>
　旅路走行距離　？km<br>
　区間走行距離　？km<br>
　<br>
　なんだろう。<br>
　いろいろあったが、今はなぜか船に乗っている。<br>
<br>
　詳しくは余裕ができてから書きたい。<br>
<br>
<blockquote>　いろいろあったんですねー。<br>
　放心して距離も覚えていなかったり。</blockquote><br>
<br>
　17：13<br>
　継続走行距離　？km<br>
　旅路走行距離　？km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　順を追って話そう。<br>
<br>
　道の駅十三湖高原から青函トンネルのある竜飛までは30kmほどだった。道中は人が少なく、対向車さえない道だった。絶景ではあったが人のいない別の世界に迷いこんでしまったのではないか、と思えるほど、具体的には20kmほどほとんど誰にも出合わなかったのだ。しかもガソリンの残量が心もとなかった。リッター40kmの計算では楽勝ではあるが、リッター30kmで計算してしまうとだいぶ危うい、そんな状態だった。<br>
　なんとか竜飛につく。青函トンネルを探す、がない。記念館はあるが、ない。<br>
<br>
　そこで気付いた。<br>
　道を間違えていたのだ、と。<br>
<br>
　道を間違えるといっても、一般的な道の間違え方ではない。私は青函トンネルというものが自動車のとおれる道だと思っていたのだが、実際はそうではなく、列車専用の道であった。陸路で北海道に向かう道はなく、フェリーを利用するしかないのだ。<br>
<br>
　このときの衝撃は計り知れなかった、というと過剰表現ではあるが、あながち遠くはない。まぁ、とにかくショックだった。半泣きだった。青森に向けて走った。あったのがフェリー埠頭で、飛び乗ったのがこの船というわけだ。<br>
<br>
　説明になっていないような気がするが、とにかく概要はそんな感じだ。引き下がれなかったのだ。高かったぞ、往復で11030円。ただでさえ金がかかっているのだから、これは一週間の行程を六日にせざるを得ない。六日にしても正直予算オーヴァーだが、まぁ細かいところはいたしかたあるまい。<br>
<br>
　フェリーは三時間ほどで函館に到着するらしい。それまでに探検でもしてみよう。<br>
<br>
<blockquote>　このときは本当に衝撃的だったわけで。<br>
　路銀が尽きたのはこのためだったりします。<br>
　みなさん知っていましたか、青函トンネルが電車しか通れないこと。私はさっぱり知らなかったのだよなぁ。うーむ、今となってはそれくらい調べておけ、と思うわけで。<br>
　このときはあっさりと船に乗ってしまったように書いていますが、本当は凄く悩みました。</blockquote><br>
<br>
　18：30<br>
　継続走行距離　？km<br>
　旅路走行距離　？km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　乗船して一時間と半。<br>
　暇である。<br>
　とても暇だ。しかもお腹減った。眠い。コンタクトしたままなので寝るに寝れない。外せば良いのだが、慣れない北海道なのでできればつけたままでおきたい。<br>
　到着時刻が20：40ということで、不安なのは宿泊場所である。港近くにホテルはあるだろうか。あったとしても、到着してから行って部屋は空いているだろうか。<br>
　不安である。まさか野宿ということはあるまいが。<br>
<br>
　明日は午前中は北海道観光をし午後に帰るつもりなのだが、ちょうど良い出発時刻の船がなかなかない。<br>
　唯一該当しそうなのが14：00出発のえさん2000なのだが、これは特殊船ということで予約が早く埋まってしまいそうだ。不安である。不安ばかりの旅だ。<br>
<br>
<blockquote>　特殊船というのはフェアリイ空軍第五特殊戦のことではなく、危ない薬品とかそういうのを運ぶためのトラックが載る船で、普通の乗用車などの積載量は少ないそうです。</blockquote><br>
<br>
　22：35<br>
　継続走行距離　13526.7km<br>
　旅路走行距離　608.0+113.0km<br>
　区間走行距離　?km<br>
<br>
　ウォレス医師まじ格好良い。<br>
　函館駅の近くの東急インにて記録をつけている。旅客機の発進くらい私でもできるぞ。エアロダンシングで貨物機の発進と投下さえやったのだから（犯罪者にありがちな発言）。<br>
<br>
　港についたときには20時40分だったと思う。実は自分のバイクに戻る際、どこにあるかわからなくなってしまって、船員に尋ねたのは秘密だ。そういえば『ヒットマン・ブラッドマネー』でゲイの船員を暗殺する任務があった気がするが、あの人たちもやはりゲイなのだろうか。<br>
<br>
　船内で函館駅近くにホテルがあるのは知っていたので函館駅方面へ。東横インにしたのは駐車場のおっさんが親切だったためです。四千とちょい。ちょっと安めだな。しかしレストランはない。仕方がないので近くの店を探す。<br>
　ホテル隣の店へ。寿司やと定食屋が混ざったような店で、なんというか、下町風である（よく知らないけど）。店員が気さくだ。そもそも函館という都市自体がなんとなく古臭く、現代を生きる私にはまるで映画のセットのように見えてしまう。<br>
　比較的高いほうだが、まぁ安いというその店（店名は忘れてしまった）、だがうまいのだ。私が注文したのはテンシンハン（とビール）で、これが異常にうまい。スープもついてきますが、テンシンハンが異常にうまい。隣のにいちゃんはラーメンがうまいうまいと言っていました。テンシンハンなんてほとんど食べない（年に一度食べるか食べないか）が、本当にうまかった。<br>
「ほっけの刺身なんかほとんど食べられないよ」<br>
　と言われてほっけの刺身（とビール）を注文したのだが、それよりもテンシンハンがうますぎた。<br>
　あと「お客さん、なんか疲れてるねぇ」と言われたので、お、よくわかるな、と思ったのですが、その後にこう言われました。<br>
「なんかふらふらしてるよ」<br>
　酔ってるからです。<br>
　酒は弱いんです。でも好きなんです。<br>
　あと美味しかったです、テンシンハン。カレンダーありがとうございました。<br>
<br>
　さて、明日以降の予定を。<br>
　ともかく金がない。フェリー（往復）で一万一千円ほど使ってしまったのだ。<br>
　こうなったら二日ほど予定を短くしてみてはどうだろうか。<br>
　明日函館観光し、フェリーで青森に戻り、そこで一泊。翌日高速で仙台へ。仙台までは四時間らしい。本当かよ。<br>
　しかしこの行程なら二日ほど短縮できるわけで、食費宿泊費合わせて15000円程度は節約できると思う。ちょうどフェリー代と高速代くらいだろう。節約しないと、予算がやばいのだ。<br>
<br>
　え？　テンシンハンとほっけの刺身とビール二杯で2900円だって？<br>
　旅ってのは長くいれば良いわけじゃないんです。密度が濃いのが重要なんです。<br>
<br>
<blockquote>　ちなみに世界仰天ニュース見てました。ウォレス医師格好良かったよ。あとエアロダンシング大好きです。<br>
　ほっけの刺身、おっちゃんは「ここでしか食べられないから自慢できるよ」なぁんてことを言っていましたが、そこまで美味いかな、と思ったり。<br>
　天津飯が、あのときは本当に美味しかったんです。もうそれだけだった。</blockquote><br>
<br>
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?lt1=_blank&bc1=000000&IS2=1&bg1=FFFFFF&fc1=000000&lc1=0000FF&t=burikino-22&o=9&p=8&l=as1&m=amazon&f=ifr&md=1X69VDGQCMF7Z30FM082&asins=B000067OWE" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe><br>
<br>
<br>
<big>09/17</big><br>
　09：18<br>
　継続走行距離　13526.7km<br>
　旅路走行距離　608.0+113.0km<br>
　区間走行距離　0km　<br>
<br>
　朝六時に一度目覚め、二度寝して八時起床。<br>
　朝は一階ロビーで。あんまりものがなかったが、ルートインに比べて値段が安いので仕方がない。しかしエレベータに張り紙がしてあったのだが、夕食にカレーを配っていたらしい（18時ごろだったのでありつけなかったが）。水曜はシチューだとか。これって函館だけなの？<br>
<br>
　さて、函館観光。さっぱりわからないが、どこへいこう。<br>
　せっかくバイクで来たのだ（バイク置いてくれば半額で済んだな）、バイクで行けるところに行きたいが、こだわる気もない。行きたいところに行こう。<br>
　ただし熊のきぼりの置物だけは買いたい。<br>
<br>
　あと客室誌で読んだのだが、『アドレナリン』まじ観たい。なんだこの内容は。<br>
<br>
<blockquote>　カレー配るシステムは本当に気になります。<br>
　何カレーなんでしょう。まさかうちの大学の今は亡き貧食みたいなカレーが出てくるのではあるまいか。<br>
　『アドレナリン』、そういえばこの日記を掲載するまでの間忘れていました。そのうち借りて観よう。</blockquote><br>
<br>
　17：03<br>
　継続走行距離　13590.9km<br>
　旅路走行距離　682.2+113.0km<br>
　区間走行距離　74.2km　<br>
　<br>
　死ぬかと思った。<br>
　正確には、死ぬことはありえないが正直危なかった。<br>
<br>
　船を待っている際にミツバチの大群に襲われた。なぜあんなにミツバチが大量にいたのか謎だが、隣の牛のトラックに乗ってきたのかもしれない。おおぅ、やばい、服の中には侵入しませんように。<br>
　服装が、黒のヘルメット、黄色のレインウェア、紺のジーパンなのだ。やばいぞ、ミツバチが怖い。<br>
　まだ船には乗れないのか。お前ら大江運送が遅れてきたせいだ、このやろう。これからはオヘホースラインと読んでやる。お前ら馬臭いんだよ。何見てるんだ、隣の牛、というありさまであった。<br>
<br>
　なんとか無事にこの記録をつけている。<br>
　北海道見物の記録をつけている余裕はないので、ここで一旦終わる。<br>
<br>
<blockquote>　いやもう、このときは本当に怖かったわけで。<br>
　だって蜂ですよ、蜂。刺されたら痛くて運転に集中できない。一大事です。<br>
　ちなみに「オヘホースラインと読んでやる」というのは大江運輸のトラックに『OHE HORSE LINE』と書いてあり、当初は本気でオヘと読んでしまったことから来ています。</blockquote><br>
<br>
　18：24<br>
　継続走行距離　13590.6km<br>
　旅路走行距離　682.2+113.0km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　船が発進してから一時間ほど。ロビーにて。<br>
　函館駅で買った駅弁を食べて寝ようと思ったが、なかなか寝つけない。お腹いっぱいになると眠くなるというが、お腹いっぱいにはならなかったのだ。逆に胃が動いているせいで腹が減る。寝つけるか、と思ったら電話がかかってきたりする。あきらめてレポートを書いている。<br>
　ここ「びなす」は全体的に昨日乗った「びるご」に対して綺麗というか、一般人向けに感じる。あるいは単に新しいのかもしれない。<br>
　少々よろしくないことに、少々というか大分だが、風邪をひいてしまったかもしれない。微妙なところで、ちょっと熱っぽいレベルだ。私は風邪をひいたときはたいてい喉がやられるタイプなのだが、今は喉が痛くない。微妙である。とりあえず買っておいたルルを飲んだ。<br>
　港に船がつくのは21：10。ホテルに到着するのは21：20といったところか（ホテルは既にルートインに予約した。大きい風呂に入りたかったからだ）。頭を乾かして22時には眠れるだろう。明日は特段観光はしないため、ぎりぎりでチェックアウトするように目覚めると、まぁ十時間程度は眠れるだろうか。<br>
<br>
　さて、今日のレポートを。<br>
　ホテルを出発後、函館駅へ。いくつか案内を貰う。赤レンガ倉庫というのが気になる。土産屋のようだ。コインロッカーに荷物を預けると（400円もとられた）、おぉ、身体が軽い。<br>
　一度港に戻り、もう一つのフェリー会社の時刻表を貰っておく。やはり来たフェリーで良いか、と検討。<br>
<br>
　北海道というのは不思議な土地だ。<br>
　一言で表現すれば暑く、夜は紫色だ。<br>
　暑い。青森や秋田のほうが寒かった。レインウェアを着ていると暑いが、ジャケットでも暑かった。これは単に徒歩移動が比較して多かったせいかもしれないが、しかし想像していた寒さはなかった。到着直後は寒く感じられたのだが。<br>
　それと、昨夜ホテルの窓から見た隣の建築物が紫色だった。なぜだろう。<br>
　空が青かった。空が青いのはレイリー散乱による。レイリー散乱は波長の、何乗だったか、まぁとにかく波長に対して反比例した散乱強度となる。簡単にいえば青っぽい光ほどよく散乱されるわけだ。可視光のうちもっとも青いのは紫色の光（というのも妙な表現ではあるが）だが、紫色の光は散乱されすぎるんだったか、細かい仕組みは忘れたが、とにかく青色がよく散乱され、それが目に行き届いて青い空と映る。<br>
　ちなみに夕日が赤いのはやはりレイリー散乱による（光が大気中を移動する距離が長くなるため、散乱強度の強い光は散乱されすぎて、赤い光だけが残る）だが、雲が白いのはミュー散乱という現象によるもので、どちらの散乱がより表れるかは反射粒子の大きさによる。<br>
　空には飛行機雲も見られた。北海道も、やはり東北と変わらない。変わってはいるが。<br>
<br>
　まず赤レンガ倉庫へ。予想どおりみやげ物やのようだ。いろいろあるが、しかしあんまり北海道っぽくはない。舶来品がいっぱいあるイメージ。ガンダムとか、売るか普通。<br>
　買いたいものを考えておく。<br>
<br>
・オルゴール<br>
・地ビール<br>
・白い恋人<br>
・熊カレー<br>
・KUMAのTシャツ<br>
・石製の地球儀<br>
<br>
　荷物になるので今は買わない。ちなみにKUMAのTシャツとは、PUMAのパロディ商品のようだ。<br>
<br>
　お昼は熊カレー、寿司、札幌ラーメンのどれかが食べたいと思ったが、熊カレー屋はなく、寿司は高そうなのでラーメンに。北海道のチェーン店らしき店で限定イカ塩ラーメンを食べる。どうやら函館はイカで有名らしい。しかしどのへんがイカなのかわからなかった。なぜかラーメンに扶が入っている。これはイカん。いかんいかん遺憾残念。<br>
<br>
　話は前後するが、昼食前に函館山に上ろうと思った。もちろんバイクで。なんとなくそこに山があったからだ。<br>
　石畳の道を進んでいくと、そこには『バイク・自転車ここより通行禁止』の文字が。なんでやねん。車両全部禁止するのはわかるけど、バイクを禁止する理由はないっしょ。まったくもう。もちろんバイクを降りる気はないので引き返した。<br>
<br>
　書き忘れていたが、函館市内は路線電車が走っている。これがなかなか怖い。<br>
　路線電車用に信号表示もあったりして、これがよくわからない。青信号の隣に赤い×印があったりして、これはなんのマークだったかと非常に焦った（そういえば書いていなかったように思うが、岩手あたりから信号が縦になっていた。降雪対策だろう。コンビニも二重ドアになっていた）。<br>
　山に上ってなんとかなんとかなんとかという神社（申し訳ないがさっぱり名前を覚えていない）というところや緑の島という釣り掘りに行った後、せっかくなので路線電車に沿って走行してみたりする。行く当てもない旅だ。こういうのも良いだろう。ちなみに本気で言っている。<br>
　あっけなく終点についてしまったので、引き返して逆方向へ。途中、五稜郭という字が見える。せっかくなので、五稜郭へ。<br>
　展望台への入場料は740円。どれだけ半端やねん。<br>
　新撰組関連のおみやげがなぜかあるなぁ、と思っていたら、そういえばここは土方歳三が死んだ土地だったのか。『燃えよ剣』は読んだが、忘れていた。<br>
　五稜郭展望台からの眺めは素晴らしかった。740円程度の価値くらいはあると思う。形状ゆえに真下が見えるのが素晴らしい。<br>
<br>
　赤レンガ倉庫に戻り、土産を購入。オルゴール店で彫金魔女型オルゴールを買おうかどうか迷う。8400円。無理。金もなく、荷物も重いのでオルゴールはあきらめる。しかしビールと熊カレーがあわせて2kgくらいある。これくらい楽なものだ、と思ったが、意外と重い。うーむ、明日は大丈夫だろうか。<br>
<br>
　駅に戻り、荷物をとり、船に乗り、今に至る。<br>
　もしかするとホテルについてから日記を書く気力がないかもしれないので、今のうちに明日も良い日であることを祈りつつ。<br>
<br>
<blockquote>　今になって思えば、ケチらずに買ったものは発送してしまい、いろんなものを買ったほうが良かったなぁ。<br>
　でもどっちにしろお金がなかったわけで叶わぬ夢か。</blockquote><br>
<br>
　19：58<br>
　継続走行距離　13590.6km<br>
　旅路走行距離　682.2+113.0km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　なぜか寝つけない。嫌な予感がする、という台詞をこういうときに吐くべきだろうか。<br>
　港まであと一時間と少し。こうなったらこのまま寝ないで行こう。<br>
<br>
　さて、嫌な予感という台詞が吐ける状況なので、ついでに人間の生と死という、壮大すぎていわれるとちょっとというか、だいぶ引きますよ、うん……、いや、私だから良いけどね、という話題について少々触れさせていただく。<br>
<br>
　私は、実を言うと死ぬのが怖い。<br>
　あ、ちょっと待ったちょっと待った。戻るのボタンを押そうとするんじゃない。ウィンドウを閉じるのはもっと駄目だ。<br>
　死ぬのが怖いのはあたりまえ、だと思う。たぶん。<br>
　しかし私は人よりも死ぬのが怖い、というか、死ぬ可能性を考えてしまうのだ。<br>
<br>
　例を挙げて説明しよう。<br>
　小学生のときに『特命リサーチ200X』という番組がやっていた。いろいろな事件や事故を元にいろいろなデータや対策を挙げていく番組なのだが、その中に脳が溶けて死んだ小中学生についての話があった。<br>
　その小中学生はアメーバに脳を溶かされて死んだのだ（ったと思う。古い記憶なので曖昧だが）。十分に清潔ではないプールの中には脳に入ると危険なアメーバがいることがあり、通常口から水が入ってもそのアメーバが脳に侵入することはないのだが、鼻から入ってしまうと免疫機構が正常に働かず、一週間ほど風邪に似た症状を引き起こした後、脳が溶けて死んでしまうのだ。<br>
　私はこの番組を見てから、プールに入った後に風邪っぽくなるたびに脳にアメーバが侵入したことを疑った。<br>
　あるいは、こけたり頭をぶつけたりしたときを例にとってみても良いだろう。ときたま階段から落ちたり壁に頭をぶつけたりするのだが、そのたびに私は心配になる。蜘蛛膜下出血になっていやしないか、と。<br>
　<br>
　これは普通のことなのだろうか？<br>
　もしかすると普通のことなのかもしれない。みんな、「死ぬのが怖いんだ」なんて他人に言うのは恥ずかしいから言わないだけで。ちなみに私は今恥ずかしいぞ。<br>
<br>
　なぜこんなことを書いたかというと、明日高速に長時間乗るわけで、怖い、死ぬかもしれない、と思っている。<br>
　確率的には飛行機で死ぬ可能性よりも地面の上で死ぬ可能性が高いが、それでも飛行機の事故は怖い、と思っている人がいる。もちろんサンプル数が圧倒的に異なるわけで、統計的にあてになるデータではないが、空の上での死を恐れるのであれば、土の上での死も恐れるべきなのだ。<br>
<br>
　そういうことだ、と書こうとしたが、ぜんぜんまとまっていないことに気付いた。<br>
　つまりはそういうことなのだ。まとまっていないのだ。<br>
<br>
　そういえば熊の木彫りの置物買っていないな、と気付いた。売っていなかったのだ。ポストカードも買いたかったのだが、売っていなかった。<br>
<br>
<blockquote>　久しぶりにトリップしてますね。死生観について語り出しました。<br>
　まぁ船の事故というものもままあるものですし、今語らずしていつ語る、という気分だったのでしょう。そう思いたい。</blockquote><br>
<br>
09/18<br>
　09：10<br>
　継続走行距離　13604.5km<br>
　旅路走行距離　696.1+226.0km<br>
　区間走行距離　13.9km<br>
<br>
　起床は8時。<br>
　昨日はホテルに着くまで波乱万丈だった。港からホテルに行くまでの間に三度も人に道を尋ねた。なんと見つけにくいことか、青森のルートイン。<br>
　しかも吃驚、なんとテレビがアナログだ。青森、田舎だぜ。<br>
<br>
　今日は高速に乗る。<br>
　約400km、頑張って行こう。<br>
　今日も安全でありますように。<br>
<br>
<blockquote>　おぉ、日記っぽい！</blockquote><br>
<br>
　11：41<br>
　継続走行距離　13702.2km<br>
　旅路走行距離　793.8+226.0km<br>
　区間走行距離　97.7km<br>
<br>
　鹿角あたりのSAにて昼食兼休憩。<br>
　青森ICからはほぼ百キロほと進んだようだ。サービスエリア1km程度手前で仙台まで260kmの看板があった。<br>
　看板といえば、岩手だか秋田だかだっただろうか、まだ北へ向かっていたころに「新潟まで○○km」の看板を見た。なんで新潟？　普通東京だろうに。<br>
　もう一つ看板といえば、ついさっきだが「動物に注意」という看板を見た。しかしその看板が……、なんというか、ありがちな黄色地に黒いシルエットが描かれているのだが、なんの動物なのかはわからない。ロールシャッハテストのようだ。私にはトカゲに見えた。<br>
<br>
　さて、今はだいぶ治ったが、バイクから降りた直後はなんというか……、こう、洩らしたのかと思った。尻がなんか変な感覚で、遅れてしびれているのと気付いた。やはり高速は苦労する。<br>
　トンネルは怖いな、と走っている間に思ったので、トンネルについてちょっと書きたい。<br>
　形状にもよるが、普通トンネル内に太陽はあたらない。<br>
　地球への太陽放射は地表面等でアルベドで反射され、残った分が大気や地表面を暖める。寒暖が生じることで気圧差が生じる。気圧差がないと気圧傾度力が生じないため、風が起こらない。<br>
　トンネルの中には風がない。おかげで走りやすいことは走りやすい。<br>
　しかし寒い。狭い。暗い。<br>
　トンネル内は地下世界と言っても良い。明るい場所とは断絶されており、恐怖がある。<br>
　しばしば真夏の怪談で「トンネルを出ると……」というものがあるが、やはりトンネルとはそういったものだろう。寒い。<br>
<br>
　さて、またまとまらない話だったが頑張ろう。<br>
<br>
<blockquote>　何が書きたかったんでしょう。改めて読むとさっぱりわけがわかりません。<br>
　おそらくトンネルが閉鎖空間であること、環境のバイクへの影響等について語りたかったのだと思いますが、頭がハイでさっぱりついていけてません。</blockquote><br>
<br>
　15：05<br>
　継続走行距離　13881.2km<br>
　旅路走行距離　979.8+226.0km<br>
　区間走行距離　186.0km<br>
<br>
　前沢PA。青森から数えて四つ目にとまったPAになるだろうか。<br>
　身体ががたがただが、バイクのほうもがたがただ。左のミラーが緩い。ヘッドライトが汚い。ヘルメットも、なんだか臭い気がする。いかんな、これ。<br>
　それとさっきのPA出る際になぜかエンジンがかからず、おいおいこんなところで故障か、と思ったらキルスイッチが入っていた。なんで？<br>
<br>
　今テレビでやっていたんのだが、秋田の道の駅いかほでご当地ヒーローが交通安全を呼びかけていたらしい。ああ、行きたかったなぁ。格好良いよ、あれ。<br>
<br>
　仙台に近づくたび、もう少し長く北にいれば良かったと思う。<br>
<br>
　高速でということで、最初は味気ないんじゃないかと思っていたが、意外とそうでもなかった。山の中を直線的道路が走り、とりあえず景色は綺麗ではある。その景色を楽しめるかどうかは別であるが。<br>
　しかし風が厳しい。バイクは構造上、高速での横風に弱い。<br>
　車は通常速度が上がるとダウンフォースが発生し、重心が下がって安定する。しかしバイクの場合、バイク上をとおる風がライダーによって妨害され、小さな渦が発生するばかりで滑らかに風が流れず、ダウンフォースはほとんど発生しない。もちろんジャイロ効果で安定を保っているのだから復元力は増すが、それは横風対策にはならないのだ（力が鉛直方向には増えないので）。<br>
<br>
　さて、あとわずかだ。<br>
<br>
<blockquote>　微妙に強がっているような、そうではないような。<br>
　超神ネイガーは非常に気になるヒーローです。</blockquote><br>
<br>
　17：09<br>
　継続走行距離　13963.1km<br>
　旅路走行距離　1060.8+226.0km<br>
　区間走行距離　81.9km<br>
<br>
　ただいま。<br>
　おつかれさま。<br>
　ごはん。<br>
<br>
<blockquote>　帰宅直後。</blockquote><br>
<br>
 21：53<br>
　継続走行距離　13963.1km<br>
　旅路走行距離　1060.0+226.0km<br>
　区間走行距離　0km<br>
<br>
　空が紫色だと北海道を思い出す。<br>
　<br>
　帰ってきて、大学生協でご飯食べて、コンタクト外して、荷物を整理していたら電話がかかってきて、そのときなぜか、話しながら涙ぐんでしまった。別に会話が感動的だったわけでも、会いたいと思っていた相手から電話がかかってきたわけでもない。<br>
　旅が懐かしかったのだ。<br>
<br>
　おそらくこの旅は、旅慣れている人間からすれば味噌っかすのような旅に違いない。特に苦難苦境があったわけではない。出会いもないし、別れもなかった。野宿もせずにホテルに泊まれた。ご飯も食べられた。まったく苦労しなかった、と言っても良いだろう。<br>
　でも旅の最中は精一杯生きている気がした。<br>
　全力で生きている気がしたのだ。<br>
　今は違う。<br>
　生きている気がしない。<br>
　では、どうなったのか。<br>
　たぶん、死んでしまったのだ。<br>
　旅は人生のようなものだ、ということは既に書いた。人生が終わるということは、死ぬということではないだろうか。<br>
<br>
　今思うことは、もう一度生きてみたい。<br>
　何度も生きてみたい、ということだ。<br>
<br>
　さて、一つだけ書き忘れたことがある。レポートを書き始めた当初から思っていたことで、しかし書くことがかなわなかったことだ。青函トンネルを見て、私はあることを言いたかった。しかし言えなかった。知ってのとおり、青函トンネルは車やバイクは通行できないと聞いて、気力を使い果たしてしまったからだ。<br>
　私はこう言いたかったのだ。<br>
　青函トンネルの眺めって、さすがに盛観だなぁ、と。]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10852546.html">
    <title>
			year/3/04
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10852546.html</link>
    <description>４  　ヘイムダル。 　彼は神々の門番である。  　いつもはアースガルドとミッドガルドを繋ぐ虹の架け橋、ビフレストの近くの小屋に居を構え、独りで暮らしていることをロキは知っている。 　彼は神々の門番である、とオーディンは言っていた。しかし彼はアー...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-10-08T22:27:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>４</div><br>
<br>
　<b>ヘイムダル</b>。<br>
　彼は<b>神々の門番</b>である。<br>
<br>
　いつもはアースガルドとミッドガルドを繋ぐ虹の架け橋、ビフレストの近くの小屋に居を構え、独りで暮らしていることをロキは知っている。<br>
　<b>彼は神々の門番である</b>、とオーディンは言っていた。しかし彼はアース神族とヴァン神族の戦いにおいても、今回の巨人族との戦いにおいても、ほとんどアース神族に手を貸そうとしなかった。彼が戦ったのは自分の生活範囲の近くか、ミッドガルドの人間たちの領域の近くでのみ。門番としての役割を果たしているとは思えない。<b><font color=blue>そもそも神々とは誰を指すのか？</font></b>　アース神族のことなのか、ヴァン神族のことなのか。それもわからない。彼自身の来出さえも。<br>
　しかし彼の力は本物である。彼は<b><font color=blue>千里眼</font></b>の能力をもって世界のほとんどを見通し、<b><font color=blue>数リーグ先の小さな物音さえも聞き分ける</font></b>。眠らず、食事もほとんどしない。長い時を生きているが、時たま姿を消すよくわからない人物。アース神族からは嫌われていることが多いが、彼の能力を見込んでか上層部の一部、バルドルなどは彼に接近しようとしている。<br>
　今回、トールはヘイムダルのその千里眼の能力に頼ろうとしているのだろう。確かに彼の能力ならば簡単にミョルニルを探すことができるかもしれない。<br>
　問題はアース神の味方ではないヘイムダルが力を貸してくれるかどうかわからないこと、ヘイムダルにも見える範囲がまばらにあったり見えていない時間帯があること、そもそもその前にヘイムダルを探さなければならないことだ。<br>
　ロキが彼を最後に見たのはスリュムヘイム攻略戦のときである。ロキはその戦いで負傷してしまったこともあって、そこからは記憶が飛んでいる。トールもそうだろう。ヘイムダルが何処へ行ったのかは他のアース神に訊いたほうが早いかもしれない。<br>
　まずは手分けして（ミョルニルの紛失は不安を煽る可能性があるので、できるだけ秘密にしておきつつ）ヘイムダルを見たかどうか聞き込みをすることに決まった。<br>
<br>
　トールと別れ、ロキはシアチの館の近くの木に停まって溜め息をついた。トールは顔が広い。聞き込みも簡単にできるだろうが、ロキはそうはいかない。ほとんどのアース神からは嫌われている。もちろん裏切った対象の巨人族からも同様だ。話を聞ける相手なんてほとんどいない。<br>
　改めてそんなことを思うと、なんだか淋しい気分になる。<br>
　これまで自分の気持ちに正直に生きてきたつもりだ。もちろんこれまでの人生に悔いなんてない。<br>
<br>
　<b>でももう少し平凡な人生を送っていれば、何も知らないでいられたら、どんなに良かっただろうか。</b><br>
　そう思わずにはいられないこともある。<br>
　ロキは両手を絡めて背の上で伸ばす。木の枝に足を絡め、後ろに回転しながら木から下りる。<br>
　着地してもう一度伸び。<br>
　今更後悔しても何にもならない。ロキは翼を広げる。<br>
<br>
　ロキが何かを尋ねて正直に答えてくれそうな人物は少ないが、皆無というわけではない。ゼロではないということは、それだけで心強い。<br>
　<b>フレイ</b>はシアチの館の医務室（として割り当てられた部屋）にいるはずである。フレイとフルングニルの決闘の際にトールをそこから連れ出したこともあって、ロキが表からそこに入ろうとすると警戒されてしまうはずだ。フレイの部屋はわかっている。行儀が悪いとは思ったが、窓からフレイの病室へと入ることにした。<br>
　ロキの翼は空を飛ぶだけであれば動かす必要はまったくない。空気抵抗をできるだけ減らせるように折り畳み、<b>ルーン</b>で重力方向を変化させて飛ぶ。翼を動かす必要があるのは方向転換のときだけなので、狭い場所でも簡単に飛べる。<br>
　病室の窓に辿り着いたロキは、思わずそこから落ちそうになった。<br>
<br>
　フレイは女性と顔を近づけ、キスをしていた。<br>
<br>
　ベッドでフレイは寝転んだまま、女性を抱き寄せていた。接吻しながらも手は動いている。絡まりあっている時間が長い。ロキは動くこともできずにその光景を凝視していた。<br>
　ベッドのフレイと目が合う。絡み合っている二人の身体が離れる。<br>
<big><b>「ロキ？」</b></big><br>
　フレイの驚いたような声におそらく彼以上に驚いたロキは後ずさりかけ、そのまま窓から落ちた。<br>
　重力低減。<br>
　地面に軟着陸。<br>
<br>
「<b>ご、ごめんなさい……</b>」<br>
　病室まで飛んでいき、気を取り直して本来の用件を果たそうと思ったが、気を取り直してとはいっても先ほど見た光景がそう簡単に忘れられるはずもなく、自分がそうなのだから相手も見られたということをいくらか重くは感じているはずで、まずはそのことからフォローを入れたほうが良いのかもしれない。<br>
　そのように考えたロキが最終的に辿り着いたのは謝罪の言葉だった。<br>
「<b>吃驚したな</b>」とフレイは笑う。彼は身体の部分部分に包帯が巻かれており顔色も良くはなかったが、病室のベッドから身を起こせる程度には元気そうだった。キスまでしていたのだ、さぞかし元気なことだろう。<br>
　彼とキスしていた女性のほうは顔を<b><font color=red>真っ赤にしていた</font></b>。普通はこういう反応だろう。キスしているところを見られてまったく気にしていないフレイのほうがおかしい。<br>
（それにしても………）<br>
　その女性は美しかった。背後が透けて見えるようなブロンド、骨灰を溶かしたような滑らかな肌、そして左右で色の違う瞳。<br>
　巨人族だな、とロキは容貌を見て判断する。同時に彼が以前話していたゲルドという女性であるということにも気付く。<br>
「あの、本当にごめんなさい」<br>
　ゲルドの反応がないのを見て、ロキはもう一度謝った。<br>
「あ、いえ………」ゲルドは白い膚を真っ赤に染める。「私こそ………」<br>
「いやぁ、良いねぇ、こういう光景は」とフレイ。「美女二人が取り合っているみたいで」<br>
　ゲルドが無言でフレイの顔に手を伸ばしかけ、しかしロキがいることを思い出してか手を引っ込める。きっと彼の頬を抓ろうとでもしたに違いない。<br>
「それでなんの用なんだ、ロキ？」手から逃れようとしつつフレイが尋ねてきた。<br>
　ミョルニルのことはできるだけ秘密にしておきたい話だった。アース神族に対しては不安を煽らないようにだが、巨人族に対しては現在巨人殺しの象徴が存在しないことを悟られないようにするため。<br>
　ゲルドは巨人族だ。<br>
　フレイの恋人かもしれない。恋人だろう。しかし巨人族で、ミョルニルの紛失を知ればどう動くかはわからない。彼女の前でできる話ではない。<br>
「ゲルド、悪いがちょっと席を外してくれないか？」フレイはロキの迷いを受け取ったのか、ゲルドに対してそう声をかけた。<br>
　ゲルドはしばらくフレイを見つめ、「わかった」と言って、部屋を出て行く。<br>
「さて、なんだろう？」フレイはロキに向き直る。「<b>愛の告白なら残念ながら間に合っている</b>」<br>
「あのひとがゲルドさん？」<br>
「あれ、知ってるのか？」<br>
「前にフレイが言ってたよ」<br>
「そうだったかな………」顎を撫でるフレイ。「で、本題はなにかな？　彼女がいてはしにくい話があったんだろう？」<br>
「うん」ロキは頷く。「実は………」<br>
　ロキはミョルニルがなくなり、トールとともに探していることを話した。<br>
　途中、口を半開きにし、信じられないという表情になった。<br>
「<b>凄いな</b>、それは………」とフレイ。<br>
「なにが？」<br>
「自分の武器がなくなったことに一月も気付かないこと」フレイは息を吐いてみせる。「信じられん」<br>
「まぁ、ほら、トール<b>はおおらかな性格</b>だから………」ロキはフォローしようとするが、フレイの言うとおりであるため言葉が続かない。「えっと、それでヘイムダルを探しているんだけど……、フレイ、知らない？」<br>
「千里眼に頼る気か。ヘイムダルね………」フレイは少し視線を上げる。「そういえばここを落とすときの戦いのときから見てないな。アースガルドに帰ったんじゃないか？」<br>
「やっぱりそうなのかなぁ………」<br>
「それにもしあいつを見つけたとしても、ミョルニル探しには協力してくれないと思う」フレイは呟くように言う。「<b>親父が前にあいつに関して話してたよ</b>」<br>
　フレイの父親というと、ヴァン神族の指導者<b><font color=green>ニヨルド</font></b>だ。オーディンと同様、指導者の立場でありながら、現在行方の知れない人物の一人である。<br>
「そうかもしれないけど……、頼んでみないとわからないよ」<br>
「そうだな」フレイは頷いてくれた。「残念ながら俺は協力できないが、頑張れよ」<br>
「ありがとう」ロキは窓に寄った。「フレイ、傷が治るのっていつごろ？」<br>
「自由に動けるようになるまでは一ヶ月くらいはかかるらしい」フレイは肩を竦める。「完治はもっと先だってさ。やってられん」<br>
「頑張ったもんね」ロキは微笑んでみせた。「じゃあ、フレイもしっかり傷、治してね」<br>
<br>
「<big><b>ロキ</b></big>」<br>
　フレイは真剣な表情で、窓から飛び立ちかけるロキに声をかけてきた。ロキは窓の縁に手をかけ、フレイを振り返る。<br>
「俺、怪我が治ったらゲルドと結婚するつもりなんだ」<br>
　ロキは身体の奥から底冷えするような感情が訪れるのを感じた。足が僅かに震え、体重の大部分を窓枠に預ける。<br>
「そう……」自分では声が震えているように聞こえた。「やっぱり」<br>
「まぁさっきの見たら、やっぱりって感じだよな」フレイは笑う。「怪我で戦線復帰できない間、アースガルドで養生することになると思う。その間に式を挙げるよ。良かったら来てくれ」<br>
「うん」ロキは翼を広げる。「きっと行くよ」<br>
　空は明るい。<br>
　心は暗かった。<br>
<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
<blockquote>　ロキは言い返しました。「おまえはギュミルの娘を黄金で買った者だ。おまけに、おまえの剣まで売り渡してしまった。かわいそうな愚か者め。ムスペルの息子たちが<暗い森>を通ってやって来る時、おまえは彼らを素手で迎えなければならんだろうよ」</blockquote><br>
<small><div align=right>（三十　ロキの口論　より）</div><br>
<br>
<u><b>●フレイ</b></u><br>
　ヴァン神族の最重要神のひとりであるフレイがラグナレクで命を落とすことは、以前に述べた。<br>
　ラグナレクで死が訪れること自体は決して珍しいことではない。力の滅亡とも呼ばれる神々と巨人の争いは世界を巻き込み、昼や夜をも食い殺し、世界は燃え、水中に没する。生き残るもののほうは珍しいくらいなのだ。トール、ロキ、チュール、オーディン、ヘイムダル、フェンリル、ヨルムンガンド……、それまで数々の物語を綴ってきたものたちが死に絶える。フレイそのひとりだ。<br>
　しかしながらフレイの死は他の神々や化物たちの死とは少々趣が異なる。トールは何度も戦った好敵手であるヨルムンガンドと戦い相打ちになり、オーディンは自分が苦しめた狼によって食い殺される。ロキとヘイムダルは互いの怨恨を剣にして突き合う。<br>
　フレイは違う。彼が戦うことになったのは炎の国ムスペルヘイムの巨人、スルトである。ラグナレクの終わりに世界を焼き尽くす巨人とフレイは戦い、そして負けたのだ。<br>
　だが彼は勝っていてもおかしくなかった。世界を焼き尽くす巨人相手に彼が勝利していたのならば、ラグナレクの結末は変わっていたかもしれない。<br>
　彼は自分の魔法の剣を手放していたのだ。愛する女、ゲルトを妻として迎え入れるために。そのために彼は鹿の角を携えて出陣するものの、スルトの燃え盛る魔刀レーヴァンティンを受けきることができず、死ぬ。<br>
　最後の瞬間、彼は後悔しただろうか。自分の力を手放してまで女を愛したことを。それはわからない。<br>
　しかし彼が真実を知っていたのならば、さぞ後悔していたことだろう。</small><br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10847381.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10862446.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10694602.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u><br>
<br>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/c/10847384.html">
    <title>
			ygg/1/04
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/c/10847384.html</link>
    <description>４  　キャプテンの放った弾丸は、寸分の狂いもなく出現した彼女を襲った動物の身体を捉えていた。火薬発射式の拳銃特有の轟音が響き渡るとの同時に、濃紺の毛皮に穴が開き、血液が噴出した。 　血は赤い。まったく地球の生物と同じにしか見えない、とドクター...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-09-29T01:21:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>４</div><br>
<br>
　<b>キャプテン</b>の放った弾丸は、寸分の狂いもなく出現した彼女を襲った動物の身体を捉えていた。火薬発射式の拳銃特有の轟音が響き渡るとの同時に、濃紺の毛皮に穴が開き、<b><font color=red>血液が噴出した</font></b>。<br>
　血は赤い。<b>まったく地球の生物と同じにしか見えない</b>、と<b>ドクター</b>は思った。<br>
　その動物は体長40cmほどの短い体毛を持った、土竜のような生き物だった。両手には長さ5cmほどの爪が見えており、そこだけが純白で特徴的だ。眼球は見えない。退化しているのかもしれない。<br>
　身構えるノルン・セカンド・ナンバーツーの乗員の中、ドクターはキャプテンの傍に駆け寄った。彼女は頭部から出血し、仰向けに倒れていた。<br>
　ドクターは彼女の傍に跪き、まず彼女の手に握られたままの拳銃を手から外される。ドクターの国には拳銃を所持するのは法律で禁止されていた。他の国へ行っても、触ったことや見たことすらなかった。SETIプロジェクトでは銃の訓練があるのかもしれないが、ドクターは二次公募で推薦された人間だ、SETIプロジェクトの訓練課程は一部分しか受けていない。だから今回が初めての銃との接触だった。<br>
　銃は冷たく重かったが、キャプテンの手は熱く軽かった。彼女は気を失っている。出血は額からで、出血量は比較的多かったが、傷つけられた血管そのものは静脈だ。そこまで大事ではない。頭を打ったことによって内出血が懸念されるが、それはここでは確かめようがない。<br>
　呼吸は正常、心臓も動いている。意識がないだけだ。<br>
「キャプ。<b>キャプテン！　<big>セシル！</big></b>　聞こえるか」<br>
　ドクターはまずキャプテンの耳元で大声で呼びかける。しかし彼女の反応はなかった。完全に気を失っている。<br>
　ドクターは振り返り、他の乗員らと紺色の獣の様子を見る。<b>生物学者</b>と<b>サイバネティシスト</b>は動物の様子を見に行っており、<b>技師</b>だけがドクターの傍でキャプテンの様子を見守っていた。<br>
「危ないですか？」と技師が眉根を寄せた表情。<br>
「いや、大丈夫。意識がないだけだ」ドクターは簡単に止血を行いながら正直に答える。「ただ頭部の傷だから、どうなるかわからない。早く外に出よう。二人を呼んできてくれ。さっきの動物を調べるなら、死体を持って帰るようにって。大声では呼ばないように。さっきみたいな動物が出てこないとも限らない」<br>
　技師は頷き、二人の乗員を呼びに行く。<br>
　その間にドクターはキャプテンの止血を終えていた。傷口は鋭かった。跡が残るかどうかはわからないが、残ったとしても目立つものにはならないだろう。ドクターは少しだけほっとした。<br>
「さっきの動物、死んでたね」と戻ってきた生物学者。技師と一緒に動物の死体を持っている。技師の表情は非常に厭そうだ。<br>
「すいません」とサイバネティシスト。「セシルは無事ですか？」<br>
「たぶん無事」ドクターは答える。「でもここじゃあ治療はできない。道具がないけど、できるだけ頭を動かさないように運んでくれないか？」<br>
「了解」<br>
　サイバネティシストがセシルの身体を背負う。ドクターは彼女の拳銃を拾った。<br>
　周囲の動きに出来る限り注意しながら、迷宮のエレベータへと駆け足で向かう。<br>
　最初の迷宮探索はこうして幕を閉じた。<br>
<br>
　迷宮から出ても、迷宮内と同じく太陽の光が照っている。エトリア時間で正午といったところだろう。<br>
　エトリアの医療技術がどれほどのものなのかわからないこと、エトリア人と地球人で実はドクターや生物学者もわかっていない身体的差異がある可能性を考えて、キャプテンの治療は宿でドクターが行うことになった。<br>
　金鹿の酒場の店主、サクヤによって紹介された宿、<b>長鳴鶏</b>に戻ってくる。キャプテンが怪我をしてからまだ30分と経っていない。まだ傷口は新しい。<br>
「<b>ど、どうしたんですか？</b>」<br>
　と宿の受付である若い男、<b>アレイ</b>が出血するキャプテンを見止めて動揺する。<br>
「怪我をした。たいした傷じゃないから大丈夫だ」ドクターは答え、彼女を女性の部屋へ。<br>
　顔の怪我ということで可能な限り完璧に処置をしてやりたいことから、他の乗員には出来る限り出て行って欲しかったが、生物学者は持ち帰ってきた動物を調べるということで男性部屋へ、サイバネティシストもその手伝いに行ってしまった。技師はすることがなさそうだったが、廊下へと出てもらっておく。<br>
　処置自体はすぐに済んだ。小型PET装置による検査の結果、脳に傷はなかった。表面の傷は四針縫ったが傷口はいつもは髪で隠れてしまう位置であり、傷口自体も目立たないはずだ。若い女性であるキャプテンが気を落とすことのないように願いたい。<br>
<br>
　手術器具や保護シートを洗うために部屋を出ると、技師が膝を折り曲げて腕を抱え込む姿勢で廊下に座り込んでいた。ドクターが出てくると顔を上げる。<br>
「どうでした？」<br>
「もう終わったから、見に行って良いよ」<br>
　ドクターがそう言うと、技師はぱっと立ち上がって部屋の中に入っていった。<br>
　ドクターと技師はSETIプロジェクト以前からの知り合いである。彼女は若い頃からSETIプロジェクトに関わっているため、同世代との付き合いが少ない。そのため同じ世代である同性のキャプテンの存在を嬉しく感じているのだろう。あまりそうは見えないが。<br>
　宿の外で器材の洗浄を行い、干す。一度ヴェルダンディに戻って洗い直しと紫外線照射を行わなければならないだろうが、とりあえず保存しておく分にはこれで十分である。<br>
　外から戻ると、受付にいたアレイがドクターを見止めて走ってきた。<br>
「彼女、大丈夫でした？」<br>
<br>
<blockquote><img src="http://burikino.noblog.net/image/10210404.png"><br>
●アレイ<br>
　長鳴鶏の宿の受付。</blockquote><br>
<br>
「もう手術は終わりました。お騒がせしてすいません。あ、部屋は汚していませんので、大丈夫です」ドクターは言った。<br>
「なにがあったんで？」<br>
「世界樹の迷宮で、変な生き物に襲われてね」<br>
　土竜みたいなやつ、と言い掛けて、土竜という単語がヴェルダンディの翻訳装置できちんと翻訳されるかどうか自信がなくなり、言葉を止める。<br>
「<u>ひっかきモグラ</u>ですね。地下一階ですか。一階は死亡率が一番高いんですよ」<br>
（ひっかきモグラね……）<br>
　どうも翻訳されてしまうといまいち恐怖感が伝わらないな、とドクターは思った。固有名詞をそれと認識せず、名詞まで翻訳してしまっているせいだ。翻訳速度を優先して装置を作ってもらったが、これは改良の余地がある、とドクターはどうでも良いことを考えた。<br>
「あの土竜が危険なんですか？」モグラという単語が翻訳されることが確認できたため、ドクターはそう尋ねる。<br>
「いや……、そういうわけじゃないと思うんですよね。ひっかきモグラに出会って生きて戻ってきた人はたくさんいますし。まだ未知の生物がいるんじゃないかと。あそこじゃ、見慣れないところには近づかないほうが良いです」<br>
「なるほど、ありがとう」<br>
　ドクターはそう言って二階、キャプテンのいる女性部屋へと戻る。<br>
<br>
　キャプテンはすやすやと寝息を立てて寝入っており、傍には技師だけではなくてサイバネティシストもいた。<br>
「終わった……、わけないか」ドクターは生物学者が行っているであろう、土竜の解剖について言った。彼女の探究心がこんなに短い時間で終わるはずがない。<br>
「力仕事は終わったんで、開放してもらったんです」とサイバネティシスト。「セシルは？」<br>
「大丈夫。頭部の傷は表面だけだよ。脳にも異常はない。今は、どうも疲労で眠っている状態みたいだ」<br>
「<b>良かった………</b>」<br>
　サイバネティシストともども技師も息を吐いた。彼女もドクターの口から改めて彼女の無事を聞くことができて、緊張感が抜けたらしい。<br>
　しかし逆にドクターはこれからのことについて緊張していた。<br>
　キャプテンは若く、未熟だ。しかし彼女はキャプテンであった。全員の纏め役が今、そしてもしかすると今後、使い物にならなくなるかもしれないのだ。<br>
　生物学者と相談せねばなるまい。]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/a/10847381.html">
    <title>
			year/3/03
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/a/10847381.html</link>
    <description>３  　ミョルニルはもともとトールの持ち物だったわけではない。アース神族の宝物であったが、誰も使いこなせずにいたところをトールが使ってみせ、それからはトールの持ち物となったのだ。オーディンはトールがミョルニルを持つことに積極的な賛成の姿勢を見...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-09-29T01:16:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>３</div><br>
<br>
　<b>ミョルニル</b>はもともとトールの持ち物だったわけではない。アース神族の宝物であったが、誰も使いこなせずにいたところをトールが使ってみせ、それからはトールの持ち物となったのだ。オーディンはトールがミョルニルを持つことに積極的な賛成の姿勢を見せたわけではないが、他の神々が持つくらいならば、としぶしぶ承諾していたことをロキは知っている。<br>
<br>
　トールは間違いなく<b>アース神族軍最強の戦士</b>であるが、その理由がミョルニルにあると思っている神々もアース神の中には少なくない。それは間違いで、ミョルニルがなくともトールは強い。<br>
　そもそもミョルニルとはどんなものかというと、単純にいえば<b>ルーン</b>を変換し、あらかじめ設定された<b>魔術</b>にしたがって動作する祭具なのだ。もともとは武器ですらない。<br>
　トールは自分のルーンをミョルニルに込め、その一部を推進力に変換している。一定の衝撃が加わるとオーディンによって描かれた術式が作動し、蓄えたルーンを力学的なルーンに変換して爆発を起こしたり、電磁気的なルーンに変換して雷を落としている。<br>
　つまり最初に込めるだけのルーンがなければミョルニルを投げつけることすら困難であり、投げることができたとしてもルーンが小さければ普通のハンマーと同じような威力しか期待できないのだ。たとえばチュールなどがミョルニルを使おうとしても、それはできないだろう。トールには可能で、彼はミョルニルの威力を最大限に引き出している。彼はその動作原理をまったく知らないだろうが。<br>
　そういうわけで、ミョルニルがなくてもトールがアース神賊軍最強の戦士であることは変わらない。しかしそれは彼が強いという事実が変わらないだけで、戦力としてみると明らかに弱体化はする。今までトールはミョルニルを主に対多数の遠距離兵器として用いてきたが、それが使えなくなると正面からのぶつかりあいしかなくなる。被害が増えることは目に見えている。またミョルニルの過大評価によって、それが消失したことによる士気の低下もあるだろう。<br>
　ミョルニルは確かにアース神族軍の生命線であった。そしてそれが、ない。トールの手から失われた。<br>
<br>
　とにかくロキは、まず第一に怒れるトールを宥めた。彼は慌てるわけでも嘆くわけでもなく、ただひたすらに<b><font color=red>怒って</font></b>いた。<b>凄い</b>、とロキは畏敬の念さえ抱いた。トールは今後の戦いに対してまったく不安感を抱いたり、自分の失敗を嘆き悲しんだりしたりせず、ミョルニルを盗んだ相手に対してただ<b><font color=red>怒り狂っている</font></b>のだ。そうまで感情を集中できるのが凄い。<br>
　トールは怒りの沸点が比較的低い。しかし怒りが長く続くということはない。心の比熱が小さいのだろう、すぐに冷静さを取り戻してくれた。<br>
<br>
「<b>いつ</b>なくなったの？」<br>
　倉庫を出てスリュムヘイムの館へと向かいながら、ロキは尋ねた。<br>
「それが<b>わからん</b>のだよなぁ……」とトール。「ほら、この前フレイがフルングニルってやつと決闘したとき、お前が外に連れ出しただろう？」<br>
　フレイとフルングニルの決闘は<b>一月も前</b>のことである。あのときはロキはフレイが決闘で負けてしまうと思い、トールに助けてもらおうとした。しかし病室から運び出したトールはミョルニルを持ってき忘れた、と言ったのだ。<br>
「え、あれ、一ヶ月くらい前だよ………」ロキは愕然とする。「あのときにもうなかったの？」<br>
「なかったかもしれん。というか、よくよく考えるとスリュムヘイムに入ってから見てないんだよなぁ。シアチとの戦いで、ほら、<b>変な泥のでかい生き物</b>が出てきたろ？　あれに投げつけたときが最後」<br>
「ずっと前じゃない………」ロキは息をついた。「よくそんなに放っておけたねぇ」<br>
「いや、回収したって聞いたんだよな。誰に訊いたかは忘れたが、病室に来たやつが誰かそんなこと言っていた気がした。全快したんで返してもらおうと思っていろんなとこ回ったんだが、どこも見つからなくてなぁ………」<br>
　一大事だというのに、トールの口調には微塵も不安が感じられない。<br>
　ひとまずロキはトールをスリュムヘイム駐屯中の軍部司令部に報告に行かせる。今の駐屯軍部のトップといえば、<b>バルドル</b>である。<br>
「<b><big>なんだって？</big></b>」とバルドルは言い、すぐに自分の言葉を撤回した。「いや……、いい、なんだ、ミョルニルがなくなっただ？　そんなことがあるはずないだろう。お前、お前ら、あれがどれだけ大事なものなのかわかっているのか？　冗談か。お前が戦闘不能になって、決闘が終わってフレイが戦えなくなって、これからどうするのか忙しく考えているときに、お前はなんだ、さらに面倒ごとを持ち込むのか」<br>
「俺が復活したじゃないか」胸を張るトール。<br>
「そうだ、それは目出度い。だが所詮ミョルニルがなくてはお前も兵士の一人でしかない。一度に一人以上の相手とは戦えないだろう。ミョルニルで一気に敵の砦を制圧するという作戦も取れない。数で劣る我々の軍が、圧倒的に不利になる」<br>
　バルドルの言い方は傲慢だ、とロキはスリュムヘイムのシアチの館内、駐屯軍仮司令部の部屋の隅で二人の話を聞いていた。ロキは元が巨人族であるため、本来はこのような場所に出入りすることも許されないのであるが、トールの付き添いということで入ることが許可されていた。しかし話には入れない。発言しても、たぶんバルドルには無視される。<br>
「探すよ、とりあえず」とトール。「まぁ、その辺。近くに行けば<b>ルーン</b>でなんとなくわかるだろうし」<br>
　ミョルニルは特殊な道具だ。トールには詳しいメカニズムはわかっていないだろうが、元所有者であるトールが近寄ればわかるというのは正しいだろう。魔法で作られた槌なのだ。さまざまな能力がある。<br>
「何をしても良い。とにかくミョルニルを見つけろ。良いな。頼むぞ。本当に。絶対見つけろ。最優先事項だ。何しても良いから、ミョルニルを探せ。わかっているか。大丈夫か。わかったらさっさと行け」バルドルは何度も念を押していて、それから手でトールを追い払う姿勢を見せた。<br>
　ロキはトールの後ろについて部屋を出る。<br>
「どうするの？」ロキは言う。結局最後までバルドルには無視されたままだったな、と思いつつ。<br>
「まぁ、探すか。探しても良いという許可も出たことだし」<br>
　トールの返答は楽観的なものだった。確かにバルドルの言葉は、ある意味ではミョルニルを見つけ出すためならあらゆる行動を許可するという意味だ。自分ならこうは思えないだろうな、と思ってトールを見上げるロキであった。<br>
<br>
「で、どこから探すの？」石段を降りながらロキは尋ねる。<br>
　この階段は高台にあるシアチの屋敷からスリュムヘイムの町へと続く道である。<br>
　ロキとしては今は巨人族を裏切った身、巨人族が多くいる町へは行きたくはない。ロキの存在を知っている巨人族がどれだけいるかは知らないが、背中から生えている巨大な羽根は厭でも目立つ。<br>
「<b>なんだ、手伝ってくれるのか</b>」と意外そうな表情でトール。<br>
「まぁね。一大事だし」<br>
「そりゃ助かる。飛んで行ってくれれば、移動は楽だしな」<br>
　トールは気楽に言ったつもりだろうが、ロキとしては頼りにしてもらって嬉しい。自然と笑みが零れてしまう。<br>
　しかしトールは重いので、実を言うとあまり運びたくはない。今日は鎧を身に着けてはいないのでなんとか運べる重量だろうが、それでも重労働であることには変わりはない。<br>
「うーん……、もういろいろと探したんだよなぁ。実は。武器倉庫は探した、シアチの館の中も探した、街の質屋でも見ていくか？　他にありそうなところが思い当たらない」トールは空を見つめまま、危なげなく石段を降りていく。「いや……、とりあえず<b>ヘイムダル</b>のところに行ってみるか」<br>
<br>
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  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/b/10839186.html">
    <title>
			voice/2/18
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    <description>１８  　目の前で何が起こっているのかはわかっていた。 　長いこと気を失っていたような気がする。しかし今は完全に覚醒していた。身体中の痛み、感覚を失ったはずの右足さえもが痛みを感じさせていた。  　今の状況を見れば、何が起こったのかはわかる。目の...</description>
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    <dc:date>2009-09-13T21:04:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１８</div><br>
<br>
　目の前で何が起こっているのかはわかっていた。<br>
　長いこと気を失っていたような気がする。しかし今は完全に覚醒していた。身体中の痛み、感覚を失ったはずの右足さえもが痛みを感じさせていた。<br>
<br>
　今の状況を見れば、何が起こったのかはわかる。目の前ではユーリヤが嬲られていた。彼女を心身ともに痛めつけているのは二人の男だった。<br>
　彼らがルツを誘拐した盗賊たちであり、ユーリヤが彼を助けに来たこと。しかし逆に、もしかするとルツを盾に取られて捕らえられてしまったこと。ユーリヤが泣いていること。すべてがわかった。<br>
　ルツの両手は後ろ手で縛られていたが、奇跡的に両足は自由だった。それは彼を誘拐した人物がルツが足を悪くしていることを知っていたに違いなく、それは選択としては間違いではなかっただろうとは推測できたが、しかし今回は失敗だった。<br>
<br>
　身体中が痛かった。<br>
<br>
　右足さえもが痛かった。<br>
<br>
　痛みを感じて、立ち上がることができた。<br>
<br>
　もちろん両手は縛られたままで、この場で何か事態を大きく変えられるような行動が取れるわけでもないことはわかっていた。しかし身体は動いていた。ルツは走った。走れる距離はそう長くはなかった。目の前の男二人のうち、近いほうへと倒れこんだ。<br>
　奇跡的なことにルツが体当たりをするまでの間、盗賊たちは彼が起き上がったことに気付かなかった。そのために力のない体当たりでも不意打ちとなり、盗賊二人の動きは一瞬止まった。<br>
　ユーリヤが素直に逃げてくれるだろうか、とルツは倒れこみながら考えていた。ユーリヤはまだ王政が奮っていた時代、父親が炉国から買ってきた娘のうちの一人だった。父親は有り余る資産を用いて女を買い、傍に諂わせ、昼夜問わずに蹂躙した。ユーリヤがその手から逃れることができたのは、幼かったルツを世話するためのメイドが最低限一人は必要だったからというだけであり、ユーリヤも父親に犯され、朽ち果てていった可能性もあったのだろう。ユーリヤが父に買われながらも人間らしい暮らしができたのはあくまで偶然の結果であり、父やルツの功績ではなかった。しかしユーリヤは深く感謝していた。<br>
　<b>今は良い時代になった</b>。父が治めていたころのように民衆が重い税に悩まされたり、治安が悪化したりということはない。もちろん悪いところもあるが、それでも以前よりはずっとましだ。本当に良い時代になった。<br>
　だから、ユーリヤには逃げてほしい。良い時代になったこのアンシュルスで生き抜いてほしい。逃げてくれるだろうか？<br>
　ルツは今までの人生を振り返っていた。人は後悔をする生き物なのかもしれない。死ぬ間際に走馬灯が見えるというが、しかしそれは後悔をしたいがためではないだろうか？<br>
<br>
　しかし後悔をする必要はなかったようだ。<br>
<br>
　盗賊の本拠である平屋の巨大な家屋に男が一人、踏み込んできた。両手に剣を持ったその男がネストル・リンダーであろうことは、顔は見えなかったが凄まじい強さからわかった。アンシュルスとは比べ物にならないほどの大国、ルルド帝国の聖女を守る二番隊隊長、ネストル・リンダー。炉国人でありながら、ルルド帝国の兵士を務める男。<br>
　ネストルは踏み込むなり、家屋内に残っていた男二人を切り伏せた。生きている人間がルツとネストル、そしてユーリヤだけになった。<br>
　<br>
<div align=center>＊</div><br>
<br>
「いろいろと迷惑をかけたね」<br>
　右足を除いて身体中に痛みがあって一人で歩くのもままならず、ユーリヤに肩を貸してもらってなんとか歩いている状態のルツだったが、意識ははっきりとしていた。<br>
「助けるようと思っていたのに、助けられてしまった」<br>
　盗賊たちは一人残らず死亡した。一人はリディア・シェルの従者ヘレンが、もう一人はユーリヤが切ったらしいが、そのほかの全員はネストル・リンダーがたった一人で切り殺したようだった。そのネストル・リンダーはまったくの無傷で、主である聖女に付き添っている。<br>
　ネストルの主の顔は暗かった。目の前で惨殺が繰り広げられたからだろうか。あるいは同じ女性であるユーリヤが犯される一歩手前だったからだろうか。とにかく意気消沈としているのが外からでもよくわかった。<br>
「<i>無事で良かった</i>」<br>
　彼女はそう描き、笑ってみせた。小さな笑みだった。<br>
「助けてもらっておいて急かせるようで悪いけど、<b>きみたちはこのままメイランへ向かったほうが良い</b>。一昨日……、えっと、時間間隔がアレだけどだいたい一昨日くらいに、<b><font color=red>宗教革命軍</font></b>が動いているって噂を聞いた。ここはもうブレゲル市でメイランとの国境に近い。このままメイランに向かったほうが良い」<br>
「<i>でも荷物が………</i>」<br>
「荷物くらいなら早馬で届けられるわよ」シェルが言った。「運賃はサービスしておく。行ったほうが良いわ。私も宗教革命軍のことは聞いていたから。今ヴィルトラ市内に戻ったら、たぶん<b><font color=red>宗教革命軍</font></b>の本隊に鉢合わせる」<br>
　そういえばリディア・シェルは彼女がルルドの聖女であるということに気付いたのだろうか、とルツは考える。シェルの言い方だけでは、ネストルらを宗教革命軍から逃げているだけのルルド教徒とだけ考えているのか、それとももっと特別な人物であることに気付いているのか、わかりにくかった。<br>
「そういうこと」ルツは言う。「ベル。今回のことは、本当にありがとう。感謝してもしきれない。本当にありがとう。ネストルさんも」<br>
　ちょうど道の分岐点だった。立て札が立っており、一つの矢印はヴィルトラ市、もうひとつはブレゲル市とある。<br>
「<i>私もあなたたちにお世話になりました</i>」<br>
「<b>まったくね</b>」とシェル。「面倒なことに付き合わされた。良い経験を本当にありがとう」<br>
「別れ際くらい真面目にやれないんですか」とヘレンはシェルに言ってから、別れる二人に向き直る。「さようなら」<br>
　ルルドの聖女はどう対応して良いかわからず、複雑そうな表情をしていた。<br>
「あ、ベル」ルツは唐突に思い出して尋ねていた。「<b>クラリッサ</b>には会った？」<br>
　<b>クラリッサ・F・ビスマルク</b>。ベルナデッタ・ルルドの友人だった人物だ。<br>
　彼女は首を振る。やはりまだ会っていなかったか。彼女らの間で交流が途絶えて、もう何年になるのだろうか。その原因になった事件のことを、人伝ではあったがかつて王族であったルツは知っていた。<br>
「そう……、彼女には気をつけて」<br>
　今では人より情報収集能力が高いとはいえない身のルツは、その程度のことしか言えなかった。<br>
「ベルナデッタ様、ネストル・リンダー……」今までずっと沈黙を守り続けていたユーリヤが口を開く。「<b>本当に、本当にありがとうございました。本当に………、<small>私は………、ルートヴィッヒ様を………</small></b>」<br>
　ユーリヤは涙を流していた。<br>
　<br>
　ルルドの聖女とその従者、二人が道の向こうへと消えるまでの間、ルツたちは道の真ん中で二人を見送っていた。<br>
　やがて二人が見えなくなると、シェルが最初に口を開いた。<br>
「今回のこと、どうしよう？　どこからともなく現れた正義の味方が盗賊団を壊滅させた、ってことで良いのかしら？」<br>
「さぁ………」ルツは首を振る。「どうしてあげるのが良いんでしょう」<br>
「随分と力任せな正義の味方でしたね」とヘレン。「どちらさんなんですか、あの人」<br>
「正義の味方だから正体不明で良いんじゃない？」シェルは僅かに唇の端を持ち上げた。「私としては、あなたがどうにかしたってシナリオでも良いと思うけれど。盗賊に捕まってけれど、自力で脱出して逆に盗賊団を壊滅、とか。ほら、あなたも昔は剣術を嗜んでいたでしょう？」<br>
「もう十年近く剣なんて握ってませんよ……」<br>
　通りがかった馬車に乗ってヴィルトラ市へ戻り、リディア・シェルとヘレンと別れる。今回の事件、彼女らが介入したということは疑われないだろう。まさか盗賊団をヘレンだけで解決できるとは市民も思うはずもあるまい。盗賊団を壊滅させるためには彼女の私兵部隊が動かなければならず、そうなれば市民の耳にも届くが、今回動いたのはヘレンだけだ。<br>
　正義の味方に助けられたことにしよう、ということでシェルとは合意した。正義の味方は名も告げずに去っていってしまった、と。<br>
「あの子は確かに、名前を告げられないみたいだったしね」別れ際にシェルが冗句を言った。<br>
<br>
　ユーリヤとともに家に戻る。二人とも、そう目立ってはいないが服には血の染みがついていた。ユーリヤなどは、服を一部破られたため、今はヴィルトラ市まで戻ってくる途中で購入した服を着ていた。ルツは服を着替え、ユーリヤが淹れた紅茶で一服する。<br>
　二人だけになってしまった、とルツは思った。<br>
　二人きりが厭なわけではないが、どうにも言葉が切り出しにくいのが二人という人数だった。感謝の言葉も、謝罪の念も、こうなっては伝えにくい。向かい合ったまま、王政時代から残っている数少ない品であるティーカップに口を付ける。<br>
「お怪我……、大丈夫ですか？」<br>
　先に口を開いたのはユーリヤからだった。<br>
「あぁ……、うん」ルツは頷く。「痛いだけ。歯も骨も折れてない。きみは？」<br>
「私は、全然です」<br>
　しかしユーリヤは盗賊たちに襲われかけたのだ。その瞬間は彼女の心に深く恐怖を刻み込んだに違いない。<br>
　どう声をかけるべきか逡巡しているとき、呼び鈴が鳴らされた。もう夕陽はほとんど沈んでおり、あたりはどっぷりと暗い。こんな時間に（そもそもルツの家を訪ねてくる人物などほとんどいないのだが）訪問者とは、だれだろうか。ルツの生存をリディア・シェルから聞かされた議会からの使いだろうか。<br>
　立ち上がりかけるユーリヤを制して、ルツは自ら玄関へと向かった。<br>
　戸を開けると、そこにいたのは壮年の男だった。議会の人間ではない。ルツは議会の出席者の顔をすべて覚えている。見たことのない顔だ。<br>
「夜分に申し訳ありません。あなたがルートヴィッヒ十一世でしょうか？」男は慇懃に尋ねた。<br>
「そうですが」ルツは頷いた。「新聞の勧誘ですか？」<br>
「いえ、まさか」男はにっこりと笑った。「私、<b><font color=red>宗教革命軍</font></b>の<b>フェリックス・カルヴィ</b>と申します。宗教革命軍のことはご存知でしょうか？」<br>
「ええ、まぁ」宗教革命軍というのは自称だったのだな、とルツは関係ないことを考えていた。<br>
　さて、フェリックスという男はルツがつい先ほどまでルルドの聖女と会っていたことを知って尋ねてきたのだろうか？<br>
「宗教の勧誘なら間に合ってますよ」ルツは言ってみせる。<br>
　心配してか、玄関近くまでユーリヤがやってきていた。不安そうな表情でルツのほうを伺っている。<br>
「ルルド教で？」とフェリックス。<br>
「まさか。それにアンシュルスは信教の自由がありますから」ルツは肩を竦めかけ、痛みが走る。<br>
「勧誘ではなくてですね、お話を訊きに来たのですが……、よろしいでしょうか？」フェリックスは疑問系でルツに言葉を投げかけたが、返答を聞く気もないようですぐに二の句を紡いだ。「盗賊団に誘拐されたと話に聞きまして、我々宗教革命軍もですね、華族であるあなたを救おうと思いまして、盗賊の本拠を訪ねてみたんですよ。しかしそうしたら、<b>盗賊が全員死んでいて、あなたは既にいなかった</b>。いったいあそこでなにが起こったんでしょうか？」<br>
「わかりません」ルツは用意してあった文章を言う。帰りの馬車でリディア・シェルと相談して決めた内容だった。「リディア……、シェル家というのはご存知ですか？」<br>
「いえ、申し訳ない」<br>
「アンシュルスの貴族です。彼女とは昔から懇意にさせていただいているのですが……、彼女に助けてもらいました。でも彼女の私兵が盗賊団を壊滅させたというわけでもないみたいです。詳しいことは彼女のほうに訊いてください。申し訳ない、戻ったばかりで疲れているんです」<br>
「あぁ、これは申し訳ない。リディア・シェル氏ですね。わかりました。わざわざありがとうございました。お大事に」<br>
　フェリックスは言うだけ言って、去っていった。意外にもあっさりした引き際だ、とルツは思った。<br>
　心配顔のユーリヤの手に触れ、握り、居間に戻った。<br>
　今度こそ二人だけになった。<br>
<br>
<div align=right><small><b>Die Fledermaus overt&uuml;re :Finale</b></small></div><br>
<br>
<div align=center><blockquote>次回は第三行【ウィリアム・テル序曲】<br>
英雄の国、メイラン編 </blockquote></div><br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10839182.html>前へ</a></div><div align=right>第三行へ</div><blockquote><div align=center><a href=10695515.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
  </item>
  <item rdf:about="http://burikino.noblog.net/blog/b/10839182.html">
    <title>
			voice/2/17
		</title>
    <link>http://burikino.noblog.net/blog/b/10839182.html</link>
    <description>１７  　夜明けは近い。  　乗合馬車に私とリディア・シェルとヘレンという少女以外の人はいなかった。客車の中、私は戦力を考える。リディア・シェルは明らかに戦えそうにない。武器さえ持っていないのだから。 　ヘレンと呼ばれた少女のほうは彼女の背丈ほど...</description>
    <dc:subject></dc:subject>
    <dc:date>2009-09-13T20:59:59+09:00</dc:date>
    <content:encoded><![CDATA[<div align=center>１７</div><br>
<br>
　夜明けは近い。<br>
<br>
　乗合馬車に私とリディア・シェルとヘレンという少女以外の人はいなかった。客車の中、私は戦力を考える。<b>リディア・シェル</b>は明らかに戦えそうにない。武器さえ持っていないのだから。<br>
　<b>ヘレン</b>と呼ばれた少女のほうは彼女の背丈ほどの長さのある長刀を持っていた。隙のない身のこなしであるので、もしかするとシェルの用心棒なのかもしれない。しかし見た目が少女（もしかすると見た目よりは年を食っているのかもしれないが）というのが明らかに不安で、シェルがなぜ用心棒に女性を用いているのかという疑問もあった。ヘレンがそれだけ強いというのなら安心ではあるが、傍に付けるのならば女性のほうが気が休まるということでシェルが彼女を雇っているのであれば、戦力としてはそう期待しないほうが良いことになるだろう。<br>
　一時の気の迷いで、なぜ私は二人を連れて馬車になど乗ってしまったのだろう。今更ながら私は後悔していた。<br>
<br>
「この馬車で行けるところまでは、あと四半刻もかからないでしょうね」シェルは私に視線を移した。「それであなたにはなにか考えがあるのかしら、お嬢さん？」<br>
　<b>ない</b>。<br>
　盗賊団のところへ行き、何ができるとも思ってはいなかった。ネストルが既に行っているのだ、私が行っても足手纏いにしかならない。<br>
　何かしなくてはならないという気持ちは確かにあった。しかし今はもう、それはない。今は怖い。<br>
「<b>それはこちらの台詞ですよ、リディア様</b>」ヘレンという名の少女が長刀を見たまま無表情に言う。「あなたにはなにか考えがあるんですか」<br>
「あるわけないでしょ」堂々とシェルが言う。「<b>馬鹿にしないでよね</b>」<br>
「私が馬鹿にされてるんですか？」<br>
「何か考えがある、程度で盗賊団を撲滅できると思っているなら馬鹿だってこと。この理屈でいうと、画期的なアイディアを期待しているあなたは馬鹿だってことになるね」<br>
「帰っても良いですか？」<br>
「帰ったら私が無事だろうとそうでなかろうと、あなたは今月の給金を受け取れなくなるわよ。それどころか屋敷に戻ってきたら全裸で放り出すように手紙を送るわね」<br>
「屋敷に戻らずに逃げます」<br>
「屋敷の全人員を総動員して絶対あなたを見つけ出させてやるから。先に地獄で待っているわね」<br>
「リディア様は天国に行けないんですね」<br>
「私は<b>ルルド教</b>じゃありませんからね」<br>
　盗賊の本拠にほど近い地点で馬車を降りる。馬車の主は女三人だけで行動している私たちに対して心配そうな表情をしていたが、私たちが客車を降りるとさっさとUターンして道を戻っていってしまった。<br>
<br>
　ヘレンが先頭に、獣道なのか公道なのか怪しい道を歩いていく。<br>
「<b>最初からこうすれば良かったって</b>思う？」<br>
　狭道を歩きつつ、リディア・シェルは私に向かって言った。<br>
　こうすれば、とはどういう意味だろうかと私は考える。走って盗賊のところまで行くことだろうか。<br>
「最初から、助けに行けばって。ルツのこと」シェルは自身で補足した。<br>
　私は少し躊躇ったが、頷いてみせた。<br>
「それはできない。結局のところ、あなたたちがいなければね、私たちがヒーローになってしまう。いえ、ヒーローになるのなら良いのだけれど、ルツを助けたなんて思われたらおおごとだわ。民衆は決してルツのことを快く思っていないのだから」<br>
　ルツを助けたことを誰にも言わなければ良いのではないだろうか、と私は思った。<br>
「<b>人はそんなに馬鹿じゃない</b>」とシェル。「何か隠し事があれば気付くし、何も言わなければ類推する。それが正解だろうとそうでなかろうと、でも隠し事をしている側にとって幸福な結論にたどり着いてくれることは稀。こちらから能動的に彼を助けようとすれば、それは察知されてしまう」<br>
　では助ければ良いのだ。<br>
　ルツのことを少しでも大事に思っているのであれば、助ければ良いではないか。<br>
「そうかもしれない。でも、それでどうなる？　私は一切得るものはないし、逆に失うだけ。そうなったらルツも今までどおりの暮らしを送ることもできなくなるでしょうね。私は今の議会の思想を変えたいとは思ってはいるけれど、だからといってそれを公の場で言えば弾圧されるのは明らかよ。何かをするために、犠牲にしなくてはならないものもある。あなたみたいに」シェルは立ち止まって、私の目を見つめた。「あなたは本当にこれからルツを助ける気？　<b>自分が何をしようとしているのかわかっている？　年頃の娘が、<b><font color=red>人を殺そう</font></b>としているの。それがわかっている？　盗賊団の誰一人として殺さずに、ルツを助けられるわけがないの。わかる？</b>」<br>
<br>
　わかる。<br>
<br>
　今わかった。<br>
<br>
　心臓の鼓動がだんだんと早くなっていくのが感じられた。脈拍の推移は思考の推移とほとんどシンクロしている。<br>
　盗賊たちを<b><font color=red>殺</font></b>さなければ、ルツは救えない。助けるためには、誰かを犠牲にしなくてはならない。誰かを好きになるということは、他の誰かを嫌いにならなければいけないということなのだ。<br>
<br>
　先を言っていたヘレンが、手の平を私たちに向ける。<br>
「<small>静かに</small>」<br>
　そう言われ、私もシェルも立ち止まった。<br>
　ヘレンが立っている場所は、上り坂の終わりになっているところだった。そこから先は平地であろう。水の流れる音が聞こえるので、すぐ近くに川があることがわかる。<br>
　ヘレンは刀の柄に手をかけると、抜き、戻した。<br>
　男が倒れこんでくる。<br>
「もう来ても大丈夫です」<br>
　ヘレンが言い、それで私は、その男が死体になったのだということに気付いた。一瞬のことで、ほとんど実感がわかなかった。<br>
　声が聞こえる。男の声だ。遠くから、足音とともに。<br>
「まだいますね」死体の傍から離れてシェルの傍に寄りつつ、ヘレンが言った。「ここから離れたほうがよろしいかと」<br>
「それではここまで来た意味がなくなる」とシェル。彼女は従者が人一人を手にかけたというのに、ほとんど気にしてはいない様子だった。ヘレンの腕と度胸を疑っていないのだろう。<br>
「四人、走ってきます。この先は道が複数に分かれているようですが、こちらの道に来る可能性も」ヘレンは言いかけて、口を閉じる。手で制し、私たちに下がるように命じる。<br>
　しかし私は後退できなかった。走ってくる人物の姿が見えたのだ。<br>
　前の三人は屈強な男たちで、服装はさまざまであったが彼らが盗賊団の一員であることは推測がついた。<br>
　後ろの一人は<b>ネストル・リンダー</b>だった。<br>
　彼は両手に一本ずつ剣を持ち、身体中に返り<b><font color=red>血</font></b>を浴びて三人の男を追いかけていた。<br>
「<small>出ます</small>」<br>
　ヘレンはそう言うや否や、もう一度剣を抜いて開けた場所へ飛び出した。<br>
　三人の盗賊は足を止めかけ、しかし飛び出してきたのが少女であることに気付くと無視しようとしてか、あるいはヘレンを人質にでもしようとしたのか、走り続けた。だが足を一瞬止めかけたのは事実であり、速度は僅かに緩んだ。その間にネストルが彼らに接近し、両手を振りぬいていた。私の位置からでも二人の男の<b><font color=red>首</font></b>が<b><font color=red>飛</font></b>んでいくのが見えた。残った一人も次の一振りで片がついていた。血が<b><font color=red>噴</font></b>き出していた。<br>
<br>
　ヘレンが先に剣を仕舞う。<br>
「あの人は、敵じゃあありませんよね？」<br>
「そう。たぶん」とシェル。<br>
　血はまだ噴出していた。<br>
「<b>姫………</b>」<br>
　血に濡れたネストルの目はヘレンもシェルも通り越し、正確に私の目を射抜いていた。<br>
<br>
<u><b><div align=left><a href=10835438.html>前へ</a></div><div align=right><a href=10839186.html>次へ</a></div><blockquote><div align=center><a href=10695515.html>目次へ</a></div></blockquote></b></u>]]></content:encoded>
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